女を上げるキャンプ料理に使うナイフをオーダー!
日本が誇る世界的なカスタムナイフ製作者、相田義人さんの工房を訪ねた私に開口一番、「ナイフで何がしたいの?」と相田さん。「女を上げるキャンプ料理デス」と私。
それならと、取り出したのは現代ナイフの巨匠で、相田さんの師匠でもあるR.W.ラブレスが考案したフィールドナイフの型紙。最初に用途を確認するのは、顧客の切りたいものに適した切れ味をつけるため。
「ナイフは一本あれば、工夫次第で何でも切れる。爪切りから木、獣までね。万能だけど、出刃包丁や菜切包丁のような専門の刃物みたいに、特定の物をきれいに切ることは難しい。だからどう使うかを知って、適した刃にするんだ」(相田さん)
ナイフの製法はシンプルだ。一枚のステンレス鋼を紙ヤスリで削り、磨くことに作業の大半を費やす。驚いたのは、刃だけではなくハンドル材で覆われる部分も薄く削ること。ラブレス師匠から受け継いだ、マスプロ製品にはない技法だ。「刃と枝の重心をとるためだと思うけれど、(ラブレスは)聞く前に亡くなっちゃった」
見えない部分にも気を配る。なんてていねいで、やさしい仕事なのだろう。
「カスタムナイフは自分みたいな年寄りのナイフメーカーに頼まないほうがいいかもね。生涯保証の世界だから、10年、20年使って当たり前。直したいのに、いないじゃ困る(笑)。 使い方が悪くて壊れた場合は別だけど、面倒見ますよ。使ううち、刃先がちびるでしょ。そうしたら研ぎ直して、第二の人生をプレゼントします」