みなさんは、登山の際にどのような地図をお使いでしょうか。
さまざまな登山用の地図が発売されていますが、実はそのもとになっている地図があります。それが、国土地理院が発行する2万5千分の1の地形図です。
日本の国土の全域をカバーしており、全域分を集めるとその枚数はなんと4,400枚以上!
国土地理院が発行する地形図とコンパス(方位磁石)を用意して、いつもとはちょっと違うハイキングや登山に出掛けてみませんか。
国土地理院の2万5千分の1地形図とは?
国土地理院とは、国土交通省に属する国家地図の作成機関です。
明治時代から150年以上にわたり、日本のあらゆる地図のベースとなる地形図を作ってきました。なお、地形図の更新は日々行われています。
2万5千分の1の地形図は、書店やアウトドアショップ、一般財団法人日本地図センターのネットショップで誰でも購入できます。試しに行きたいエリアの地形図を購入してみましょう。
なお、登山用の地図のように山岳地域だけを切り出しているわけではないので、行きたいエリアが複数の地形図にまたがる場合があります。必要に応じて、隣接する地域の地形図も購入してくださいね。
2万5千分の1地形図を使うメリット
国土地理院が発行している2万5千分の1の地形図は、アウトドアフィールドの山や海だけではなく、都会や住宅地まで全域をカバーしています。その精密さは、ひとつひとつの民家も載っているほど。
実際に地形図を片手にそのエリアを歩いてみると、視界に入るリアルな状況と地形図の情報が完全に一致します。その正確さには驚くばかり。
紙の地形図を使う最大のメリットは、パッと広げることで現在地や目的地などの広域を俯瞰できる点です。
アウトドアでは、スマホの地図アプリやGPS機能を使う人が多いと思いますが、スマホの小さな画面ではスクロールしないと先に進めず、加えて、地図の一部しか確認できません。
その点、紙の地形図であれば一瞬で全体を把握できるのです。冒険気分で、たまには2万5千分の1地形図を広げてみるのも楽しいでしょう。
地形図を読み取るヒントとは?
扱いが難しいと思われがちな2万5千分の1地形図ですが、読み取るためのコツがあります。
(1)等高線と記号を覚えよう
等高線とは、同じ高さの点が集まってできる線のこと。学生時代のテストによく出てきた言葉として、覚えている人もいるかもしれません。
等高線には、主曲線と計曲線の2つがあります。
縮尺2万5千分の1地形図では、10mごとに細い主曲線が、50mごとに太い計曲線が引かれています。等高線の間隔が狭いところは急な斜面、広いところはなだらかな斜面ということになります。
等高線はうねうねと曲がりくねっており、この曲がり方が地形を表現しています。山頂から見て等高線が凹んでいる部分が谷、凸型になっている部分が尾根です。
例えば、等高線の凹み方が深く、間隔が狭い状態が連続していれば、それは深い谷であることを意味します。逆に、等高線の凸部が浅く、間隔が広い場合は、傾斜が緩やかな尾根ということになります。
地図記号は、全部で134種類もあります(2023年6月現在)。全ての記号を覚える必要はありませんが、アウトドアで活動する際に最低限覚えておいたほうがよい記号がいくつかあります。
それは、樹木などの植生を表す記号や岩などの山肌を表す記号、川などの水に関係する記号、送電線など人工物に関する記号です。
こうした記号を覚えておくと、周りの景色と地形図を見比べることで、現在地の確認がしやすくなりますよ。
(2)距離は4cm=1kmで計算
2万5千分の1地形図上での距離は、4cmが1kmになります。ちなみに、ちなみに5万分の1地形図もありますが、そちらでは2cmが1kmになります。
実際の距離をイメージする際の参考にしましょう。
(3)コンパスの北とのズレに注意
地形図とコンパスを持って出掛ける時に、注意すべき点があります。それは、地図上の「北」とコンパスの針が指す「北」にズレが生じるという点です。
コンパスの針が指す北のことは磁北と呼ばれ、生じるズレのことを、磁北偏差といいます。
磁北偏差は地域によって異なり、地形図の左の余白部分に数値が記載されています。磁北偏差の表記は時間と同じ60進法で、たとえば6度50分は6度+50/60分となり、ほぼ7度のズレになります。
地形図を使う際は数値をもとに磁北を補正する必要があるので、あらかじめズレを表す磁北線を引いておくと良いでしょう。
磁北線を引くには、地形図の右下隅に分度器をセットし、西へ磁北偏差分ずれた箇所に印をつけます。地図の左上にかけて、何か所か印をつけるといいでしょう。
そして、地図の右下角とそれぞれの印を結ぶように、定規を使って直線を引きます。これが磁北線になります。
一本の磁北線が描けたら、その線と平行する線を4cm幅で引いていきましょう。これは前述のとおり、2万5千分の1地形図では4cmが1kmの距離になるためです。
外で地形図を見るときには、コンパスの針が指す北と磁北線が表す北が一致するように地形図を持ちましょう。
なお、筆者がおすすめしたいコンパスはSILVA社のもの。磁北線にコンパスの台座の北を指すラインを合わせることができるため、とても見やすいコンパスです。
地形図の折り畳み方をマスターしよう
購入時はポスターのような1枚の紙になっている地形図ですが、事前に折り畳んでおくと便利です。
素早く広げることができるかつ、コンパクトにしまえる畳み方をお伝えするので、参考にしてください。
1.まずは四隅を内側に折り込みます。
2.次に、四辺の余白部分を全て内側に折りましょう。これで、表面は地図だけが見える状態になります。
3.地形図の裏面と余白が外側になるように、縦に4つに蛇腹折りしましょう。画像と同じ状態になればOKです。
4.中央部分でさらに半分に折り、コンパクトにします。油性マジックで余白に地名を記載します。これで完成です。
エリアごとに保管すると便利!使う時は防水の袋へ
保管する際はエリアごとに分類し保管しておきましょう。例えば、高尾山、丹沢、八ヶ岳、といった具合です。
筆者は、地図のサイズがしっくりくるので靴の空箱に並べて保管しています。山の名前が手前に来るように収納すると、目当てのものを探しやすくなりますよ。
そして、地形図は防水紙ではないので、利用するときは雨などで水に濡れないようにジッパー付きのビニール袋にいれるといいでしょう。ザックの取り出しやすい位置に入れておくと便利です。
地形図を片手にアウトドアを楽しもう
国土地理院発行の地形図は、地形や記号だけが載っている素っ気ないものです。しかし、この地形図が読めるようになると、平面の地形図から立体の地形をイメージできるようになります。
地図上の記号から岩場などもわかるので、より安全に登山を楽しめるでしょう。
地形図に慣れないうちは、コースタイムやトイレ位置などの記載がある登山用地図と併用するとよいかもしれません。
国土地理院の地形図を片手に歩いてみると、いつものフィールドも違って見えます。ぜひ試してみてください。