アメリカでは夏だけでなく冬の潮干狩りも盛ん。その代表が、レーザークラム狩りです。アメリカ西海岸のご当地グルメ、レーザークラムを求めて、シアトルから太平洋沿いの海辺の街へと出かけた際の体験レポートをお届けします。
待ち遠しいレーザークラム狩りシーズンの幕開け
アメリカではどの海沿いの街に出かけても、クラムチャウダーが名物。それくらい、クラムはメジャーな海産物です。アメリカ西海岸では、マニラクラムと呼ばれる貝がよく食べられ、見た目も食感も日本のアサリやハマグリとよく似ています。シアトル周辺で秋から冬にかけて潮干狩り解禁となるレーザークラムは、同じクラムでも、日本ではマテ貝と呼ばれる貝の仲間。ただし、マテ貝とはサイズ感が全然違い、大人の手の平からはみ出るほどの巨大貝です。黄土色の殻からは大粒で肉厚の身がこぼれます。
毎年、州からレーザークラム狩りの解禁日が発表されると、貝好き、海好きの地元民はワクワク、ソワソワ。わが家でも知人からおすそ分けでもらった新鮮な天然レーザークラムの味に感動し、その同じ月にはシアトルから車で2時間半ほどかけて、レーザークラム狩りができる海岸へと出かけていました。シアトルのあるワシントン州ではオリンピック国立公園の南、太平洋沿いに北からカラロッチ、モクロックス、コパリス、ツインハーバー、ロングビーチまでの指定のビーチでレーザークラム狩りが認められています。
レーザークラム狩りの装備と手順は?
潮干狩りにはライセンスが必要で、貝の種類によってサイズや収穫量の制限もあります。頻繁に更新されるので、その年のルールを州のウェブサイトで事前に確認し、ライセンスをスーパーやスポーツ用品店で購入します。
そのほかに、レーザークラム狩りには「クラムガン」と呼ばれる道具を用意すること。レーザークラムは砂の中に深く潜っているため、手で掘ったくらいではなかなか見つかりません。わが家では前述の知人から借りることができましたが、市販品だと安くても20ドル(約3,000円)以上します。また、レーザークラムを入れておく網状の袋やバケツがあると便利。服装は防水加工の防寒具に長靴で挑みましょう。暗くなってからの干潮がレーザークラム狩りに最適なタイミングなため、ランタンや懐中電灯も必須です。
そして日が暮れたら争奪戦開始! レーザークラムがいる目印となる小さな穴を砂浜で見つけることから始めます。ポツポツと穴の集まる一帯に狙いを定めたら、それぞれの穴の奥を目がけて、このクラムガンを回しながら押し込みます。クラムガンを引き抜いたら砂の塊を押し出し、ほぐしてレーザークラムを取り出しましょう。クラムガンを真っ直ぐ、深めに砂の中に入れないと、殻に当たって潰してしまう恐れがあるので気を付けたいところ。殻はとてももろく割れやすいのです。傷付けないように採取するのは大変!
しかも、クラムガンを砂の中に入れるのも引き抜くのも、かなりの労力を要します。仲間と出かけるなら、力自慢のメンバーをそろえると大助かり。わが家の場合、私も小学生の息子も途中でギブアップし、夫の独壇場となりました。
とれたてレーザークラムはたまらないおいしさ!砂抜き中はハプニングに注意
砂だらけのレーザークラムはそのままでは食べられないので、まず流水で洗い、塩水に浸して砂抜きをします。ふたのできる大きな容器があると重宝することでしょう。わが家ではクーラーボックスを使いましたが、しばらくすると細長い水管がびよ~んと殻から出てきて、クーラーボックスの幅いっぱいの長さに拡張。動きが活発になると、ピュッピュッと勢い良く水を吹いてきます。
入れておく容器にふたがない場合は、新聞紙などをかぶせておかないと、辺りは水浸しとなってしまいます。夜中のキッチンでピチャピチャ音を出すグロテスクな生き物を、薄明かりの中でうっかり見たときの衝撃と言ったら……。知らないと、ちょっとしたホラーです。
数時間置いて砂抜きができたら、今度はむき身にしていきます。殻は柔らかいので手でむくだけで簡単に身が取り出せるはず。茶色い水管の先と内臓を取り除き、下処理は完了。調理はお好みで! アメリカではクラムチャウダーが定番ですが、バターソテーやフライにして食べるのも一般的です。日本風にアレンジするなら、熱湯に入れて軽くゆで、刺し身にしてわさび醤油で。また、殻に身を戻して殻ごとグリルし、少し醤油をたらすと、お酒が進むおつまみに。甘みのある大振りの身はプリプリで、箸が止まりません。浜料理のようにキャンプ飯として豪快に薪き火で焼くのも良いですね。
残念ながら、今年は異常気象の影響か12月に入ってもレーザークラム狩り解禁とならず、さびしい限り。ドウモイ酸などの毒素レベルが上昇傾向にあることがその理由だそう。シーズンが終わる春までには、解禁の朗報が聞けると良いですね。アメリカ西海岸の美しい浜の風景とともに、海の生態系が守られ、地元で愛される食文化やアウトドア・アクティビティーの伝統がこれからも続いていくことを願ってやみません。