個人で広島県江田島市に「Hawk Nest Family Village」というキャンプ場をオープンしたコージさん。そんなコージさんがキャンプ場オーナーの立場から、キャンプ場での快適な過ごし方について考えます。第4回は、害虫や野生動物に関する対策についてです。
自然の中のバランスを考慮し、可能な範囲で対策を
大自然の中には、いろいろな生き物がいます。それぞれがそれぞれの大切な命のために行動しています。いろいろな種がいて、ある種は別の種の大切な食べ物であり、あるいは天敵でもある。ムカデや蜘蛛が消えたら彼らが好んで食していた虫が異様に増えるし、逆に虫が消えたらそれらをエサとする野鳥も生きるのが難しくなる、などなど。
少し大げさな書き出しから入りましたが、要は人間の都合のみで一方的に害虫や野生動物を駆除するのではなく、それぞれの住環境をゾーニングするなどしながら、大自然の中でバランスを保って共存していく、という考え方も大切なんだろうと思っています。
何も難しい話をするつもりはありません。上述したことを少し意識しながら、キャンプ場を経営する側も害虫や野生動物に関する対策を考えていければ、ということです。もちろん、現実的には難しい面もあるので、できる範囲で可能なところから、で構いません。まずは害虫や野生動物への対策について、みんながアイデアを出し合う流れになれば良いなと思う次第です。
キャンプ場側の対策
害虫類
ここからは、私が自身のキャンプ場で行っている害虫や野生動物への対策を紹介します。
【蜂】蜂は自分の巣を守るため、近づいた人を攻撃します。キャンプ場内にハチの巣を作らせないよう、当地ではダンボールを丸めたフェイクの蜂の巣を作って4ケ所に吊り下げています。これがあると蜂は、「あっ、先客がいる」と認識し、近くに巣は作りません。また、それ以外の木材を積んである場所などには、蜂の嫌う木酢液スプレーを定期的に撒くようにしています。
なお、周囲から遊びに来た蜂については、こちらから攻撃しない限り襲ってきません。ただし、万が一の時のためにスプレーも事務棟に用意してあります。さらに加えて、蜂の天敵である、カマキリの模型を場内に置いて、効果を見ていこうと思ってます。
【アブ】真夏に行動が盛んになります。二酸化炭素に寄ってくると言われており、車の排気ガスに付いてきます。そのため、エンジンを切らないといつまでも車の周りにうろうろ飛んでいます。駐車したら早めにエンジンを切ることをお勧めします。
なお、今季は天敵であるオニヤンマのフィギュアを入手し、いくつか吊って効果を見てみようと思ってます。
【ヘビ】キャンプ場の敷地外も2~3mほど定期的に草刈りをして、ヘビがすぐ顔を出さぬようにしています。また、ヘビの嫌う匂いのヘビ除け錠剤を柵近辺に定期的に撒いています。
なお、ヘビの好物のカエルなどがたくさん発生しないよう、キャンプ場内に水溜まりや湿気の発生する場所を出来るだけ作らないようにするなど留意しています。
【ムカデ】ムカデの嫌う匂いのムカデ除けや、数を減らすためのムカデホイホイを場内にはいくつか置いています。ただし、完全な駆除は不可能です。念のため、各サイトに登場した時に備えて事務棟にはスプレーを常備しています。
【アリ】ムカデ同様、完全に駆除することは不可能ですが、万が一の時に備えてスプレーを常備しています。
【蚊】当地は水はけが良いので蚊は少ないですが、雨季、あるいは藪など湿気のある場所にはいます。できるだけ発生を抑えるように、草刈りを出来るだけこまめに行い、敷地の外も柵から2~3mほどの範囲を刈ることで侵入を少なくしています。それでも場内に蚊が全くいないわけではないので、特に夏場にご来場される際には虫よけスプレーご持参などを推奨しています。
なお、殺虫剤を大量に撒いて、虫一匹おらず鳥も寄り付かない、というデッドゾーン化は行うべきではないですし、人にも少なからず影響を及ぼすと思います。それなりに虫がいる場所が大自然の中のキャンプ場だということで、ご利用をいただければと思っております。
野生動物
【イノシシ】周囲に金網と柵を設置し、侵入を防いでいます。ゲートも昼は閉めており、お客様ご自身で開閉をしていただく運用にしています。なお、インターネットで調べると、イノシシ除けの対策として唐辛子の栽培やサーチライトなどが紹介されています。そういったことも試しましたが、ほとんど効果がなく、やはり柵で囲うしかないようです。
【カラス、野良猫】両方とも防ぎようがなく、みなさんに注意をお願いしています。ゴミや食料など、テント外に置いていると、夜や早朝に散らかしたり、持っていったりしてしまいます。
【熊】当キャンプ場のある江田島(広島県)には熊はいません。しかし、熊の生息する地域では大きな課題になっていると思います。周囲の柵も、かなりしっかりしたものが必要でしょうし、ゴミステーションも匂いが漏れないような対策が求められると思います。
キャンパー個人の虫、野生動物への対策
当キャンプ場として行っている主な害虫・野生動物の対策を紹介しましたが、キャンパー個人はどのようなことを行えば良いのでしょうか。YouTuberでもある徒歩キャンパーのJJソロキャンプさんにご意見を伺ったので、参考にしてください。
①虫除けスプレー&なるべく肌を露出しない
虫除けスプレーは定番中の定番!これは皆さん必須だと思います。特に体温が上がって汗をかくと余計に蚊が寄ってくるのでマメにスプレーをしたいところですが、キャンプ中はついつい忘れがち…。そこで肌をなるべく出さないように、短パンの時は下にスパッツを履くなどしてカバーしています。
②野外用蚊取線香
こちらも定番中の定番!キャンパーなら皆さん持参していると思います。私も必ず持参し、使用する時は風向きを考えて2カ所に設置しています。さらに、効果UPを狙って2か所に設置する時は違うメーカーの線香をそれぞれ焚いています。
③ハッカ油
スプレーや線香を焚いても地を這う系の虫は寄ってきます。そこでハッカ油!テント内や入口にシュッと吹きかけておきます。人体にも優しく、ミントの香りは爽やかで清涼感もあるので一石二鳥です。
④ファーストエイドキット
私はまだ刺されたことはありませんが、蜂やムカデなど毒のある虫に刺されてしまったら初期対応が重要です。夏はポイズンリムーバーや虫刺され用の塗り薬などを必ず持って行きます。
⑤ゴミを放置しない
虫や野生動物が寄ってこないようにするためには、ゴミの片付け、特に臭いを出さないようにすることが大切です。私は徒歩キャンパーなので、ゴミはチャック付きビニール袋に入れて密閉してから他のビニールで二重にまとめ、さらに食材を入れる保冷バックに仕舞ってから寝るようにしています。車で来ているなら、ゴミを車にしまったりクーラーボックスに入れて密閉すると良いでしょう。
⑥いっそハンモック泊にしてみる
いくら対策をしても、野外なので虫や野生動物は必ずいます。私は地面を這ってくる虫が特に嫌いなので、最近はハンモック泊デビューをしました。ハンモックは浮いているので這ってくる虫が入り込むことはないし、蚊帳を付ければ飛んでくる虫に襲われることもありません。虫嫌いにはぴったりです!
野生動物に関してはゴミを放置しないことが最も重要。私も以前、鹿やウサギにテント内を荒らされそうになったことがあり、それ以降はゴミを二重、三重と密閉しています。そのキャンプ場がエサが簡単に手に入る場所だと認識されると、他のキャンパーにも迷惑がかかります。猫やタヌキなど、かわいいからとエサを与えるのも控えましょう。
大自然の中で、大自然の雰囲気を楽しみながら過ごす。それが、キャンピングの醍醐味のひとつだと思います。キャンプ場側、キャンパーの皆さんそれぞれが責任を持ってしっかり対策をし、安全で快適なキャンプを堪能できるよう、こころより願っております。