【その先のアパラチアン・トレイルへVol.8】
実は、今回も釣りをしようといろいろと調べていました。
しかし、言葉の壁もあり、なかなかチャレンジできず…。釣りをしたい気持ちを我慢して歩いていました。幸い、トレイルからアクセス可能な川に魚影もなく、無理してする必要もないのかな?と思ったりしていました。
マンタン自然保護区からサン・ウィアネイの町までは、一部川沿いを歩くのですが、釣りポイントの表示があり、そこはサーモンの釣り場のようでした。
僕が持っていたのは、トラウト用の#4だったのでチャレンジできませんでしたが、各ポイントで多くの釣り人が、サーモンフィッシングを楽しんでいました。
なかには、ニューハンプシャー州から遠征して釣りに来ている人もいたので、このエリアはトラウトよりサーモン釣りが盛んな場所なんだと思います。
ウズウズと釣りたい気持ちを抑えながら、ウィルダネスから里山に近いエリアを歩いていました。
サン・ウィアネイエリア
マンタン自然保護区から、ダートロードを中心に舗装路もミックスされた道のりでした。トレイルを示すマークが激減するのもこのエリアから。いわゆる里山のアップダウン。終始ダートロードを歩きます。照りかえす日差しの中、街路樹の下で休憩することも多くありました。予想よりもサン・ウィアネイの町は大きく、町から300m離れたリフレージは、シャワーも洗濯機も完備。鍵の管理は、町の食材屋さんでしているのですが、ここも英語が通じませんでした。
アムキエリア
サン・ウィアネイから、アムキまでの道のりもダートロードが中心で、多くの木材を積んだトラックが猛スピードで行きかう道も。ぬかるみのトレイルやトレイルが閉鎖になっている箇所も多く、マークも少ない道のりでした。まさに人が歩いているのだろか? と感じるような藪漕ぎに、何度か心が折れそうになりました。結局、トレイルの閉鎖エリアを歩くわけにはいかず、遠回りになるダートロードを歩く羽目になってしまいました。
コサスカルエリア
アムキから舗装路を歩き、ダートロードに入るのですが、マークがまったくないエリアでかなりのロストをする状況でした。ダートロードから里山の急斜面のエリア、そしてまたダートロードを繰り返す道。ATVのルートと一緒になっているせいか、時折爆音とともにものすごいスピードのATVに注意が必要に。これだけのダートロードを歩く事に、違和感を感じずにはいられませんでした。
アムキとコサスカルのリフレージは、町から程近い有料のキャンプサイトの中にあり、ハットパスポートを持っている人は
無料で使用可能。シャワーと洗濯も出来る環境でした。
アムキ、コサスカルでは、あまりの足の痛みにそれぞれ2日のゼロデイ(全く歩かない日)を取りました。相変わらず、英語が通じない環境に街に降りても孤独な日々。足の痛みも日々増すばかりで、バケツに水を汲んで、痛む左足を終始冷やすだけの状況でした。そんな時、コサスカルのリフレージで、今回2人目のインターナショナル・アパラチアン・トレイルハイカーと宿を共にしたのでした。
彼の名はロイ。モントリオールに住むハイカーでした。ロイは、アパラチアン・トレイルのNYから、ここまで歩いてきた様子でした。ロイは英語が堪能で会話も弾みました。いろいろと話していると、彼は、メイン州の一部をスキップして、ニューブラウンズウィック州に入り少し歩いた後は、ほぼ全部スキップしてここにたどり着いたそうでした。
翌日、ロイはここコサスカルでトレイルを断念しました。
「MASA、俺はもう歩くモチベーションが続かないよ。心も体ももう限界だ。MASAのモチベーションを教えてくれ」
そんな会話が前日にありました。
ロイの決断に、僕は何も言えませんでした。この先の過酷な道のりを考えると、彼の体の状態やモチベーションでは歩くのは非常に難しいと思ったからです。
僕は、これからどんな道のりを歩くのだろうか?
ロイのモチベーションを奪った道のりに、不安を覚え、せめてこの傷んだ足の回復してくれたらと願うばかりでした。
つづく
Profile 斉藤正史
山形県在住
LONG TRAIL HIKER
NPO法人山形ロングトレイル理事
トレイルカルチャー普及のため国内外のトレイルを歩き、山形にトレイルを作る活動を行う。
ブログ http://longtrailhikermasa.blog.fc2.com/
山形ロングトレイル https://www.facebook.com/yamagatalongtrail
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