「絶望の光」から「希望の光」へ! シェルパ斉藤、光岳に登る
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    2022.12.08

    「絶望の光」から「希望の光」へ! シェルパ斉藤、光岳に登る

    前泊におすすめのゲストハウス「太陽堂」

    発売中のBE-PAL1月号『シェルパ斉藤の旅の自由型』では、南アルプス光岳の小屋閉めを手伝った紀行文を掲載している。このコラムでは光岳とその山小屋を、写真中心に紹介したい。

    光岳は長野と静岡の県境にそびえる標高2591mの山だ。登山に興味がなければ「てかりだけ」とは読めないだろう。南アルプスの最南部であり、深田久弥の日本百名山に入っているものの、一般にはあまり知られていない。日本百名山をめざす登山者が、最後に残ってしまう山が光岳というケースが少なくない。その理由のひとつがアクセスの悪さだ。登山口まで公共交通機関はないし、クルマで行くにしても、登山口までがかなり遠い。関東や中部、関西などの都会に住んでいる方が自宅を出てその日のうちに光岳に登頂するのはほぼ不可能だ。

    静岡県側からのルートもあるが、最短路は長野県の遠山郷からになる。遠山郷に前泊して翌日の早朝から登るのが得策であるが、前泊におすすめの宿はゲストハウスの太陽堂だ。村の商店として使われていた建物をリノベーションしており、遠山郷に移住してきた宿主や旅人たちと仲よくなれるフレンドリーなゲストハウスである。

    村の商店だった時代も『太陽堂』の名だったゲストハウス。宿主がその名を気に入り、継承した。

    土間や畳の部屋がスタッフや宿泊者との交流の場になる。居心地の良さを感じる土間だ。

    旅関係の本が棚に並ぶ。その奥に共同キッチンがあり、自由に使える。

    登山口から光岳小屋までの標準コースタイムは9時間

    登山口は「日本のチロル」と呼ばれる秘境「下栗の里」よりもさらに奥にある。かつては易老渡という登山口までクルマで行けたが、現在は手前の芝沢ゲートの駐車場にクルマをとめて、易老渡まで林道を歩いてから登ることになる。芝沢ゲートから易老渡までは約4km。時間短縮と疲労軽減と下山後の利便性を考慮して、易老渡まで自転車でアプローチする登山者もいる。

    こんな山奥によくぞ集落を形成したものだと感心する下栗の里。光岳の登山口はさらに奥にある。

    芝沢ゲートから易老渡まで自転車を利用する登山者が何人かいた。帰りは林道を一気に下っていける。

    易老渡からはジグザグの登山道となる。途中に面平と呼ばれる平坦な広葉樹の森があるが、ひたすら登りが続く。易老渡から稜線上の易老岳までの標準コースタイムは約5時間。易老渡から先はなだらかな登山道が続き、岩場のコースを登り切れば木道が整備された平地に出て、光岳小屋に着く。

    最初は針葉樹の林に囲まれた単調な登山道が続く。ウォーミングアップにいい道かもしれない。

    多くの登山者が休憩地として休んでいく面平。苔むした倒木が幻想的に広がる。

    登山道を延々と歩いてようやく易老岳に着く。ここが山頂? と疑問に感じるくらい景色が望めない。

    易老岳から稜線を歩いていくと見晴らしのいい場所に出る。御嶽山や遠くに北アルプスも望める絶景ポイントだ。

    岩場を登りつめると木道が整備された平地に出る。あと少しで光岳の到着を示すランドマークでもある。

    光岳小屋は静岡県営の山小屋だ。木造でがっちりとした建物。オフシーズンは避難小屋として開放される。

    山小屋の管理人「花ちゃん」と再会

    光岳小屋は今シーズンから花ちゃんこと、小宮山花さんが管理人を努めている。花ちゃんは南アルプスの鳳凰小屋にはじまり、北アルプスの剣山荘、奥秩父の金峰山荘など、何軒もの山小屋を渡り歩いてきたツワモノだ。これまでは雇われる立場だったが、光岳小屋は自分の山小屋として切り盛りできる。良き友人でもある彼女を応援しようと、僕はオープン初日の7月中旬に光岳小屋を訪れた。初日に来たんだから最終日も来て、ついでに小屋閉めを手伝おう。そう考えて113日の営業最終日に光岳小屋を再訪した(友人の新聞記者は「初日と最終日に泊まれば、すべての駒をひっくり返すオセロのようなもので、最初から最後まで光岳小屋に関わったことになりますよ」と口にした)。

    ちなみに花ちゃんはBE-PALの連載『シェルパ斉藤の旅の自由型』に3回登場している。最初は群馬から自転車で東京ディズニーランドをめざす旅、2回目は東北八幡平の避難小屋にわが家の薪を届ける旅、そして3回目は白神山地の避難小屋に女性ガイドと泊まる旅。どの旅も明るくて元気な花ちゃんだからこそ、いつもの単独行とは違う旅を楽しめた。

    中央が管理人の花ちゃん、そしてスタッフの高橋くん、ともちゃん。3人とも30代半ばの元気なスタッフだ。

    食堂は食事の準備に入るまでは談話室として使える。食後はバータイムとなり、日本酒や梅酒、ウイスキーなどが販売される。

    光岳小屋の夕食はタイのマッサマンカレーだ。鶏肉のソテーも皮がパリッと焼けていておいしい。

    花ちゃんが私費を投じて16セット製作した特製ベッド。ベッドのおかげで腰掛けて寛げるし、床からの冷えを防ぐ断熱効果にもなる。マットも幅が広く、ゆったりと眠れる。

    光岳には北アルプスとは違う「優しさ」がある

    光岳は「絶望の光」とも呼ばれている。登山口までが遠いし、標準コースタイム9時間にもなるロングコースを歩いて登頂したわりには眺望がそれほどでもないことからそのキャッチがついた。

    7月のオープン初日に来たときは雨天で、ガスに覆われて山頂からの景色がまったく見えなかったため「絶望の光」感が強かったが、11月の最終日は秋の澄んだ青空が広がり、絶景を楽しめた。ただし、光岳の山頂は樹木に囲まれて眺望がきかない。すぐ先に展望台があり、光石を名づけられた岩場に立つと、北アルプスの急峻な山岳地帯とは異なる、優しさを感じる山並みが望める。ここが日本アルプスの南端の山であり、太平洋が近いことを感じさせる風景が広がる。

    来シーズンの営業開始日は現時点では未定だが、光岳をめざしてもらいたい。「絶望の光」を「希望の光」に変えてくれる花ちゃんたちスタッフが、登山者を明るくもてなしてくれるはずだ。

    光岳山頂から少し下った場所にある光石。「絶望の光」なんていわせない絶景地だ。

    富士山が望める光岳小屋の夜明けは美しい。希望の光なのである。

     

    シェルパ斉藤
    私が書きました!
    紀行作家・バックパッカー
    シェルパ斉藤
    1961年生まれ。揚子江の川旅を掲載してもらおうと編集長へ送った手紙がきっかけで『BE-PAL』誌上でデビュー。その後、1990年に東海自然歩道を踏破する紀行文を連載して人気作家に。1995年に八ヶ岳の麓に移住 し、自らの手で家を作り、火を中心とした自己完結型の田舎暮らしを楽しむ。『BE-PAL』で「シェルパ斉藤の旅の自由型」を連載中。『シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅』ほか著書多数。歩く旅を1冊にまとめた『シェルパ斉藤の遊歩見聞録』(小学館)には、山、島、村、東海自然歩道などの旅や、犬と歩いたロングトレイルの旅を収録。

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