車中泊の「眠れない」問題の解決方法とは?
空前の車中泊ブームの背景には、宿泊費を節約できることや、密を避けられるという利点はもちろんありますが、「クルマで眠る」という行為そのものに根源的な楽しさがあることは言うまでもありません。
自宅に比べれば窮屈で不便にもかかわらず、秘密基地のような車内にこもって食事をしたり就寝したりする遊びには、ワクワクするような魅力があります。
しかし、想像以上に「眠れなかった」「苦しかった」という経験をした人も多くいるのではないかと想像します。なぜなら私自身、快適に眠れるようになるまでかなりの月日を要したからです。
車中泊が「きつい」「しんどい」思い出になっては残念ですし、とくにドライバーが疲労を残したまま運転するのは危険でもあります。
今回は、ときに数週間の連泊もする私が考える車中泊の快眠ポイントと、その対策をご紹介します。
車外からの光と視線をカットする
暑さ、寒さ、傾斜、音など睡眠を妨げる要素はたくさんありますが、基本となる対策は遮光でしょう。
簡易的にはバスタオルを広げるなどの方法もありますが、「仮眠だからよい」「短時間だからよい」と妥協せず、カーテンにはこだわることをおすすめします。
目的のひとつには、本来の用途である「遮光」があります。山間部のキャンプ場を除けば、車中泊では上空をさえぎるもののない広大な駐車場などに滞在することが多いはず。
季節にもよりますが、早朝4時も過ぎれば明るい太陽光が射し込み、車内の温度は急上昇、春や秋でも寝ていられない暑さとなります。
加えて重要なのが、カーテンやプライバシーシェードがないと「車外からも中が見えてしまう」ということ。車内で就寝している様子がわかるのは防犯上も非常に危険なことです。
暴力犯罪や性犯罪、いたずらなどの可能性も考え、車内の様子がなるべくわからないようにしておくことが肝要だと考えます。
もしカーテンがオプションになっているキャンピングカーなら必ず設定することや、普通車ならマルチシェードを全面用意することなど、初期費用はかかりますが後にきっと役に立つ選択です。
身近な材料でDIYする方法もYouTubeなどでたくさん紹介されていますが、専用品ならアイズ社の製品もおすすめです。車種別にジャストサイズで設計された各種シェードが取り揃えられています。
目隠しをすることでぐっとプライベートスペースらしくなり、心理的安心感にもつながります。
シートの凹凸を埋めて平坦にする
キャンピングカーではないクルマの場合、ラゲッジスペースで横になったり、シートをリクライニングして眠ることもあるでしょう。
しかし、クルマのシートには凹凸がたくさんあり、不自然な姿勢を強いられることも少なくありません。
シートの凹凸を埋める「隙間クッション」「スペースクッション」が多数市販されているほか、衣類などの荷物を詰める、インフレーターマットやエアーマットを使う、レジャー用のウレタンマットを敷くなどの方法で、なるべくフラットな空間を作りたいです。
このとき、なるべく滑らない素材を選んだり、布1枚でもカバーをかけることがポイントです。車内の傾きで、身体がツルツルと一方向に寄らないようにするためです。
スマートフォンの水準器アプリで場所を決める
自宅とは違う車中泊ならではの外的要因として、地面の傾斜があります。キャンプ場などでは水はけのために、あえて傾けている場合もありますね。
もっとも簡単な対策は「平坦な場所に移る」ことですが、それができない場合、自サイト内でなるべく水平になる位置を探します。
市販の水準器のほか、スマートフォンのアプリでも簡易的に傾斜がわかります。
どうしても移動できないときは、足が下がるようにクルマの向きを変えるか、身体の向きを変えるのも一案です。
仮眠用リクライニングシートや夜行バスを想像していただくとよいですが、人間にとって「頭が下がっている」状態は非常に不快で体調不良を引き起こしかねない一方、「足が下がっている」状態には多少の耐性があります。
車中泊の頻度が多いなら、数千円程度で市販されているレベラーを積んでおくこともよいでしょう。RVパークなどでは、レベラー代わりの板を貸してもらえるケースもあったので、尋ねてみるのもいいですね。
使い慣れた寝具を持ち込む
スペースの限られた車内では、なかなか自宅と同じ寝具というわけにはいきませんが、「慣れた寝具を持ち込む」ことが安眠には効果的だと感じています。
面倒でも自宅のようにシーツを敷くことや、季節に合った寝具を使うことなどです。
いかに荷物を減らし、車内スペースを有効に使うかがテーマとなる車中泊では「兼用」の考え方が大事なのですが、寝具に関してはこの限りではありません。
私もこれまでクッションを枕として使ってみたり、ウレタンカーペットを敷き布団代わりにしてみたりと試行錯誤してきたのですが、やはり代用品は寝具の吸湿性や肌触りには敵いません。
見た目のおしゃれさには少々欠けるのですが、家庭用寝具に少しずつ近づけるアップデートを続け、だいぶ寝やすくなりました。
掛け布団に関してだけは、利便性を優先してシュラフを使っているのですが、独特のシャカシャカ音や、つるりとした肌触りにはいまだに慣れません。キャンピングカー専用寝具「シュラフトン」が気になる今日この頃です。
寒さ対策には電気毛布がおすすめ
キャンピングカーの暖房設備であるFFヒーターは、車内を短時間で強力に暖める便利な装備ですが、就寝時に使うのにはいくつかの難点があります。
燃焼音が出ること、暖気が天井付近にたまり室内に温度差ができること、温度の微調整が苦手なことなどです。
起きているときはいいのですが、夜だと暑くなってはスイッチを切り、また寒くなっては目が覚め、というループに陥ってしまうことがあります。
私が愛用しているのは電気毛布。シュラフを併用すれば、「弱」設定でほんのりと温まるだけで十分です。静音で動作する上に、身体に接する場所が確実に温まり、温度のむらもできません。
給電方法には車載用製品をシガーソケットで使う、USB対応製品をモバイルバッテリーで使う、家庭用製品をポータブル電源で使う、サブバッテリー&インバーターを使うといった方法があります。
暑さ対策には早寝早起き
夏の暑さは一番の難問です。家庭用エアコンや車載用クーラーを搭載していないクルマの場合、暑さ対策は「暑い場所・時間帯に寝ない」ことしかないと言えるでしょう。
ベンチレーターで通風を確保する方法もありますが、太陽の力には焼け石に水。春の終わりにはもう、汗びっしょりになって目が覚めることになりますし、熱中症など健康被害のおそれもあります。
定番は「標高の高い場所に行く」「日陰に駐車する」「太陽に合わせて早寝早起きする」といったところ。気温の高い季節には、早朝から行動して、日が暮れたら早々に寝るというくらいのスケジュールがよさそうです。
就寝用イヤホンや耳栓の活用
一般的な住宅と異なり、壁一枚を隔ててすぐに屋外という車中泊では、周囲の音に起こされることも少なくありません。
他車の走行音やアイドリング音はもとより、クルマのすぐ脇を通り抜ける人の話し声や、ペットの吠え声がごく耳元で聞こえ、飛び跳ねるほど驚くこともあります。
私のクルマにはありませんが、ポップアップルーフを上げていると、なおさら気になるところかと思います。
私が習慣的に行っているのは、就寝時にイヤホンでオーディオブックを聴くこと。
物語に集中することで、車外の音をぼんやりとマスクするような効果があり、かつ耳栓ほど音を遮断しないので周囲の状況に注意を払えます。
逆に静か過ぎる場所では、車外のわずかな音が気になって神経過敏になってしまうことがあるのですが、その防止にもつながります。
なお、長時間イヤホンを装着することには、健康上の悪影響も指摘されています。スリープタイマー機能を使ったり、就寝時に使えるよう設計されたいわゆる「寝ホン」を使ったりといった工夫をおすすめします。
私は防犯上あまり使いませんが、管理の行き届いたRVパークなどでは耳栓もいいですね。
そんな私も「どうしても耐えられない」と思った施設がありました。チェックイン後に気づいたのですが、車中泊スペースがボイラーのすぐ隣に位置し、空気の振動をともなう重低音が絶え間なく響くスポットでした。
音としてうるさいわけではないのですが、身体に感じる低音は「頭が痛くなりそう!」と思うほどで、これには参りました。対策は思いつかず、「リピートしない」という結論しかありませんでした。
車中泊の眠れない悩み…最後の解決法は「慣れ」
最後に、意外にあなどれないのが心理的要因。旅の興奮のほか、車中泊を始めたばかりのころは自分でも意識しない緊張感や警戒心などで眠れないことがありました。
これは「回数を重ねる」「慣れる」ということが唯一の解決法でした。また、安心できる車中泊地を選ぶ、というのは現在でも大事なポイントです。
音、光、寒暖などへの対処はだいぶ上手くなった自覚がありますが、「車外がなんとなく気になって眠れない」というのはいまだにあるので、こればかりは気持ちを切り替えて翌日に場所を移すことにしています。
いつか「自宅よりもよく眠れる!」という達人の域に達するのが目標です。