野外活動に夢中な夏、本を読んでいる時間はない、なんていうあなた。鉄道旅の車中やソロテントで過ごす時間は読書にぴったりだし、暑い日中こそ無理をせず体を休めながら読書に充てるのもいい。今月も読みごたえのある2冊をご紹介しよう。
BOOK 01
誰もが知る大企業の隠蔽。求めたのは、きれいな水
『毒の水 PFAS汚染に立ち向かったある弁護士の20年』
ロバート・ビロット著 旦 祐介訳 花伝社
¥2,750
私たちの生活用品には便利なものがたくさんある。化学物質を応用したものはとくにそうだ。焦げつかないフライパン、紙製の食品容器、撥水スプレー……。魔法のような使い勝手を可能にしているのは、PFASという有機フッ素化合物。
本書はそのPFASによる汚染問題に立ち向かった弁護士が自ら書いたノンフィクション。’21年に日本でも公開された映画『ダーク・ウォーターズ』の原作本だ。’98年、ある農場主からの助けを求める一本の電話から始まる。放牧している牛が次々と原因不明で死んでいること、牛が飲んでいる川の水が何らかの影響を及ぼしているのではという。この川に排水口を持つ工場は、世界的規模を誇る化学メーカーのデュポン社。だが、川の水質を検査してもなかなか原因を特定できない。それは当時まだ規制対象になっていない化学物質だったのだ︱―。物質の危険性を早い段階から認識していながらも隠し続ける大企業に対峙し、気の遠くなるような膨大な資料を丹念に調べる著者に感服する。
昨今、日本国内でもPFAS汚染は報道されている。主に飲み水から体内に入り発がん性が疑われるという。この問題、決して対岸の火事ではないのだ。
BOOK 02
小スペースでも実践可。楽しいビオトープ作り
『自宅で湿地帯ビオトープ! 生物多様性を守る水辺づくり』
中島 淳著 大童澄瞳画 大和書房
¥1,870
ビオトープとは本来は「生き物の生息場」を意味するという。本書は自宅に小さな水辺を作り、移り住んでくる生き物を楽しんでみようという指南書。ベランダなどの小スペースでもコンテナを活用する工夫などあらゆる方法を紹介する。
著者は水生生物の研究者と人気漫画の作者。各々の自慢の湿地帯ビオトープも公開する。自作のビオトープに生き物が到来する喜びを感じてみたい!
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2023年7月号より)