寒さ爆発の朝に子供達と公園へ出かけると、池に氷が張っているのを発見。こうなると、今日やる予定だったことは全て無かったことになる。
子供達は、こちらが何を話そうが、どんな動きをしようが目線は氷に“氷漬け”になったまま動かない。だってそこに氷があるのだから当たり前の話しだ。道半ば、今日の遊びのメインは氷遊びに強制決定となったのであった。
子供達はまず氷が張った池の上に木の枝を投げ始めた。投げる枝は、はじめは小枝で次第に太く、大きくなっていく…。とある男の子が投げた大枝が氷の上で「カツン!ッツーーッ」と高い音とともに表面を滑り出したのを確認するやいなやニンマリ笑顔。僕はその笑顔に不安を覚えた。
氷の上に立つ瞬間。男の子は絶妙な体重移動を披露してくれた。命がけの遊びが子供の身体の使い方をきれいにしてくれる。
彼はそっと氷の上に両足を乗せはじめたのだ。いつもは見られない慎重かつ真剣な眼差しと動きで両足をそっと乗せた。氷の上に立った男の子は、いつ割れるかわからないその氷の上で見事なへっぴり腰とともに両手を上に上げるポーズを友達に見せた。この瞬間この子はヒーローとなったのだ。
2人目、3人目とチャレンジャーが続く。すると自動的に落ちる子供が出はじめるのは野生児あるあるの方程式。足がずぶ濡れになってテンションが一気に下がる子や、「足が濡れる=もうどうなっても大丈夫」という開放感で逆に満面の笑み浮かべ始める子供と、小さな事件は様々な表情を生んだ。
足がずぶ濡れになってテンションが思いっきり下がった男の子。まだ遊びたい気持ちが勝り、復帰は早かった。
ずぶ濡れが自由への扉を開いてしまった例。
一方では、割れた氷を拾って氷上に投げて誰が一番遠くまで滑らせられるかといった新競技が始まった。氷上を滑る氷はキーンという普段はなかなか聞けない面白い音を立てて滑っていくので、新感覚の楽しさがそこにはあるようだ。
さらに別の所では、誰が一番大きな氷を拾い上げるかを競い合う子供達が現れた。
「長谷部先生!見て!私のが一番大きい!」
「長谷部先生、これでっかいぞー!」
と、何人も報告に来てくれた。
氷を氷上に投げ入れる子供達。
大きな氷をすくい上げようと奮闘中の3人組。
今日一番大きな氷を手に入れた女の子。氷越しに見る世界を何度も堪能していた。
いくら寒くても、ベストな天候が続かないと厚さ、透明度などがそろった最良の氷はなかなか出会うことは出来ない。今日は子供達にとって最高の朝だったのは間違いない。
自然の中で野生児が遊ぶ際は、着替えの有無が遊びの開放度を大きく左右する。みなさんも、野生児備品セットにはかならず着替えを入れておこう。
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長谷部雅一
アウトドアプロデューサー。
アウトドアイベントの企画・運営を手がける「Be-Nature School」スタッフ。人と自然をつなぐインタープリターとしても活躍中。
著作に『ネイチャーエデュケーション』1300円+税 みくに出版