「BE-PAL」本誌でおなじみの、旅の達人たちの心に残る思い出とは? 印象深い写真とともに語ってもらいました。
神々しい夕陽に包まれて…佐渡島の魅力の虜になってしまった日
GW、人混みを避けるために妻と選んだ行く先が、新潟県の佐渡島でした。フェリーに乗ればさほど混んでいません。佐渡島は想像以上に広く、キャンプ場もたくさんあるなかでお気に入りなのが、ミシュラングリーンガイドにも選ばれた"二ツ亀キャンプ場"。
絶景を観ながらのキャンプはまさに至福の時でした。佐渡島には佐渡金山や北沢浮遊選鉱場跡、日本に2か所しかないトビシマカンゾウが群生する大野亀など、魅力的な観光スポットもあります。海もとても綺麗だったのが印象的で、そんな綺麗な日本海で育った海の幸も、とても美味でした。
佐渡島にある二ツ亀キャンプ場。神々しい夕陽に包まれる姿は、絶景キャンプ場の名に相応しい。
標高167mの一枚岩が海に突き出した大野亀。5月下旬〜6月上旬トビシマカンゾウに覆われる。
北沢浮遊選鉱場。佐渡島のラピュタと呼ばれ、そのスケールの大きさに圧倒される、産業遺跡。
カメラマン・キャンプコーディネーター
猪俣慎吾さん
外ごはん文化を広めるためのユニット「KIPPIS」も主宰。すべて自身が撮り下ろした『絶景CAMP GUIDE』(JTBパブリッシング)も好評発売中。
記念すべき初代キャンパーでの「四万十サーフトリップ」
2008年8月、初代キャンパーを買って(中古のボンゴでした)一番最初の旅は、「ド」はまりしていた波乗りをしに四万十川の河口に出かけたこと。高知では毎日のように南国を思わせるスコールが降り、あるときは南の海上で台風が発生。
波が急にサイズアップしたことも。逆にフラットな日は川エビ獲りに。四万十の恩恵を存分に味わった最高の旅でした。現在は10歳と5歳の息子とのファミリートリップも楽しいけど、ふっと思い出すのは、独身時代の、自由すぎるあの時間なんですよね。
当時はサーフィン歴3年ぐらいで海の目の前に車中泊しながら波乗りするのが、毎週の日課だった。
海がフラットな日には、キャンパーで四万十川を遡り、夕食のための川エビ獲りに挑戦!
夜は収穫した川エビを素揚げにしソレをつまみに焼酎をいただく。これまた極上の晩餐。
旅のエッセイスト
国井律子さん
オートバイ、旅、車、自転車、サーフィン、スノーボードなど多趣味をいかしたエッセイを執筆中。家でのいちばんの趣味は収納で、「時短」という言葉が大好き。
海洋冒険家・八幡 暁さんに同行した「沖縄諸島の120㎞の辛〜い旅」
もう、10年以上前になるかな。海洋冒険家の八幡暁さんに誘ってもらい、宮古島から石垣島まで、タンデムカヤックを運ぶことになった。外洋は荒れていて、5mぐらいの高波。カメラを入れたペリカンケースがパドルに当たるのが気になって見ていたら、なんとカヤックで船酔い。
僕は前で全然漕げず、約60㎞、途中の多良間島まで拷問を受けているようだった。海キャンプってたくさんあるけど、浮かんできたのがコレ。衝撃的な旅だったな〜。
写真教室を主催した際、カヤックで訪れた西表島。このときも八幡さんが付き合ってくれた。
人生で衝撃を受けた数少ない出会いのうちのひとりが八幡さん。力強いストロークなんですよ。
海上で周りの島が見えないときどうする、の問いに「雲は島の上にできるんだよ」って話してくれた。
フォトグラファー
亀田正人さん
山岳専門誌やアウトドア雑誌を中心に活動。作家・服部文祥氏のYouTubeチャンネルの動画撮影も行なう。ドッグタグ「SLOPPY DOG TAG」の製作販売も。
干潮時に現われる神秘の橋、夕景「一日中ボーッとしていられる別天地」
私にとって海キャンプは島キャンプ! 大学生のころからキャリーバッグを相棒に、伊豆大島や神津島、八丈島、石垣島など、いろんな島と海を楽しんできました。2019年に行った沖縄本島では10日間ほどキャンプ場を転々としました。
中でも好きだったのが、海に面した芝生のキャンプ場「屋我地ビーチ」。干潮時に現われる幻の砂の道「ピュアロード」で目の前の島にも渡れます。関東からするとトンボロ現象はすごく珍しいですよね。夕陽も綺麗で、コンビニで買えるタコライスを食べながら眺めました。
沖縄本島北部にある屋我地島の入り口のキャンプ場。太陽が落ちるのは逆側だけど、この美しさ。
シュノーケリングは運動が苦手な私でも大好き。波に揺られながらゆったりと熱帯魚を観察するのが楽しい。
女子キャンパー
森 風美さん
年間80泊するほどキャンプを愛し、女性でも楽しめるキャンプスタイルを発信。WEBメディア「なちゅガール」の編集長を務め、TV、雑誌など幅広く活躍。
海が見える絶景を目指し「滝の上まで亜熱帯ハイキング」
バックパックに水中メガネとトレッキングブーツをくくりつけて向かうのは、沖縄諸島のなかでも、自然がいちばん色濃く残っている西表島。いつもベースキャンプにしているのは"ほしずな亭キャンプ場"で、海も山も楽しめる。なので、このスタイル。
これは西表島の名所、ピナイサーラの滝の上。亜熱帯ジャングルから見下ろす海と水平線上の入道雲が、ザ・南国。ずぶ濡れ、泥まみれになった、しょうもない大人が洗い流されるような眺望です。
川沿いの登山道を歩いて辿り着く、ピナイサーラの滝上。鳩間島やバラス島が見渡せ、海と山を一度に味わえる。
沖縄で最大の落差約55mを誇るピナイサーラの滝。この流れ落ちる滝のはじまりを見に出発。
夏、川岸に咲くサガリバナ。夜花が開き、夜明けには花を川に落としてしまう。
カメラマン
矢島慎一さん
山にまつわる撮影を中心に活動。登山専門誌『PEAKS』にて写真講座「そろそろ本気で撮るぜ山写真」を連載中。時間を気にしない焚き火が好き。
カヤック旅の魅力「何よりも自由で自分任せの遊び」
シーカヤックは前後に大きな荷室があり、そこに野営道具を詰めて旅するための乗り物。もともと登山をしていたが、山と違い携行する道具にそこまでのシビアさはないので、いろんな遊び道具(釣り、素潜り、ギターなど)を持って、しかも歩くより楽に移動できるのが新鮮だった。
海は世界中どこでも海抜0m。ルートを決めるのは自分次第。風、潮流などを読んで、道からキャンプ地まで自分の責任で決めることのできる、アウトドアスポーツの中でも際立って自由な遊びだ。
冬、愛媛県宇和海にて冷たい向かい風と格闘しつつ見つけた無人島。この夕陽がご褒美だ。
秋、カヤックの機動力を活かし小魚が跳ねる場所にルアーを投げる。サワラが大漁。
津波で森の木が倒された海岸でキャンプ。生えていた山椒を釣果の薬味にしたら旨かった。
サザンワークス代表
松本哲也さん
大学卒業後、いくつかのアウトドア専門店を経て、人力旅専門のサザンワークスを立ち上げる。米と調味料を持ち、海から食料をいただきながらの旅が好き。
人物撮影/五十風美弥(国井さん)、山田真人(松本さん)
※構成/大石裕美
(BE-PAL 2023年8月号より)