何枚もの板がパッチワークのようにつなぎ合わされた外観にまず驚かされる。ここは、丹沢北部の山々に囲まれた、ネイチャークラフト作家、長野修平さんの家だ。
「トイレのドアすらない状態で住みはじめたけど、どんどん変化するから完成はないのかも」と、修平さんは笑って話す。
この家、躯体はプロに任せ、内装や外装は家族と友人たちで仕上げた、ハーフセルフビルド。しかも外壁は、解体物件の床材や建築廃材、家具材に流木と、本来捨てられる運命にある木をリユースし、組み合わせて作っているのだ。3階の吹き抜けから見下ろした土間の風景。スペースの半分はステンドグラス作家の妻・深雪さんの工房を兼ねている。
「あれなんて、木造船の廃材。カーブ具合がいいでしょ」と、窓を見上げる。新築なのに、何十年も住んでいるかのような雰囲気。最初は何もなかった吹き抜け空間に、2階のロフトができ、最近3階も増えた。
「天井に頭がついちゃう」というロフトがお気に入りなのは、長女の朱里(あかり)ちゃん。
「最近はもっと壁が欲しいっていうんだよ。ちょっと大人になったのかな。家族の成長を刻む。この家は木の集合体であるとともに、記憶の集合体なんです」
昨年夏に完成したサンルーム。裏山から切り出したナラが支柱。修平さんの木工所であり、来客をもてなす憩いの場でもある。
炎がきれいに見えるのが気に入り、引っ越しとともに新調した、薪ストーブ(ドブレ640CBU)。いつでもお湯が沸いていてコーヒーが飲める。
日暮れとともに、長野家の居間にポツポツと灯りがともる。「蛍光灯の青白い光よりも、オレンジの灯りのほうが落ち着くんですよね」と、深雪さん。
長野修平さんの継ぎはぎだらけの「森の家」
所在地:神奈川県相模原市
築年:3年
敷地面積:450.1㎡
延床面積:49.58㎡
設計:楓設計室 加藤陽介
費用/約700万円。
躯体はプロに任せ、内装、外装、電気配線まで自分たちで行なった。
ネイチャークラフト作家の長野修平さんと、ステンドグラス作家の深雪さん、長女の朱里ちゃん、次女の結ちゃんの4人暮らし。
◎取材・文/大石裕美 ◎撮影/砺波周平