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    2023.04.28

    ネイチャークラフト作家・長野修平にとっての「至福の時間」とは

    ネイチャークラフト作家の長野修平さん。

    焚き火と野外料理がある里山暮らしを実践している、長野修平さん。神奈川県・道志川の畔で、手作りの家「みのむしハウス」に家族4人で暮らしつつ、アトリエ「NATURE WORKS」を主宰。毎日の日課は裏山や庭先での焚き火だ。どんなに忙しい日々を送っていても、焚き火の横でコーヒーを片手に一服することで、心がリラックスして満たされるという。

    クラフトも焚き火も、古き良きアメリカがお手本だった

    無人島に持っていきたいものは? の問いに「刃物とたばこと…コーヒーかな」と、思案気味に答える長野さん。

    「食料は現地で調達できるし、ナイフがあれば火もおこせるし、寝ぐらも作れる。でもこの3つは代わりになるものがないからさ」

    30歳になるかならいかのころ、アウトドアに目覚め、キャンプをするようになった。幼少期から西部劇が好きだったので、ネイティブ・アメリカンに憧れてネイチャークラフトをはじめたのもそのころだ。20年以上前、実際ネイティブ・アメリカンゆかりの地、ニューメキシコ州サンタフェを旅し、クラフトのルーツも学んだ。

    「ネイティブ・アメリカンではスマッジングという儀式があるんです。ホワイトセージの葉を燃やし、その煙を浴びることで身も心も浄化される。焚き火の横でたばこを吸っていると、そんなことを思い出しますね」と、旨そうに紫煙をくゆらせる。

    手に持つククサやトライポッドはもちろん、後ろに見える小屋も手作り。

    いまではすっかり日課となった豚バラ肉の燻製作り

    西部劇で印象に残ったシーンがもうひとつある。焚き火に吊るされた塊肉だ。傍には黒くなったコーヒーポット。肉は焼けたところからナイフで削ぎ、そのまま口に運ぶ。そのワイルドな姿がなんとも格好良く、いつからか長野家でも焚き火と塊肉がセットになった。

    トライボットに吊した豚バラ肉の塊にじっくり火を通す。

    「キャンプに行ったらまず、火をおこすでしょ。そうしたら、塩漬けした肉を吊るしておくだけ。ゆっくりじっくり丸1日かけて自然な煙で燻すから、香りがのって旨いんだよ。広葉樹だったらどんな薪でもいい。木の種類によって香りが変わるから、それを楽しむのも面白い」

    塊から数枚削り出し、温めた鉄板でジュっと焼く。

    「彩りに野草でも積もうか。カキドオシとベーコンの相性がいいんだよ」

    焼けた部分から薄く削り出す。そのまま食べても、さらに炙ってもいい

    長野家の裏山は野草の宝庫。春から夏にかけては宝の山だ。

    今日のつけ合わせは、カキドオシにサンショウやタンポポの若葉が並ぶ。

    旨い肉をいただいたあとは、コーヒーで一服し余韻を楽しむ

    食後はコーヒーで一服。ここ数年、気に入っているのが、スウェーデンスタイルのコーヒー。

    「もともとパーコレーターで淹れていたんだけど、お湯が沸いたら火を弱めたりと、側についていなければらなくて、結構面倒なんだよ。でも、スウェーデンスタイルなら、お湯が沸いたら粉を入れて、遠火に置いておけばいい」

    中挽きした粉をこんもり入れ、10分くらいおいて煮出す。

    待っている間に、薪の燃えさしでたばこに火をつけ、一服。

    「昔、スキー場でバイトしていたとき、ロッジ に暖炉があってね。暖炉の火でたばこに火をつけると夢が叶う、っていわれたんだよ。それがウソかホントかは知らないけど、その感覚が好きでね。100円ライターで火をつけるのはなんか寂しいけど、燃えさしで火をつけるって、ワイルドだし、その行為の中に寂しさがないんだよね」

    焚き火の中から燃えさしを拾い、たばこに火をつける。

    ケトルを振って粉を沈殿させたら、ククサに注ぐ。

    「焚き火で料理作るでしょ。食べ終わりにコーヒー飲みながら、残り火で火をつけたたばこを吸う。これこそ至福の瞬間。ひと作業終わったとき、車を降りたとき、リラックスしたいときに吸うことが多いんだよね。自分の“間”を作るというか、リズムを刻むというか。コーヒーとたばこは僕のリラックスツールなんですよ」

    「起きている間中、コーヒーとたばこが常に手元にあるかな(笑)」

    構成/大石裕美 撮影/小倉雄一郎

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