ことの発端は、筆者が8年愛用している『ARC’TERYX(アークテリクス)』のアウターを、久しぶりに洗ったときでした。なんと、ウエスト周りのドローコードを覆うパーツが…全て剥がれてしまったのです…ッ!
このアウターに使われているのは、外から水を通さず、内側からのムレは逃してくれる機能素材「GORE-TEX(ゴアテックス)」。薄手ながら雨風をしっかり防いでくれる心強いアイテムで、登山や野外フェスに、年に数回の頻度で着ていました。買ってから年数は経っていますが、まだまだ活躍してくれると思っていたのに〜!
ちなみに、洗濯したことで、生地はしっかり撥水性を取り戻しました。ですが、このままでは使いものになりません。どうしても諦められない編集部スタッフは、2022年10月7日に国内初のReBIRDサービスカウンターを併設し、オープンした「アークテリクス 東京 丸の内 ブランドストア」へ駆け込むことに。今回は、その実体験をレポートします!
店舗併設のReBIRDサービスカウンターへ行ってきた
さて、ここからは実際にReBIRDサービスカウンターを利用する場合のステップ順にレポートしてゆきます。ウェアとバックパックに対応しているので、アークテリクス製品を愛用している方や、これから買おうと思っている方はチェック!
STEP.1 メール予約&修理箇所の写真を送信
まずは、メールで予約します。その際に、持ち込むアイテムの詳細と、修理して欲しい箇所の写真を送信。タイミングが合えば直接の持ち込みにも対応してもらえますが、予約がベターです。
STEP.2 予約日時にアイテムをReBIRDサービスカウンターへ持参する
ReBIRDサービスカウンターは、店舗左奥にあります。ここは、N.Y.、トロント、コロラド、北京に次いで、世界で5番目に設置。アークテリクスがデザインの力で、ケアと修理、再販、アップサイクルといった“循環型”にシフトすることを目標とした「ReBIRDプログラム」の一部です。
現在は3名の専任スタッフが在籍、本日は林さんにお世話になります。
STEP.3 専任スタッフが全体をチェック
修理箇所はもちろん、生地全体、そして袖口やフード周りなど、ウェア全体をじっくりチェックしてゆきます。
「事前に破損した箇所の写真はいただいていますが、やはり現物を見て分かることがたくさんあります。全体を見るのは、お客さまが不具合を感じている箇所以外にも、気がついていない不具合が潜んでいる可能性があるからです」
結論からいうと、今回は「直ります!」とのこと。よかった〜〜〜〜〜!
STEP.4 費用を確認し、修理依頼を申し込む
費用を確認して修理に同意したら、住所、氏名など必要な情報を記入します。今回は、ウエスト周りと袖口の修理代として12,000円+消費税で13,500円でした(襟もとの修理はサービス♡)。
STEP.5 アイテムを引き取りに行く(もしくは宅配で受け取る)
修理が完了する時期は、内容やタイミングによりますが、現在は大体3〜4ヶ月待ちとのこと。「宅配で送ることもできます。ただ、ご来店いただければ、修理したアイテムを今後より長く愛用していただくための方法や使い方などもアドバイスできるので、おすすめです」。
修理できること、できないこと
「生地の寿命」が修理可否の分かれ目
直るかどうかの大きなジャッジポイントの一つ。それは、生地の寿命。
今回相談したのは、8年愛用しているゴアテックスウェア。使われているのは3種の生地が重なっている「3レイヤー」のゴアテックス素材です。
「この生地同士がピタッと密着した状態こそ、水濡れを防いだりムレを逃す、ゴアテックス本来の機能を発揮します。ところが、生地が寿命を迎えると、本来は密着しているはずのそれぞれが剥がれてゆきます。GORE-TEXメンブレンが剥離すると防水性を失い、製品の機能回復ができないので、修理をお断りする場合がほとんどです。GORE-TEXメンブレンの剥離を防ぐためにも、洗濯や保管方法などメンテナンスのお話もさせていただいているんです」
たとえば、通勤や通学などで毎日使ったり、頻繁に使うのにほとんど洗わないなど、使用頻度やお手入れの状態などによって、買って年数が経っていなくても、生地そのものが寿命を迎える場合もあるのだとか。編集部スタッフの場合、買ってから年数は経っていますが、年に数回という登場回数や手入れの甲斐あって、ゴアテックス素材自体の傷みは見られませんでした。
破れても直せる
大きな破れの場合は、破れた箇所をパーツごと近しい素材に縫い直すことも検討するようです。「引っ掛けるなどして破れても、諦めないでくださいね」。
経年劣化は、パーツを取り換えたり圧着し直す
今回、編集部スタッフのウェアは経年劣化していたパーツが、洗濯というきっかけによって剥がれました。「洗濯そのものは決して悪いことではなく、洗わないリスクのほうが大きいです。製品は、できた瞬間から使っても使わなくても刻々と経年劣化するんですよ。剥がれたところはまた圧着し直しましょう」。
使う生地の素材感はこちら(左)。色味は変わりますが、元に使われていた素材と同じ。「70デニールのナイロンタフタという素材です」。
直し方は、シームテープに素材を縫い付けて圧着するというもの。「表には縫い目が出ないように直しますね」。
見えますか? 袖口にも、わずか数ミリの浮きがありました。「これがきっかけとなりいずれ全体が剥がれるので、一緒に直してしまいましょう」と林さん。スタッフは全く気がつきませんでした。
「袖まわりや襟元などは、どうしても皮脂や日焼け止めなどがつきやすく、生地の劣化に繋がりやすいんです」
同じく、襟もとのパーツも圧着に浮きが見られたため、合わせて修理していただくことに。
このほか、ジッパー一つとっても「パーツが外れた」「上がらない」「下がらない」といった様々な依頼に臨機応変に対応。簡単なパーツ交換なら、場合によってはその場で応じてもらえるのだとか。「小さな不具合も、遠慮なく相談してくださいね」。
大切なギアの全てをお任せ!
今回はウェアの修理をお願いしたけれど、林さん曰く「ウェアもギアの一つ」。
「ギアは、フィールドで命を守る大切なもの。この修理カウンターは、大切なギアが、本来の機能を発揮できるようにサポートする場所です。修理はもちろん、使い方やお手入れの仕方など、なんでもお任せくださいね」
なんと心強い! 最新アイテムにも心惹かれるけれど、いろんな場所を共にしたウェアやバックパックは、やはり思い入れがありますよね。そんな大切なギアと、これからもますますいろんなところへ行きたくなる。アークテリクスの修理カウンターで、改めて大切なことを教えてもらいました。
取材協力:アークテリクス