梅雨真っ只中、降水確率80%…さてどこへ行こう?
本格的な梅雨入りで、登山の予定がなかなか立てにくい6月。標高の高い山は天気の影響を受けやすいので諦めて、森林限界を超えない場所を探して歩きに行くことに。今回選んだのは長野県茅野市と佐久穂町の間に位置する麦草峠から白駒池を周回するプラン。
標高2,120mから出発。3分後には森の中
麦草峠の標高は2,120m。北八ヶ岳と呼ばれるエリアで、4月下旬から10月上旬までの開通期間は、駐車場までマイカーで上がれることもあり、多くのハイカーで賑わいます。
今回は茅野市側の無料駐車場から歩き出し。この時点で雨は降っていないのでレインウェアと折り畳み傘はデイパックに収納。登山口からすでに気持ちの良い森の中なのがこのコースのいいところ。コメツガなどの針葉樹の森は、緑が深く空気が澄んでいるように感じます。国道299号がすぐそばに走っているのですが、森が深く車の音などもほとんど気になりません。
雨のあとにぬかるみやすい場所には木道が敷いてあり、比較的軽装で歩いている方も多く見られます。標識の看板もわかりやすく出ているので、初心者や歩き慣れていない方も安心。
ただ、木道は濡れて滑りやすい場合があるのでスニーカーや登山靴などがあると歩きやすいですね。
見渡す限りの苔、コケ、こけ…
白駒池までは、きれいに整備された道が続きます。見渡すかぎり苔の森。これだけアクセスが良い場所なのに、手付かずの森が大切に守られていて、多くの方に愛されている場所なのだなと感じます。
雨の多い時期は瑞々しくツヤがあり、晴れた時期でも水分を蓄えた、ふかふかとした柔らかな質感を楽しめます。
白駒の奥庭は別天地の風景
苔の森をしばらく進むと「白駒の奥庭」と呼ばれる、まるで庭園のような場所に出ます。
6月中旬はイワカガミが咲き出す時期で、足元にはピンク色の小さな花たち。木道からでもたくさんの花を見ることができました。こちらはシャクナゲの群生地でもあるので花の季節にまた訪れたくなりました。
イワカガミはかわいい。でも華やかなだけが花じゃない
花といえば華やかなものを想像しますが、苔の花(胞子体)はとても小さく、つつましやかで風情があります。この日はスギゴケや、フウリンゴケなど、いくつかの花を見ることができました。八ヶ岳には日本に生息する苔の種類の4分の1にあたる520種類ほどが自生しているそうで、まさに苔の楽園ですね。
このエリアでは定期的に苔の観察会もされているので、詳しく学ぶ機会を持つのも楽しそう。詳しくなくてもこれだけ楽しいので、ルーペをもって詳しい方にお話を聞くと、苔の世界がぐっと身近になりそうです。
森が明るくなったら白駒池はすぐそこ
苔を楽しみながらのんびり歩いていると、木々の向こう側が白く光って見えます。その明るさに何が見えているのかと思ったら、光を反射する白駒池の水面でした。白駒池は標高2,115mにあり八ヶ岳火山溶岩流の窪地に水が溜まってできたそうで、標高2,000m以上に位置する池としては日本で一番大きいのだとか。
晴れた日は青空とのコントラストが楽しめると思いますが、この日は薄曇りの太陽が池に映り、天地が逆になってもわからないような、不思議な写真が撮れました。山から立ち込めてくる霧も幻想的で、曇りの日も悪くないなと思える景色。天候次第で雰囲気ががらりと変わるので、どんなお天気でもそこには訪れる価値があると私は思っています。
肌寒い日にありがたい。白駒荘であったかランチ
白駒池に到着してすぐにあるのが白駒荘。宿泊はもちろんのことランチも人気の、昨年創業100周年を迎えられた歴史ある山小屋です。
ちょうどお昼時だったので、白駒荘でランチタイム。土鍋おでんにお汁粉やケーキセットなど、どれも魅力的で迷いましたが、おでんに決定。白駒池が一望できるナイスロケーションの小屋の食堂でいただきます。少し肌寒い日だったので、土鍋でぐつぐつと温めていただいたおでんは染み渡る美味しさ。
友人がオーダーしたお汁粉も、焼いたお餅が入ったしっかりサイズで大満足の様子。
こちらは晴れた日の池の様子。ボートの貸し出しもあるので、いつか乗ってみたいなと思っています。売店のグッズもとてもかわいいので見てみてくださいね。
白駒荘
- 所在地:長野県茅野市北山6581
- 営業時間: 10:00~15:30(カフェ営業)、 11:00~14:00(ランチ営業)
- 定休日:HPでご確認ください。
- HP:https://yachiho-montblanc.com/index.html
食後は再び池のほとりへ
白駒池の周回は40分ほど。平坦な場所がほとんどなので、個人的には息切れゼロ。風の音、鳥の声、水の音など自然の音を聞きながら歩くと気分もすっきり。
池を周回する木道は古くなった部分を架け替えしてあるのでとても歩きやすく、登山道整備に感謝しながらの散策でした。
周回コースは白駒池のもうひとつの山小屋「青苔荘」を経て、また緑の深い苔のエリアへ。ほどなく行きに通った分岐に出て周回完了。帰り道は一度通った道を戻るのですが、行きに気づかなかったキノコやまた違う種類の苔を見つけたりと発見があって楽しい道のり。
森の中を歩くときは肌寒さを感じることも多いので、レインウェアの準備のほかに、さっと羽織れるシャツもおすすめです。気温の変化に対応できるアイテムはいくつか持っておきたいですね。
赤い三角屋根の「麦草ヒュッテ」でコーヒータイム
苔の森を堪能しながら歩いて15分ほどで、赤い三角屋根がかわいい麦草ヒュッテに到着です。
私たちのお目当ては地下119mからくみ上げている天然水に合わせたブレンドコーヒー。「苔の森、黒曜石、氷の地層を浸透して生まれた軟水」とのこと。山歩きの締めくくりに美味しいコーヒーが飲めるのは至福のひととき。オーナーの島立さんご夫妻の優しいお人柄を感じる、とても穏やかな時間でした。オリジナルのクラフトビール「ムギクサエール」を買ってこなかったことを後悔。次回は忘れずに購入しようと思います。
麦草ヒュッテ
- 所在地: 長野県茅野市北山冷山麦草峠
- 営業時間:10:00~16:00(カフェ営業)、11:00~14:00(ランチ営業)
- 定休日:HPでご確認ください。
- HP:https://www.mugikusa.com/
白銀の麦草峠も見てみたい!
こちらは道路が閉鎖される冬も営業されている通年営業の小屋なので、雪が降って白銀の世界になったころ、スノーシューハイクのお泊りイベントを開催してお邪魔しようと思います(なんと冬場は部屋にこたつがあるのです)。
今回は雨に降られずに済みましたが、天気が良い日は緑が美しく、曇りの日にはしっとり静かな森を。雨の日には瑞々しい苔を見ることができるので、それぞれの良さがあります。深呼吸したくなる北八ヶ岳の苔の森、ぜひ歩きに行ってみてくださいね。