普段はなかなかできないフィールド体験を積ませてくれる宿が増えている! ここで紹介するのは古代の暮らしを体験できる宿! さあ、縄文の世界へ!
日生・鹿久居島古代体験の郷「まほろば」(岡山県)へ!
旅した人 縄文おばさん1号&2号
教えてくれた人 まほろば村長・役重(やくしげ)学さん
岡山県東部に位置し、13の島々からなる日生諸島の鹿久居島には、縄文時代から中世まで続いた集落の遺跡、千軒遺跡がある。それにちなんで縄文時代の集落を復元したのが「古代体験の郷 まほろば」だ。
鹿久居島は中世以降、ほぼ無人島となり、現在も家は4軒のみ。本土と橋で繋がってはいるが、島全体が森で覆われている。
現地へは、事前に聞いた暗証番号でゲートの鍵を開け、未舗装路を走って向かう。途中、野生のシカとも遭遇した。両脇には樹木が生い茂り、タイムトンネルを走っているかのようだ。
到着後は、村長の役重学さんから古代人が着用していた貫頭衣を借りて、古代人に変身! なんか、盛り上がってきた〜。さっそく、五寸釘から作るペーパーナイフ作りにトライした。「五寸釘を焼き入れして平たくする作業は難しいので、刀鍛冶に頼んで、ナイフ状にしてもらっています」と、役重村長。
鉄工ヤスリでサビを落としてピカピカに磨いたら、刃を付けて、持ち手に糸を巻けば完成。単純作業ゆえに没頭できて、それが心地よい。だけど、サビをどこまで落とすか、どの角度で刃をつければいいのか、新聞紙で試し切りしては磨く、の繰り返し。終わりが見えない~。
ナイフ作りのあとは、縄文ライフには欠かせない火おこし体験だ。難易度が低いとされる「まいぎり式」だが、火きり弓を連続して動かせるようになるまで数分。煙が出るまでにさらに数分。ここから踏ん張って真っ黒い粉の火種が出てくるまで数分。この時点で額から汗がポトリ。「黒い粉の中に赤いものが見えないと火種にならないので、たくさん黒い粉を作ってください」と役重村長。ひぃ~。
失敗を繰り返すこと数回で、やっと炎が上がった。拍手~。古代の人が火種を大切に保管していた理由がよくわかった。
夕方は竹竿で作ったシンプルな釣り竿で釣りに挑戦。カレイなども釣れるそうだが、想像どおりボウズ。持ち込んだ肉や野菜を串刺しにして、竪穴式住居に移動。中央に切られた囲炉裏でBBQの夕食を楽しんだ。囲炉裏の周りは板の間になっていて、宿泊もOK。寝袋やマットも貸してもらえる。
翌朝は場内をのんびり散策した。目の前には、波穏やかな瀬戸内海が広がっている。磯には岩ガキやカメノテがびっしり。砂浜にはシカやタヌキなど、野生動物の足跡が点々と続いていた。海辺から続く森にはマテバシイやアラカシなど、縄文人の主食、ドングリの木も大量に生えている。「狩猟生活にはこのうえない環境だなぁ」。いつの間にか、縄文人目線になっていた自分に笑ってしまった。
1日目
14:30
五寸釘がかっこよく変身!
ペーパーナイフ作り
刀鍛冶が焼き入れしてナイフ状に叩いた五寸釘を、鉄工ヤスリなどで磨いてペーパーナイフにする。1時間ほどで、ひとり1,700円。
16:00
意外と体力を使う!? 汗だくだく、まいぎり式で火おこし
火おこし体験
弓のような器具を使い、火おこしを体験。煙が出て、火種ができるまで、想像以上に時間も体力も使った。ひとり600円。
まいぎり式火きり弓、火きり板、火口(麻糸)、火吹き竹などを使用。
火きり板から出てくる黒い粉が火種。山盛りに貯まるまで弓を回す。
火種を火口に移し、火吹き竹で空気を大量に送って発火。この工程で失敗する場合も多い。
17:00
夕食のおかずを調達!
竹竿フィッシング
夕日を見ながら釣りに挑戦。カメノテも発見。竹竿釣り体験は、エサ付きで1日1,700円。
18:30
竪穴式住居で豪快BBQディナー
夕食
竪穴式住居内にある炉でBBQの夕食を楽しんだ。煙が天井から抜けるので意外と快適。室内も暖かく、極上テントな印象。
2日目
8:00
照葉樹の森と穏やかな瀬戸内海を探検!
ほぼ自然林で、マテバシイやアラカシなど、縄文人の主食だったドングリの木も多い。
釣りに再チャレンジ
敷地内先端にある磯場の釣りポイントで朝の釣り。
釣果は……ゼロ、でした。
縄文式土器が!
敷地内からは実際に縄文式土器も出土。ビーチで拾えるかも!?
※構成/松村由美子 撮影/作田祥一
(BE-PAL 2023年5月号より)