日本で唯一のプロハイカーとして、世界各国の数百kmから数千kmにおよぶロングトレイルを次々と踏破している斉藤正史さん。2022年12月から2023年1月には、1カ月以上かけて台湾を巡りました。そんな斉藤さんによる「台湾トレイル体験記」をお届けします。vol.10は、台北市内を一周する「台北グランドトレイル」のゴール編です。
台北グランドトレイル、最終日
「台湾グランドトレイル」最終日は、セクション6と7。楊さんと頼さんと3人でスタートしたのでした。連日の雨で、やっぱり最終日も朝から雨でした。セクション6のスタート地点周辺は、「台湾の頭脳」といわれるエリアで、研究機関や大学が数多くあるそうです。そういえば、昨日歩いた時に学生がやたら多かったなと思い出していました。昨日歩いて戻った道を、今日はバスで進みます。昨日歩き終えた中華科技大学脇からスタートです。
トレイル協会の楊さん、頼さんと歩いていると、中国語・英語・日本語が行き交います。僕と楊さんは日本語で、僕と頼さんは英語、楊さんと頼さんは中国語で話します。頼さんは、英語の翻訳もする程英語が堪能な方です。
楊さん行方不明?
歩き始めると、急な古道が続くこともあり、楊さんが少し遅れ始めました。僕と頼さんは、古道の途中にあるお寺を見学しながら、楊さんを待つことにしました。
5分後、「楊さん遅いね」と頼さんがいい、その時に初めて楊さんとはぐれた事に気付いたのでした。楊さんにLINEを入れるも、回答はありませんでした。
すれ違う人々に、楊さんの特徴を話して、見なかったか聞いてまわったのですが、楊さんらしき人を見かけた情報はありませんでした。進んだり戻ったり。小一時間ほどして、楊さんから「どこ?僕ここ」と写真が送られてきました。15分ほど先を歩いているようでした。頼さんは「楊さんハイカーボディになっていたね」と笑った。
ここ最近、楊さんと一緒に歩いていたので、楊さんも鍛えられていたのかもしれません。そういえば、毎日筋肉痛ですと言っていたような気がします。
見覚えのある道が!
セクション6の後半に差し掛かると、淡蘭古道で歩いた道に出ました。実は、淡蘭古道を歩いている時、台北グランドトレイルのマークを発見し、GPSで確認すると、一部一緒になっていたのでした。
淡蘭古道を歩くのは5日振りですが、ずいぶん昔のように思えます。その後、台北グランドトレイルのルートは、淡蘭古道と別れ、町中を進んでいきます。
小学校や中学校、大学などの教育機関が多いエリアに入ると、すでに13時を過ぎていました。頼さんがお勧めのお店があるから行きましょう!といって少しだけトレイルから離れた「滇味厨房」に入りました。お昼を過ぎているのにまだ店内は学生で賑わっていました。さすが頼さんのお勧めのお店です。美味かった!
雨続きでテンションが下がっていた3人にまたパワーが戻ってきたのでした。
終わりなき石段!?
指南宮千階親山歩道に入ると、石段が続いていきます。100段、200段と3人で数え、笑いながら登っていましたが、いつまでも終わらない石段にちょっとずつテンションが下がっていきます。400段位のぼると、楊さんのペースがどんどん落ちてきました。時折現れる野良猫で足を止め楊さんを待ち、ゆっくりと登っていきます。
「MASAさん、日本の会社の名前がありますよ!」石門の柱を見ると「大新自動車株式會社」と書いてありました。確かに株式会社という表記は日本だと思います。どこの会社だろうとググってみましたが、見つけられませんでした。
あとから調べて分かったのですが、この石段、1,200段以上あるそうです。雨が止んでいて良かったなと思いながら登り切ると、そこは指南宮という有名なお寺がありました。指南宮は、台湾道教の総本山で、3つの宗教が1つの宗教施設にある非常に珍しい場所だそうです。
登ってきた石段を振り返ると、台北の南側の町並みを一気に見下ろせるとても素敵な場所でした。さらに指南宮を進んでいくと、ロープウエイが動いていて、旧正月の飾り付けされていました。こちら側からみると、とても宗教施設には見えず、まるで観光地です。GPSデータを見ると、ぐるっとまわってロープウエイの乗り場まで下りていく道のりでした。
再び現れた急な石段に、楊さんが一気にペースダウンしていきます。再び急な石段を登りきると、ロープウエイの反対側の乗り場に着いたのでした。やけに猫のオブジェや猫をテーマにしたオシャレなカフェがあるなと思っていたら、ここは「猫空間」というお茶で有名な地区だそうです。そういえば、観光の雑誌で「猫空間」のロープウエイが出ていたような気がします。さすがに観光客も増えて周辺は賑わっていました。ここまで歩くと、ゴールは間もなくです。
オシャレなオブジェがある古道をゆっくり下っていきます。日が暮れそうだなとおもいつつ歩いていると、最後の古道、飛龍古道へ道へとトレイルは続いていました。石畳の道をゆっくり下り、道路に出るとそこにはセクション8の案内板が出ていました。
「やった!MASAさん」楊さんの日本語でようやく終わりを感じました。
長かったような短かったような…。やはり終わってみると、あっという間だったのかもしれません。僕の台湾の国家緑道3ルートと、台北グランドトレイルの旅がこうして終わりを告げたのでした。
次回は台湾の人気スポットの「三角崙山」編です。