東京都内で日帰り登山ができる山を探している人に向けて、雲取山のコースや登山難易度を解説します。雲取山は日帰り登山が可能ですが、タフな行程になるので、綿密な計画と準備が必要です。おすすめのスポットや登山時の注意点も解説します。
雲取山ってどんな山?日帰りは可能?
雲取山は東京都にありながら、本格的な登山ができる山です。雲取山の概要や、日帰り登山をするときのポイントを解説します。
日本百名山の一つで、東京都最高峰
雲取山は東京都・埼玉県・山梨県にまたがる、標高2,017mの山です。『日本百名山』と『東京都最高峰』の二つの看板を有しており、山頂からは富士山も望めます。今まで低山の登山が中心だった人にとっては、新鮮な体験となるでしょう。
雲取山はアクセス経路が多く、奥多摩駅からバスで登山口に向かうのが一般的ですが、車でのアクセスも可能です。登山ルートは難易度別にいくつか分かれており、初心者から経験者まで登りごたえのある山といえます。
日帰りは可能だが体力が必要
雲取山に日帰りで登ることは可能です。クサリのかけられた岩場である『クサリ場』も少なく、技術的な難易度は高くないため、初心者でも十分に登山できます。
ただし所要時間が長いため、ある程度の体力と綿密なスケジューリングが必要です。どのルートも所要時間が片道約5時間と長く、泊まりでの登山が基本である点は認識しておきましょう。
日帰りで登るなら、早朝に出発し、地図を正確に読み取りながら足を進める必要があります。初心者がいきなり日帰り登山に挑戦するのは少々大変な行程でしょう。
雲取山の登山に適した服装は?
雲取山に登るときは重ね着を基本とし、速乾性の高いTシャツや防寒着を持参するのが望ましいでしょう。雲取山は夏であっても最高気温が20℃台前半、最低気温が10℃台前半と涼しめなので、半袖1枚で行くと、休憩時に汗が冷えて体調を崩したり、夕方以降に寒い思いをする可能性があります。
早朝や泊まりがけで登山をする場合は、フリースやダウンウェア、セーターを持っていくのがおすすめです。靴はトレッキングシューズやハイキング用の軽登山靴がおすすめです。日中は日差しが強い可能性も想定されるので、帽子も持っていきましょう。
初心者におすすめの雲取山の登山コース
雲取山で、初心者におすすめの登山コースを二つ紹介します。奥多摩方面と秩父方面からスタートするルートがあるので、住んでいる地域に合わせて選ぶといいでしょう。
鴨沢コース
奥多摩駅からバスで鴨沢まで向かい、山頂を目指すコースです。道は比較的単調で、勾配も一定なので初心者向きといえます。距離は片道約11.3kmで、片道の所要時間の目安は約5時間です。
コースの途中にある小袖乗越(こそでのっこし)まで車の乗り入れができるため、ショートカットしたい人は車でアクセスすることもできます。徒歩行程が30分ほど短縮できますが、駐車スペースがかぎられているため、登山客で混雑する時期はバスを利用しましょう。
道中には七ツ石小屋があり、チップ制のトイレや水場があるので、休憩に向いています。
七ツ石小屋からは二つのルートに分岐しており、一方には平将門ゆかりの七ツ石神社があります。歴史好きの人はぜひ訪れてみましょう。
鴨沢バス停発着の往復ルートは来た道を戻るだけという分かりやすさのため、道迷いの心配が少なく、初心者におすすめです。そのほかに、雲取山山頂から西側のルートで三条の湯(山小屋・温泉風呂、テントサイトあり)を経由してお祭バス停に下山するルートがあります。
三峯神社コース
埼玉県秩父市にある三峯神社から山頂を目指すルートです。スタート地点である三峯神社にはトイレ・駐車場が用意されており、登山道も比較的整備されているため初心者向きといえます。三峰神社は多くの参拝客が訪れるスポットす。
所要時間の目安は片道約5~6時間で、ルートは三峰神社発着の往復ピストンのため分かりやすいでしょう。
道中の地蔵峠は、両神山や浅間山が見渡せるフォトスポットです。一部勾配がきつい箇所や、尾根が狭い箇所・クサリ場があるので注意が必要です。クサリ場は初心者でも登りやすくなっています。
三峯神社コースは日帰りも可能ですが、雲取山荘で一泊するのが推奨されています。三峰神社から登り、山頂から鴨沢(上記のコース)へ下山するルートや、三条の湯経由でお祭に下るルートも可能です。
経験者におすすめの雲取山の登山コース
登山経験者におすすめの登山コースを二つ紹介します。どちらも、日帰りで挑戦しても泊まりがけでじっくりと堪能しても楽しめるコースです。
三条の湯コース
奥多摩駅からお祭バス停へ向かい、出発するルートです。お祭へのバスの本数が少ないのが難点ですが、鴨沢バス停から徒歩10分程度の場所にあるため、鴨沢バス停から徒歩で向かう方法もあります。
難易度的には初心者でも登山は可能ですが、林道が通行止めになっていたり、谷側が切れているトラバース道になっていたりするため、初心者は多くありません。トラバース道は、冬場にはアイスバーンになることもあるので、アイゼン(軽アイゼン)を持参しましょう。
コース名の由来にもなっている三条の湯では、温泉の入浴や宿泊が可能です。所要時間の目安は、片道約5~6時間です。
富田新道
雲取山荘の初代管理人が開拓したルートです。急な坂が多く、中級者向きといえます。途中に広葉樹が生い茂る開けた道がありますが、踏み跡が少ないため、道に迷わないよう地図をこまめに確認しながら進む必要があるでしょう。
所要時間の目安は、片道約6時間というタフなコースです。「かなり疲れた」とコメントしている登山者もいます。入り口は日原鍾乳洞付近の東日原のバス停で、鴨沢バス停へ抜けるルートです。
途中で雲取山荘で一泊したり、日原鍾乳洞を観光したりするのもありでしょう。
●参考記事:山と渓谷オンライン「富田新道(野陣尾根)を雲取山へ 1泊2日」
雲取山周辺のおすすめスポット
雲取山には、いくつかおすすめスポットがあります。雲取山で人気のスポットを三つ紹介するので、ぜひ訪れてみましょう。
関東の有名パワースポット「三峯神社」
埼玉県秩父市にある、関東でも有名なパワースポットです。三峯神社の歴史は古く、日本武尊(やまとたけるのみこと)が伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉册尊(いざなみのみこと)を祀ったのが始まりとされています。
登山客でなく純粋な参拝客も多く訪れ、賑わいを見せています。仕事運や金運など、あらゆる分野のご利益があるとされているので、景気づけに訪れてみてはいかがでしょうか。
宿泊も可能!「三条の湯」
雲取山の中腹にある、三条の湯コースを通る人におすすめのスポットです。温泉だけでなく、宿泊も可能なので、泊りがけで登山をしたい初心者にもおすすめといえます。
宿泊時には、鹿肉や川魚を使った郷土料理でもてなしてくれるので、非日常を味わいたい人はぜひ宿泊してみましょう。追加料金を払えば、翌日のお弁当も作ってくれます。
小屋だけでなく、テント泊も可能です。小屋の場合は相部屋になる点に留意しましょう。WEBまたは電話での予約が可能です。
●参考記事:「はじめての山小屋泊体験にちょうどいい、温泉と登山が楽しめる「三条の湯」」
奥多摩駅から徒歩約10分「もえぎの湯」
奥多摩駅から徒歩約10分の場所にある、源泉100%の温泉です。露天風呂や食事処など、登山の疲れを癒すにはもってこいの場所といえるでしょう。
もえぎの湯に引かれている奥多摩温泉は、筋肉痛や疲労回復に効果があるとされています。4~11月は20:00、12~3月は19:00が閉店時間なので、日帰りで訪れる際は早めの下山がおすすめです。
追加料金なしで足湯の利用も可能で、足湯のみの場合は大人1人100円で利用できます。
●参考HP:「奥多摩温泉 もえぎの湯」
雲取山を登るときの注意点
雲取山を登るにあたり、いくつか注意点があります。楽しく安全に登山をするためには、事前の準備が大切です。
熊の出没に注意する
雲取山には、ツキノワグマが生息しています。近年も熊による被害が報告されているので、注意が必要です。
熊の多い時期には、熊に人間の存在を知らせながら行動するのがポイントです。声を出しながら歩いたり、熊よけの鈴やラジオを持参するのも熊対策には有効です。子熊に遭遇したら、かわいくても決して近づかず、速やかにその場を立ち去りましょう。親熊が子熊を守るために、人間を襲うおそれがあります。
もし熊に遭遇したら、騒がず静かにその場から立ち去るのが大前提です。ただし、背中を見せて走って逃げ出すと、逆に熊を驚かせて攻撃性を高めてしまう可能性があります。熊を見すえながらゆっくり後退して、徐々に遠ざかるようにしましょう。
体力に自信がなければ泊まりも視野に入れる
雲取山はコースが長いため、日帰りで踏破するには、かなりの脚力と体力が必要です。登山初心者で不安があるなら、余裕を持って宿泊を前提としたコース計画を立てましょう。
特に電車やバスを利用する場合は、山中での行動時間が制限されてしまいます。雲取山では、雲取山荘・三条の湯の2カ所で宿泊が可能です。宿泊を前提に計画を立てれば、時間の使い方の幅が広がります。速く登ることにこだわらず、せせらぎや鳥のさえずりに耳をすませ、山で過ごす時間のゆたかさを味わってください。無理のない登山計画を立て、登山を楽しみましょう。
地図やGPSを必ず持参する
雲取山に限らず、登山の際には地図やGPSを必ず持参しましょう。雲取山の山道は比較的分かりやすいものの、所要時間が長いため、混雑状況や休憩の取り方によっては日が暮れてからの移動になる可能性もあります。山中には街灯がないため、道を把握するには地図が大きな手掛かりです。ヘッドライトも忘れずに持参しましょう。
ルートを急に変更する必要があり、事前には調べていなかった道を通る可能性もあるでしょう。できれば紙の地図も持っていくと安心です。『山と高原地図』や2万5000分の1地図、5万分の1地図などの紙の地図はスマホの地図アプリよりも、全体を俯瞰するのに長けています。
●参考サイト:「地理院地図」(電子国土Web)
トイレ・コンビニ情報を把握する
主なトイレスポットは以下の通りです。
- 奥多摩駅
- 鴨沢バス停
- 小袖乗越駐車場
- 七ツ石小屋(チップ制)
- 避難小屋
- 雲取山荘
- 白石小屋
- 霧藻ヶ峰休憩所
- 三峯神社
- 西武秩父駅
トイレは主に10カ所あるので、トイレ休憩は計画的に取りましょう。コンビニは奥多摩駅を含め、雲取山周辺にはありません。車で向かう場合は、青梅市内のコンビニか、ニューヤマザキデイリーストア奥多摩氷川店に立ち寄るのがおすすめです。
電車で向かう場合は、最寄り駅のコンビニで足りないアイテムを買っておきましょう。
まとめ
雲取山は東京都最高峰、日本百名山の二つの肩書を持つ名山です。標高は2,000mを超えており、登りごたえのある山といえるでしょう。近くには温泉施設もあるので、登山の疲れを癒すこともできます。
登山コースはいくつかに分かれており、初心者でも登りやすいものから経験者向きのものまでさまざまです。どのコースも日帰りが可能ですが、宿泊を視野に入れた方が、余裕のあるスケジュールを立てられます。
自分の体力やスケジュールと相談しながら、最適な登山計画を立てましょう。