日々多様化している現代社会において、今までの当たり前を当たり前と考えずに、視点を変えて物事を考える。「Rethinkアワード実行委員会」はそんな“Rethink”の文化を目指して立ち上げた団体だ。
そして去る2月16日、Rethinkアワード実行委員会ではRethinkによって社会に影響を与えた「人」「企業」「自治体」に対して表彰を行う「Rethinkアワード2023」を開催。同団体の特別実行委員をつとめる田村淳さんもとともに、各賞の受賞者が一同に集まった。
自分がやらなくても、Rethinkしている人に触れるだけで思考が変わる
「Rethinkって自分自身がしなくても、している人のそばにいてそれに触れるだけで自分の思考が変わる。ものすごく良い影響しか及ぼさない、このRethinkという文化がもっと広まればいい」
表彰式では自身が考えるRethinkについてこう述べた田村さん。何か行動を起こさなくても、アワードを通じて受賞者の取り組みを知ってもらうことで、新しい価値観や行動を起こすきっかけが生まれる。そんな可能性を秘めたRethinkアワード2023の受賞者について、まずは知ってもらいたい。
人部門受賞:仲信達也さん(映像作家)
アーティストの五十嵐靖晃氏が2018年春から熊本県津奈木町の住民とともに、約4年の歳月をかけて行われた《海渡り》のプロジェクトを仲信達也さんが撮影。海渡りとは、継承が難しくなっている弁天祭りを住民とともにアートの力で再構築し、後世に受け継ぐことを目指すアート作品だ。仲信さんによるこの映像作品は地元の魅力を届けられる映像クリエイターの育成を目的に開催される「地元サイコゥ!映像祭」で、グランプリを受賞している。
仲信達也さんの受賞コメント抜粋
「撮影した熊本県津奈木町は私の地元ではありません。しかし、津奈木町は私のもうひとつ故郷だと思っています。私が今回この賞をいただき“Rethink”したのは、地元そのものの捉え方です。生まれ育った場所だけが地元ということではなくて、縁があって大好きなった場所も地元として捉えることで、その土地に愛を持って貢献できるよう、新しい映像をどんどん作っていきたいと思っています」
人部門受賞:吉村 萌さん(大学生)
「地元をRethink(再考する)」をテーマにポスターデザインを募集した「リシンク クリエイティブコンテスト2022」で、最優秀賞を受賞。受賞作品では「なにもない?? いや、見えてないだけ」は、地面に座る1人の少女が描かれている。
吉村さんの出身地である岐阜県瑞浪市は、市内を流れる土岐川から誰でも簡単に化石が発掘できる“化石の街”として知られている。作品には「今は海がない瑞浪市、実は2千万年前は海の底だった」といった文も添えられた。
吉村 萌さんの受賞コメント抜粋
「岐阜県瑞浪市は美濃焼と呼ばれる陶器やタイルが市の特産品です。海なし県の岐阜県ですが2000万年前の津瑞浪市は海の底だったので、貝類や魚類や海生哺乳類の化石が見つかります。ほんの少しだけ地上に出ている化石の一部は、そこだけ見るとただの石。でも、そこに座っている人はすぐ下にあるものに全く気付いていません。
有名な観光地もなく、誰もが知る特産品もない地方都市に住む人は、『うちの地元何もない』と言いますがそんなことはないと思います。Rethinkすることで、地域の宝物を見つけてほしい。そんなメッセージを込めて作品を作りました」
企業部門受賞 株式会社ファーメンステーション
ファーメンステーションは独自の発酵技術で未利用資源を再生・循環させる社会を構築する、研究開発型スタートアップ企業。例えばシードル(りんごのお酒)を製造する過程で出る「りんごの搾りかす」からエタノールを抽出し「お米とりんごのウエットティッシュ」を発売している。このような未利用資源から製造するエタノールは、SDGsの観点から海外からも注目されている。
ファーメンステーション代表取締役 酒井里奈さんの受賞コメント抜粋
「いま、脱石油のなかで天然由来の素材というのがあらゆる場面で求められていますが、私達にはいくつか変わった特徴があります。まず私達は使われていないと思われるもの、例えば食品の残渣、フードウェイストと言われているもの、傷んでしまった果物といった未利用資源だけを使います。さらに製法ですが、環境負荷が低いやり方や自然エネルギー、水の使用量を少なくして製造します。さらに、ひとつの素材からたくさんのものを作ります。いちばん得意なのはエタノール、アルコールです。
賞の選定理由にグローバルという言葉もありましたが、海外には本当に未利用資源があふれていて、この日本発の発酵技術をベースにしたものをどんどん展開していきたいと思っています」
自治体部門受賞 愛媛県今治市
同市では2018年に可燃ごみ処理施設・リサイクルセンター等で構成される新たなごみ処理施設「今治市クリーンセンター(通称:バリクリーン)」の稼働を開始。通常時は年間約2万人が集いスポーツやイベントを楽しめる憩いの場となっている一方、災害時となれば市の指定避難所として活用されている。今回は“今治モデル”のコンセプトや役割、そしてコスト削減や脱炭素社会に向けての取り組みも広く担っており、他の自治体も参考となる善き前例である事が選定理由となった。
「今治市のクリーンセンター『バリクリーン』が既存のゴミ処理施設の役割として、廃棄物を安全かつ安定的に処理する施設であることはもちろん、防災体制の強化、そして地域コミュニティの充実に重要な役割を担う施設としてご評価いただけたということで大変嬉しく思っております。
バリクリーンは安全安心で、人と地域と世代を繋ぐをコンセプトに、安全かつ安定的なゴミ処理施設として、また、地域を守り、市民に親しまれる施設として運営をしてまいりたいと思っております。全国の皆さん、ぜひバリクリーンにご視察においでください」
表彰式をうけてRethinkアワード実行委員会の代表をつとめる井上朋彦さんは「今日表彰させていた皆様は、今までの当たり前という概念から少し違う視点と考えを持たれて、そして取り組まれている。まさにRethinkされて非常に素晴らしい情報発信や取り組みをされている方々。この短い1時間のイベントのステージ上でいくつものRethinkが生まれてましたし、田村淳さんがおっしゃってる通りRethinkする人たちが集まると、どんどん広がっていく」と話している。
今回受賞された方々のRethinkを知った私たちは、一体何ができるのか?次にRethinkをするのは私たちの番なのではないだろうか。