日本で唯一のプロハイカーとして、世界各国の数百kmから数千kmにおよぶロングトレイルを次々と踏破している斉藤正史さん。2022年12月から2023年1月には、1カ月以上かけて台湾を巡りました。そんな斉藤さんによる「台湾トレイル体験記」をお届けします。vol.11は、人気スポットとなっている聖なる山「三角崙山」編です。
YouTuberに人気の山
トレイル協会の通訳である楊さんから「MASAさん、台湾のYouTuberやインスタグラマーが撮影している山があるのですが」という情報がもたらされました。「三角崙山(サンジャオ・ルン・シャン)」のことです。興味があって写真を見てみると、素敵な景色でした。「とてもキツイ山ですよ。よく機材をもって登れるなというほどの山です」と言われると、なおさら行きたくなるのがハイカーです。2023年1月8日、台湾の4つのトレイルを歩き終えて3日目。まだ、ハイカーボディーは衰えていないだろうと思い、一番天気の良さそうな日を選んで行くことにしました。
最寄り駅は、礁溪車站です。淡蘭古道の南路の起点の温泉でご紹介した、あの駅です。台北車站から、礁溪車站までは、列車で1時間20分ほど。直通バスもあって列車より料金が安いので要チェックですね!今回も混まないように、朝早く出発。明るい時間帯の礁溪車站は初めてです。
駅の直ぐ目の前に足湯があるとは思ってもいませんでした。前回来た時は夜でしたので、足湯に全く気付きませんでした。それもそのはず、コロナウィルスの影響で足湯のお湯は抜かれていました。足湯の目の前がバス乗り場になります。五峰旗風景特定区バス停までは約10分。歩いても30分位ですので、さほど遠くはありません。この日バス停には、山を歩きそうにない恰好の海外観光客と、2組の台湾人カップルが居ました。大丈夫かな?と思いつつもバスに乗り込みました。
スタートは8時45分。バス停を下りて、車が縦列駐車している方向へ歩き出すと、聖母山歩道の看板が出てきました。車で来るハイカーがとても多く、しっかり山装備をした人から、明らかに山に登る恰好では無い方、観光バスで来た観光客など、とにかくたくさんの方で賑わっていました。入り口付近では、観光客が餌を与えて人慣れしているお猿さんが多いので注意が必要です。
いよいよ、三角崙山(サンジャオ・ルン・シャン)の至る聖母歩道登山道に入り口へ。人が多かったのは、直ぐ近くにある五峰旗瀑布(滝)を見に行く人たちだったのかもしれません。いざ出発!どんなにキツイ道なんだろう——。そう思っていましたが、非常に歩きやすい道のりです。道幅もたっぷりあり、コンクリートの道になっています。それもそのはず、道の途中には、五峰旗聖母朝聖地というカトリックの教会がありました。多くの登山客は、教会の敷地でゆっくり景色を眺めたり休んだりしています。ちょうどこの辺りから登る斜度が一気に急になっていきます。
ここから登山道に変わり、一気に斜度が急になるように見えました。写真じゃ分かりにくいですが、結構斜度が急です。しかし、今の私はハイカーボディーですので、なんなく進んでいきます。1人、また1人とどんどん抜いていきます。絶好調です!ぐんぐん高度を上げている時は、全然気にならなかったのですが、森を抜けると…めっちゃ霧でした。天気は晴れなはずですが、そう上手くはいきませんね。更にひと登りすると広場が見えてきました。
ここまで来ると、ほぼ視界がありませんでした。風も強く、多くの人々は山荘へ避難していきました。マリア様の像の奥に進むと避難小屋がありました。避難小屋は休むスペースがないほどの人で埋め尽くされていました。みんなここで休んでから山頂に行くのだろうか?特に疲れていない僕は、景色が期待できないのは分かっていましたが、先に進むことにしました。
強風と霧。雨でドロドロの急斜面を登り、ようやく辿りつた三角崙山は、背丈よりも高い草に覆われ全く視界がありませんでした。急なドロドロのくだりを慎重に下りていくと、一気に視界がひらけた瞬間がありました。そこで初めてどんな景色が広がっているのか知ることが出来たのです。この瞬間だけ一気に霧が晴れ、1分後には再び霧に包まれていくのでした。
三角崙山は神聖な山
実は、この三角崙山、山頂に行くまでの間の景色が人気だそうで、日本人のカメラマンの方が頂上に到達した後に写真をアップロードし、「台湾の抹茶アイスクリームマウンテン」と紹介した事で、一気に「抹茶山」と呼ばれるようになったそうです。確かに山頂エリアには木々はなく、草で覆われた山々が連なっているようでした。
僕が今回あえて「三角崙山」と紹介したのには理由があります。地元の宜蘭の人たちは、抹茶山と紹介される事をあまり快く思っていない人も多いそうです。それは、きっとカトリック教徒の巡礼路であり、蘭陽の 5 つの神聖な山の 1 つである三角崙山だからこそなのかもしれませんね。
12時50分にバス停に着いた僕は、物足りなさもあり、一気に台北に戻り4獣山ハイキングルートを歩いたのでした。ハイカーボディー恐るべし。
「三角崙山」は、雪山山脈の北東の角から1,000メートルを超える2番目の山です。片道約6kmの道のりで、標準時間は5~7時間です。
次回は「台湾のオススメ日帰りトレイル」編です。