十数年に一度しか起きない!? 南カリフォルニアの「スーパーブルーム」現象とは
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    2023.03.20

    十数年に一度しか起きない!? 南カリフォルニアの「スーパーブルーム」現象とは

    カリフォルニア州アーバイン市(2019年3月撮影)。

    久しぶりの雨が南カリフォルニアにもたらしたもの

    南カリフォルニアの気候は地中海性気候に分類されます。晴天率が高く、一定の雨が降るのは冬の数か月間に限られます。

    特にここ数年は降水量が極端に少なく、深刻な水不足と山火事の多発が大きな社会問題になっています。

    ところが、今年の冬は久しぶりにまとまった量の雨が降りました。カリフォルニア州水道局のレポートによると、すでに州内のほとんどの地域で例年の2倍以上の降水量となっており、観察史上最多になる可能性もあるとのことです。

    多くの雨が降ったおかげで、各地の貯水池に水が溜まり始めました。今年は水不足の問題も多少は緩和されるでしょう。

    十数年に一度しか起きない「superbloom」とは?

    そして、この雨にはもうひとつの良い側面があります。

    普段は岩石と枯草ばかりに覆われた砂漠のような地面が一面の緑となり、色とりどりの野生の花が咲き始めたのです。春になると花が咲くのは日本では当たり前のことですが、ここ南カリフォルニアではそうではありません。

    そうした現象は「superbloom(スーパーブルーム)」と呼ばれ、10年か15年に1回くらいしか起きないとされています。最後にそれがあったのは2019年で、今回はまだ4年しか経っていません。

    カリフォルニア州アーバイン市その2(2019年3月撮影)。

    今年がsuperbloomにあたるかどうかは、はっきりとした定義はないそうなのですが、それでも久々に野生の花を満喫できると、人々が期待を高めるだけの雨が降っています。

    訪問客で押しつぶされた市がトレイルを閉鎖した過去

    もっとも、滅多に見られない花が一斉に咲くことで起こる弊害もあります。

    2019年には野生の花を眺めるため(あるいはSNS映えのする写真を撮るために)、花の見どころと評判になった公園やトレイルに多くの人が押し寄せました。リバーサイド郡にあるレイク・エルシノアという市もそのひとつです。

    カリフォルニア州の州花でもある「カリフォルニア・ポピー」(日本名:花菱草)が山の斜面いっぱいに咲いた光景は、当時ニュースやSNSで話題に。

    結果的に、「まるでディズニーランドのよう」とナターシャ・ジョンソン市長が述懐するほどの訪問客が、人口7万人のレイク・エルシノアへと連日殺到しました。

    2019年春、レイク・エルシノア。※この写真(“190313 071 Lake Elsinore, Walker Canyon Rd – Hill Top Drive Trail, Echscholzia californica California Poppy ” by cultivar413)は、 CC BY 2.0の下でライセンスされています。

    人が多くなれば、その中にはマナーを守らない人もいます。

    決められたトレイルから外れて花を踏み荒らす、ごみを放置する、などといったルール違反行為が多く見られ、荒らされたトレイルの修復に多大な時間と費用が発生しました。

    さらに、その再現を恐れて、ジョンソン市長は今年早々にトレイル閉鎖を決めたことがニュースになりました。

    足跡はトレイルだけに残して、写真は遠くから撮る

    もちろん、ほとんどの自治体は今年も公園やトレイルを一般に公開しています。

    あえて具体的な地名を挙げるのは避けますが、南カリフォルニアにある州立公園なら、どれを選んでも失望することはないでしょう。

    さらに地域を狭めて、私が住むオレンジ郡内の地域公園なら、ロサンゼルスからも遠くありませんし、アクセスも容易です。

    カリフォルニア州アーバイン市その3(2019年3月撮影)。

    大ざっぱに分類すれば、海に近い地域では2月から4月、山間部では4月から5月くらいまでが、南カリフォルニアで野生の花が咲く季節だと言われています。

    そして、これはあまり良いことではないそうなのですが、冬に雨が多く降ると、春先の南カリフォルニアは菜の花に似た“Yellow Mustard”という花に囲まれます。

    特に、海に近く日当たりの良い斜面では、全体が黄色に染まる様子を見ることができます。

    カリフォルニア州クリスタル・コーブ州立公園(2019年4月撮影)。司馬遼太郎著『菜の花の沖』のタイトルを彷彿させる。

    あまり良いことではないと書いた理由は、この黄色い花は外来種の植物であり、本来はこの地に咲いていてはいけないものだからです。

    私はある州立公園でこの植物を根こそぎ伐採するボランティアに参加したこともあります。綺麗なものは綺麗だけどなあと、こっそり胸の中で呟きながら、ですが。

    次のsuperbloomはいつになるか分かりません。

    2019年の悪夢を繰り返さないように、マナーにだけは気をつけて、野生の花を眺めながらのハイキング、トレイルラン、あるいはマウンテンバイクを楽しみたいものです。

    私が書きました!
    米国在住ライター(海外書き人クラブ)
    角谷剛
    日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

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