初期投資を回収できる価格設定とは?個人オーナーのキャンプ場オープン奮闘記 vol.2【準備・申請編】
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    2023.04.30

    初期投資を回収できる価格設定とは?個人オーナーのキャンプ場オープン奮闘記 vol.2【準備・申請編】

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    ©︎Shigeo Ogawa

    202112月、瀬戸内海を望む広島県江田島市にオープンしたキャンプ場「Hawk Nest Family Village」。オーナーのコージさんは、個人で、会社勤務を続けながら、数々の難題を乗り越えてキャンプ場の開設にこぎ着けました。どんなプロセスを経てキャンプ場の個人オーナーとなったのか、コージさんの奮闘記をお届けします。第2回は、キャンプ場作りの「準備・申請」編です。

    第1回目【構想編】はこちら

    キャンプ場の利用料設定という難問

    個人でのキャンプ場オープンという夢——を抱くのは良いとしても、ちゃんと成り立つのか?規制などの障害は?などなど手探り状態ながら、具体的な検討に着手したのが、2020年9月ごろのことです。

    そもそもキャンプ場の経営自体は、初期投資を別に考えると、売上(=キャンプ場利用)を上げるための仕入れは不要。すなわち粗利100%という優良な事業。つまり、初期投資さえクリアできれば持続性を確保できます。

    しかし、その初期投資が過大にかかります。それでも、手持ちの資金でまかなえる範囲に抑えることができれば、前述のように持続的な事業になるのだが…と堂々めぐりに陥りかけます。

    とはいえ、初期投資を十分回収できるような価格設定が出来ればいいのです。ただ、全国のキャンプ場は公共投資による公営キャンプ場、あるいはその払い下げによるキャンプ場が多く、初期投資の回収の計算が除外された価格設定になっています。その結果、キャンプ場の市場価格を押し下げているのが実情です。なお、これら公共投資は、キャンプ事業そのものでの儲けが目的ではありません。キャンプ場を開設することによって人の流れを得て地域を活性化することが目的です。なので、公設キャンプ場のリーズナブルな利用料を否定しているわけではありません。

    …といったことを思案しながら、私自身のキャンプ場構想でも価格設定に苦慮しました。参考までに広島や近県のキャンプ場の価格をチェックすると、とてもじゃないが初期投資の回収にはほど遠いものでした。最終的には、周囲の価格をかなり上回る、全国平均価格の水準に設定して勝負に出ます。ただ、価格表の内容にいくつかの工夫を加えました。詳しくは、後ほどの項目で紹介します。

    さて、最大の難関となるのが、初期投資です。いろんな要素、しかもそれぞれ重い要素が複雑に絡んできます。初期投資の内訳は、ざっとこんな感じです。

    • 用地取得費用
    • 伐採・整地費用
    • 上下水道工事(+申請費用)
    • 建築確認申請・承認費用
    • 共用部設備費用(水洗トイレ、温水シャワー、流し、ゴミステーション)
    • 電気工事
    • ロッジ建設費用(木材等+搬入費用+基礎工事+組立て費用+住設費用)
    • 柵、ゲートなどの施設費用
    • Wi-Fi
    • その他、各種申請費用

    これら全てを丁寧に解説すると冗長になるのですが、キャンプ場立ち上げには必須項目です。以下、特に気になる点を中心にご覧ください。

    用地取得費用

    コージの場合、幸いにも土地は先祖の所有地を譲り受けたもの。2.300㎡という広さ(「Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島」の内野×3ぐらい)にも関わらず、固定資産上の評価は20万円に過ぎませんでした…。

    全国各地には格安な土地がたくさんあると思います。キャンプ場開設を考えると、できるだけフラットな土地(重機を入れての整地のコストなどを考慮)、アクセス(道路)、水資源が特に大きなポイントになると思います。

    伐採・整地費用

    これも業者さんを入れての工事となると大変な額になります。コージは費用削減のため、自らジャングル化していた雑木林を伐採しました。公共投資によるキャンプ場のようなアスファルト舗装の導入路や区画サイトの整備などは行わず、あくまで自然を活かし、自力で可能な範囲での整備に徹しました。

    上下水道工事(+申請費用)

    これが費用的には最も苦戦した項目。最終的に4社目で決めたのは地場の業者さんで、実現に向けた前向きな姿勢や、オープン後の保守などの点で非常に良かったからです。

    キャンプ場の水は、①沢水や湧き水などの自然水 ②井戸水 ③上水道の3択かと思います。①については当地は尾根上の高台だったため近くになく、②も同様で掘っても出ないリスクや水質管理の懸念もあり、③にしました。キャンプ場予定地の下にある公園までは水道が来ていたのは助かったものの、それでも新たに150mも水道管を敷設することが必要でした。そのうち50mは舗装道の切削再舗装も必要で、予想以上に費用が嵩みました。

    なお、水道工事は、市の水道課に開発分担金なるものの支払いが必要で、水道管の太さでその費用が変わってきます。太さによっては百万円単位になるので事前に充分な確認が必要です。下水に関しては、下水道につなげるか、浄化槽を設置するか、になりますが、当地のある江田島市の浄化槽設置補助の対象になることが判明し、浄化槽で進めることにしました。

    建築確認申請・承認費用

    キャンプ場予定地があるのは、広島県江田島市江田島町。ここは農業振興地でもあり、都市計画域でもあるという、相反するようなダブルの規制がかかっていました。農業振興地の除外申請は県へ行うのですが、承認がおりるまでに1年半かかるという時間的制約があります。一方、都市計画域ということは、小さな建屋でも建築確認申請が必要です。これには測量や建築確認準拠の避難梯子などが求められ、100万円を超える想定外の費用がかかることになりました。

    共用部設備費用(水洗トイレ、温水シャワー、流し、ゴミステーション)

    建屋を建てて中に各設備を入れると、相当の額になるので、仮設トイレやシャワーブースのメーカーから選定しました。仮設トイレというとイメージがあまり良くないかもしれませんが、ハマネツ社さんより快適トイレ仕様という少しグレードの高いものを選定。匂い軽減構造、音姫や消毒スプレ-、鏡など、特に女性にはたいへん好評です。

    シャワーブースは、温度調整水栓付きの独立ブースを2基で、親子でも入れるスペースもあります。流しは、よく見かける横長で蛇口の並んだものではなく、個別に作業台も付いた独立型の流しを3点そろえました。温水も出る仕様なので、特に冬場は好評です。屋根はタープ2枚で自分で設置し、費用を抑えました。

    電気工事

    まず電信柱を含めた幹線の延長ですが、これは中国電力が彼らのコストで電柱設置と近くまでの配線をやってくれます。自己資金での工事はそこからなので、上記の水道とは様相が異なります。

    電気配線は、共用施設と自身のロッジに行いましたが、外部の防水コンセントを計5ケ所に設置したのは後々有効でした。テントサイト3ケ所に電源リールでオプション供給できるようになったのと、追加で共用施設に小型冷蔵庫を設置できました。

    ロッジ建設

    事務棟兼コージの住居として、ログハウス各社のカタログをいろいろ比較検討して決めたのが、岐阜の親和木材工業さんです。間伐材でコストを抑えて環境にも良く、キットのデザインも優れています。基本デザインをベースにいろいろカスタム対応にも応じていただけけました。ただ、小さいサイズだと自分でも組み立てることができる仕様でしたが、注文した大きさだと不可能とのこと。そこで、近隣圏でこのロッジ建設の経験がある三原市の井上建設さんを紹介いただきました。基礎からしっかり丁寧な作業で作っていただき、結果的にとても良かったです。

    なお、塗装は自分で行うことで費用を抑えました。無色の防腐剤で木材の風合い生かしたロッジに出来て気に入っています。これらにより、「キャンプ場に住む」ということが実現できたのです。

     柵、ゲートなどの施設費用

    全周で約200mある周囲の柵とゲート設置は、コスト面を考えると悩みどころでした。いろいろ構造を考えましたが、最終的には伐採した木材の太さ2〜3cmのものを使って、紐で三脚状に組むというシンプルな構造にし、自分で組み立てました。さらに、イノシシの入ってきそうな面には、金網を立てかけて防いでいます。ゲートも伐採木材+金網で手作りしました。結果的に手作り感も醸し出せて好評です。ただし、後々のメンテにはそれなりの手間がかかっています。

    Wi-Fi

    こんな場所まで光ケーブルを敷設して頂きました。支払いシステムとともに光ケーブルとフリーWi-Fi敷設とをセットで大手のUSENさんに頼み、光ケーブルを敷設工事するNTTさんに動いて頂きました。実際の敷設業者さんは、ジャングル状態の中での敷設にかなり苦戦されたそうで感謝です。

    その他、各種申請費用

    各種申請、許認可関係は下記のとおりです。

    • 農業振興地除外申請
    • 農地転用許可
    • 建築確認、消防法
    • 水道工事に伴う道路通行止め申請(警察署)
    • 浄化槽設置届け
    • (旅館業登録):ロッジ・バンガロー宿泊や常設テントがある場合に必要。※当地は貸しテントの常設化は止め、旅館業登録は不要でした。

     いろいろ羅列しましたが、地域により事情・状況は異なる部分はあるにしても、ひとつひとつすべてクリアしていかないと、キャンプ場のオープンにたどり着けません。大手企業や手慣れた事業者さんと異なり、全て、一からの個人事業であったコージには、何もかもが手探りからのスタートになりました。これらの項目については、その後、検討や準備を進めながら金額を固めることになりました。引き続き大苦戦となる金額面については、後ほどの章でまとめます。

    vol.3 キャンプ場作り着手編に続く

    私が書きました!
    キャンプ場「Hawk Nest Family Village」オーナー
    コージ(秋田浩一)
    30数年の会社勤務を経て、2021年12月に広島県江田島市にキャンプ場「Hawk Nest Family Village」をオープン。同キャンプ場の詳細・予約は、上記リンク先のウェブサイトをご覧くさい。

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