大分県といえば言わずと知られた「おんせん県」。源泉数と湧出量ともに日本一を誇り、別府や湯布院といった全国的にも有名な温泉地を有している県だ。だがその一方で“温泉”のイメージが強すぎるのもまた事実。例えば大分県南部と宮崎県北部にまたがるエリアは祖母・傾・大崩はユネスコエコパークに登録されている地だが、そこに一体何があるのか、詳しく知っている人は少ないのではないだろうか。
現在大分県ではこの土地ならではのツーリズムを確立すべく、新たな旅の取り組みを推進している。世界が認めた雄大な自然と素晴らしい文化を、もっと多くの人に知ってほしい。今回はそんな願いを込めた大分県の知られざるスポットを紹介したい。
独特の景観美と原生的な自然を併せ持つ「祖母・傾・大崩」
「ユネスコエコパーク」とはそもそも何なのか? 生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的として1976年にユネスコが開始した事業で、現在世界で認定されているのは134か国738地域。うち国内は10地域となっている(2023年2月現在)。
これとよく似ているのが「世界自然遺産」だが、こちらは自然の「価値を守る」ことが目的となっているのに対し、ユネスコエコパークは持続可能な発展のモデル地域という位置づけで、人と自然の共生による「価値の創造」が目的となっている。
大分県と宮崎県にまたがる祖母・傾・大崩ユネスコエコパークは、急峻な岩峰や渓谷などによる独特の景観美と原生的な自然を併せ持つエリア。 地元の人々は昔からこの地の豊かな自然を敬い、大切にしながら生活してきた。
藤河内渓谷(佐伯市)の大自然を味わう
祖母傾国定公園の夏木山を源に、水源の観音滝から藤河内集落までの分流を併せて約8km続く藤河内渓谷は、祖母・傾・大崩ユネスコエコパークの代表的な見どころのひとつ。清流と花崗岩の1枚岩でできた自然の造形美が特徴で、冬場は落差77mにもなる観音滝の氷瀑見学がひそかなブームとなっている。
水の透明度は抜群で、エメラルドグリーンの淵は一見の価値あり。夏はキャニオニングも楽しむこともできる。
藤河内渓谷が位置する佐伯市内のキャンプ場「うめキャンプ村 そらのほとり」。こちらは佐伯市出身であり、ヒマラヤ8000m峰四座を無酸素で登頂した登山家・戸高雅史氏が代表をつとめている。
郷里の佐伯市宇目の山々に囲まれた広い空は、氏がヒマラヤの高峰に登り続けたことで体感した宇宙とつながる感覚を体感できる場所。そんな想いをもとに2020年、このキャンプ場の運営を始めた。
そらのほとりでは近くの鷹鳥屋山へ足を運び、原生の森からエコパークエリアを望むプログラムも実施。空とつながる感覚が味わえる。
うめキャンプ村 そらのほとり
大分県佐伯市宇目大字南田原2513-3
https://soranohotori.com/
“サウナのまち”豊後大野市のキャンプ場
「おんせん県おおいた」にありながらも温泉地がないことから、観光地としての知名度が上がらなかった豊後大野市。実は古くから石風呂の文化があり、先人たちは阿蘇の火砕流が固まってできた溶結凝灰岩の岩壁に穴を掘って薬草を炊き上げ、蒸し風呂を楽しんでいたという。
こうした特色を背景に豊後大野市は2021年、大自然を生かしたアウトドア・サウナを観光資源として活用するために「サウナのまち」を宣言した。
このサウナのまちで“川サウナの聖地”といわれているのが「ロッジきよかわ」の「JOKI SAUNA」。目の前には日本百名山の一座である祖母山を水源とした奥岳川が流れており、川岸にMAX120℃まで上がるテントサウナを設置。清流が「自然の水風呂」となり、そのままドボンと飛び込むことができるのだ。
夏場は奥岳川でラフティング用ボート「パックラフト」も実施。川釣りや里山のハイキングなど、さまざまなアクティビティが用意されている。
ロッジきよかわ
大分県豊後大野市清川町宇田枝158
https://lodge-kiyokawa.jp/
「ゲストハウスLAMP豊後大野」は祖母山登山口に近いゲストハウス。こちらにも本格的なフィンランド式サウナ「REBUILD SAUNA」があり、自分でサウナストーンにアロマ水をかけて熱い蒸気を発生させる“セルフロウリュ”を楽しむことができる。
日本百名山に選定されている祖母山登山を楽しむのにも最適。初心者は川上渓谷までのトレッキングを楽しんでもいい。
ゲストハウスLAMP豊後大野
大分県豊後大野市尾平鉱山 57
https://lampinc.co.jp/bungoohno/
アウトドア好きにとってポテンシャルが高すぎる、大分県のユネスコエコパークエリアの知られざるスポット。まだ知名度が高くない今こそ、早めに足を運ぶことをおすすめしたい。