海に潜って初めてわかる、生き物たちの美しい姿と生態。それを写真で誰にでも知らしめてくれるのが、水中カメラマンです。堀口和重さんは2022年12月、オランダのネイチャーフォトコンテスト「Nature Photographer Of The Year 2022」で水中部門グランプリを受賞した、その道のトップランナー。今回は鹿児島から水中写真の魅力についてお届けします。
水中カメラマン堀口和重の「美しき海の世界」第10回・鹿児島・佐多の海
前回の記事から少し時間が経過しました。
現在は4月に東京の写真展が終わり、鹿児島へ撮影遠征に向かいました。鹿児島の撮影場所は前回、紹介した薩摩半島ではなく、今回は大隅半島の佐多町の海です。
佐多町は本州最南端の佐多岬やNHK大河ドラマのロケ地として知られる雄川の滝が有名です。鹿児島空港から車で2時間かかることや、海中の情報も少なく、メディアにもほとんど公開されない秘境と言ってもいい場所なのです。
圧巻の魚影
今回撮影をした場所は大隅半島の内側、鹿児島湾(錦江湾)の入り口あたりです。釣り人も多く、海を挟んで向かいには薩摩半島や開門岳が見えます。
5月の撮影時は例年よりも透視度は落ちていましたが、例年は平均的にも透視度がとても良い場所なのです。
この海の実物のひとつは魚影。魚の群れは圧巻で大群のキビナゴを追いかけるカンパチなど、回遊魚も急に目の前に現れることがあります。この時期はイサキの群れも多く、まるで壁のようになる光景が広がるのです。
佐多の海は変わったサメがいっぱい
佐多の海はサメやエイも多い場所です。サメと言割れると映画「ジョーズ」のモデルになったホオジロザメのような危険なサメを想像する人もいますが、そのようなサメではないです。かわいい姿をしたサメや不思議な体型をしたサメを撮影してきました。
岩の隙間に隠れているのはネコザメというサメの仲間です。撮影した個体のサイズは60センチぐらい。肉食ですが、甲殻類やサザエのような貝を殻ごと捕食するサメです。見た目も可愛く、とてもおとなしいのです。
砂地にはサメには見えないコロザメに出会えました。まるでエイのような姿をしていますが、サメの仲間なのです。普段はダイバーが行くにはやや深い場所に生息しています。ありがたいことに普段より浅い場所にいて、私も今回初めて撮影に成功しました。大きさは1m50cmと大きな体をしていました。
通常は透明度がよく、群れやサメに出会える確率が高い佐多の海。ガイドさんもひとりでこの見所が多い佐多の海を潜って調査いるので、海中で見れていない場所も沢山あると言っていました。まだまだ未知の可能性がある海だと私もっています。今後も佐多の海に撮影へ行き、皆様に面白さを紹介していきたいとおもいます。
今回の撮影径路
START→伊豆(大瀬崎)→沖縄(石垣島・黒島・竹富島)→伊豆(赤沢)→山口(青海島)→千葉(波左間)→山口(青海島)→鹿児島(沖永良部)→鹿児島(桜島)→伊豆→鹿児島県(南大隅町)
撮影協力:海の学校 ダイビングリバティ