日本中の海がスタジオだ! 水中カメラマン堀口和重の「美しき海の世界」第5回
2月のはじめに山口県長門市の青海島へ向かいました。この数年、狙っていた生き物の生態行動が始まったからです。
私が住んでいる静岡県の伊豆から青海島までの距離は約900キロ。ノンストップで運転しても移動時間は12時間くらいかかります。
そんな時間をかけてまでも、撮影したい生物の生態行動が観察されていました。
その生き物は青海島の海中でしか見ることができないクサウオという魚です。クサウオの産卵がなんと9年ぶりに観察されたのです。
山口県の人気ダイビングスポット・青海島
山口県の青海島は周囲40キロの島です。本土からは50m離れていて、青海大橋でつながっています。島の北側は日本海の荒波で削られた奇岩や洞門がそびえています。その様子から別名で『海上アルプス』と呼ばれています。
またダイビングスポットとしても昔から有名な場所です。スキューバダイビングで潜ることが可能な場所は、日本海の外海側の船越と内湾側に紫津浦の2箇所があります。
船越は冬場は北風の影響で荒れることが多く、冬場にダイバーが潜ることが多いのは紫津浦です。内湾なので荒れることがほとんどなく、生き物たちの生態行動が観察しやすい場所でもあります。クサウオも紫津浦で生態行動が見られています。
クサウオが9年ぶりに産卵
クサウオは深い場所に生息する魚です。普段は100m前後の水深に住んでいると言われています。大きさはクサウオ科の仲間では最大の80センチ前後の大型の魚です。
冬場になると産卵のためにダイバーが観察できる水深にまで上がって来ることがあります。しかし、水温が高い時は浅場に上がってこないこともあります。また上がってきても、ナマコ漁の網にかかり息絶えてしまうクサウオも多くいるのです。
そんな環境でクサウオが9年ぶりに産卵したことは、嬉しいニュースでした。
現地に到着後、すぐさま海に入ってクサウオが産卵しているという場所に向かうと、卵塊とオスの姿がありました。産卵したメスの代わりにオスが卵を守っているのです。ちなみにクサウオのメスは産卵を終えると、どこかに消えてしまいます。
写真を見てもらうとわかるように、網に卵を生みつけています。漁で使われたものだと思いますが、クサウオにとっては卵が生みやすい場所でもあるようです。
また別の場所にも卵塊がありました。こちらは引っかかり捨てられた、釣り糸に卵を生み付けています。人間が使った網やゴミをうまく利用しているということは、クサウオが次の世代に命を繋ぐための知恵だと思いますが、何か心に引っかかる部分もあります……。
卵塊に別のオスが近寄ってきた時は喧嘩になります。
撮影時に何度も見かけましたが、卵を守ってるオスが、寄ってきたオスを追い払っていました。ガイドさんの話では寄ってきた別のオスが勝つと、そのオスが卵塊を守るとのことでした。
卵は2週間ぐらいで孵化するようです。私が青海島を出た後に、最初に生みつけらた卵は孵化したようです。私の滞在中にも卵は増えていたとガイドさんは言っていました。チャンスがあればもう1度青海島を訪れて、卵の孵化を狙いたいと思います。
撮影に成功したらまた記事へ掲載したいと思います。
次の撮影地は千葉・波左間
3日間の撮影を終えて、伊豆に戻りました。次の撮影地の千葉の波左間へと向かいました。テレビやニュースで取り上げられることも多い波左間の海にはあるものが沈んでいます。それを守るような魚も一緒に撮影できたので、次回紹介いたします。
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今回の撮影径路
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伊豆(大瀬崎)→沖縄(石垣島・黒島・竹富島)→伊豆(赤沢)→山口(青海島)