アウトドアを楽しみたくても「時間がないから、遠いから」を理由にしていないだろうか。その気になれば、日常の中で遊ぶことはできる! そこで今回は、BE-PAL編集部員がカラダを張って通勤時間にソロ活に励んだ記録をお届け。
編集・高瀬が月〜金曜、毎日挑戦! 通勤朝活・退勤夕活でソロ活! 生き物遊びできるかな!?
難易度 ★★
通勤路朝活・夕活の楽しみ方
1 途中下車で寄れる緑地をサーチ
2 最寄り駅からシェアサイクルでGO!
3 コンパクトなギアをチョイス!
始まりは、いつもと同様に編集長の思いつきだった。
「読者がすぐにマネできる素敵なソロ活提案してよ」
「あははー! 高瀬くんならできるってー」
言うは易し、行うは難し。猛暑が毎日続いてるし、早起きできるかも不安……。
ビギナー 高瀬光彦 48歳。そんな私に編集長はいう。
「万年入門者こそ、読者に提案できることがある」と。ある? そんなことあるかな⁉️
月曜日 17:00
@北の丸公園
会議のあと、ヒントを探しにやってきたのは編集部から徒歩20分の北の丸公園。
皇居と隣り合っており、都心にありながら緑が濃い公園だ。
ハシボソガラス
Corvus corone
コクワガタ
Dorcus rectus
カラスとクワガタに相談して思いついた。
野遊び入門者が実践できる都市型自然体験はどうか。ソロでそぞろに都会で生き物遊び。これだ!
火曜日 05:00
@行徳近郊緑地
私が通勤に使う路線は東京湾の臨海部を通る。地図を開けば、途中下車で寄れる緑地がいくつもある。
2日目はJR市川塩浜駅に近い行徳近郊緑地を訪れた。
手軽に回れる小さな湿地でしょ? と舐めてかかったら、すごくでかいぞ、行徳近郊緑地!
なんと83haもあるという。
しかも緑地に隣接するのはあの宮内庁新浜鴨場。そう、今上天皇が皇后雅子さまにプロポーズをした
場所である。生物に造詣の深い天皇御一家も選ぶ名湿地。我ながらいいチョイスだったかもしれない。
双眼鏡、カメラ、図鑑を用意して珍鳥対策も万全だ。どっからでも出てきやがれい。
園内には干潟とヨシ原と雑木林が混在する。場内を回れば林と水辺の鳥に出会える。
アオサギ
Ardea cinerea
読者がビビる珍鳥を激写したいが、この日は私も知るメジャーな鳥が多かった。
コサギ
Egretta garzetta
ケガをした野鳥を収容する「野鳥病院」。サギ類やカモメ類を間近に見られる。
上:セグロカモメ
Larus argentatus
下:ウミネコ
Larus crassirostris
翼に顔を隠すシャイなカモメたち。
あいねすと(行徳野鳥観察舎)。2階はガラス張りの観察スペースで1階にはカフェを備える。開館は9時〜17時。月曜休館。緑地内での観察会を定期的に開催する。次回は開館中に来たいぞ!
ここで突然の解説になるが、今回のソロ活の移動手段にはシェアサイクルを使った。途中下車した駅からの移動にシェアサイクルは安価かつ好都合なのである。
使ったサービスは全国に6700か所の駐輪場を展開している「ハローサイクリング」。スマホで利用登録と、駐輪場の位置の検索、貸し出しと返却をできる。
水曜日 06:00
@新左近川親水公園
東京湾岸の野遊びフィールドのリサーチ中に、もっとも胸が高鳴った遊びがテナガエビ釣り。入門者でも簡単に釣ることができ、しかも食味が良いという。静かな釣りには、いかにもなソロ活らしさもある。
道具は仕舞い寸の小さい竿に仕掛けと魚肉ソーセージ。一式が胸ポケットに入るからお釈迦様とて私が
通勤途中とは思いますまい。
マハゼ
Acanthogobius flavimanus
テナガエビはちっとも来ないがハゼはよく釣れた。獲物を持ち帰るなら、釣りは朝活より夕活がいいな。
木曜日 16:00
@佃島
前日の反省を生かして、釣りは夕活で実践することにした。行先予定表に「早退」と書き込んで佃島へと向かう。
往時の姿を伝える石垣と高層ビルの対比が印象的だ。
水は思いのほか澄んでおり、マハゼの姿も見えるが、いかんせんまだ小型。早々と納竿。
佃小橋のすぐ隣は、時代劇によく出てくる人足寄場の跡地だった。そこに復元されていたのは石川島灯台。現在は下部が公衆トイレとなっている。
水路を回り込むとそこには住吉神社が。本祭の今年は祭りの準備に力が入っている。
すぐ近くまで開発が進んでいるが、佃島周辺は昭和の下町の風情が今も濃く残っている。細い路地の散策は自転車の独壇場だ。
佃島は佃煮の発祥の地。徳川家康と共に大阪から移り住んだ漁民が郷里の佃村の名前を当地に付け、
雑魚を甘辛く煮たものを佃煮として売ったとか。
金曜日 17:00
若洲海浜公園
最終日に選んだのは、23区で(たぶん)いちばん大きな空をもつ若洲海浜公園。新木場駅からバスで南下し、若洲キャンプ場前で自転車を借りて激アツの釣り場だと聞く南端の人工磯を目指す。
マッドマックスのような世紀末っぽい風景が気分を盛り上げる。
用意したのはスズキ狙いのタックル。バックパックに収まる振り出し竿とルアー各種を持ち込んだ。
東京ゲートブリッジを望む釣り座からルアーをキャスト!
……しかしこの日は南風が強く赤潮も磯を洗っていた。数十投で釣り場を変更。
海に面したストレートを快走する。どこも絶好の釣り場だが、防波堤の外側はなんと立ち入り禁止。泣く泣く人工磯へと戻る。
獲物は貧果だったけど、いつも通過するばかりだった街を子供のような気持ちで探検できたのは大きな収穫だった。来週はどこに行こうかな〜。
※構成/藤原祥弘 撮影/山田真人 製図/地図屋もりそん
(BE-PAL 2023年9月号より)