初心者でも楽しめるのが車中泊キャンプ
キャンピングカーの所有者は、必ずしも「キャンプ好き」「アウトドア好き」ではありません。かくいう私も、昆虫が苦手だったり、日光に当たるとすぐに体力を消耗してしまったりと、出不精のインドア派。
普段は市街地や観光地のRVパークを中心に車中泊をしており、テントも所有したことがありません。しかし、そんな初心者でも“キャンプ気分”を楽しめるのがキャンピングカーの魅力。
今回は、キャンピングカー泊とテント泊のハイブリッドである「車中泊ソロキャンプ」をレポートします。
舞台に選んだのは秋田県の日本海沿岸、由利本荘(ゆりほんじょう)市にある道の駅「岩城(いわき)」オートキャンプ場。初めて利用しますが、秋田側からも山形側からも行きやすく、レストランや温泉施設もあり非常に賑わっていました。
テントサイトの営業期間は4月~10月、1泊4,400円(2023年8月現在)で電源付き。清潔な炊事棟や、冷暖房完備のコテージも備えます。
なにより多くのサイトから日本海が見えるという素晴らしいロケーション!この景色がごちそうです。
メリット1. 簡単設営で自由時間をたっぷり確保
暑い夏のキャンプ、到着後にまずやりたいことは居場所の確保。車中泊キャンプの最大のメリットは、設営・撤収の簡単さだと言えます。
私は小型軽量で知られるHelinox(ヘリノックス)のチェアをクルマに常備。ポールを連結して布をかぶせるだけなので、普段はキャンプをしない私でも10分もかからずアウトドアリビングの設営完了です。
日差しの強い時間帯は車内に避難すれば日陰も確保。テントやタープといった大型ギアを展開する必要がなく、とくに夏の炎天下では汗だくにならずに済むので助かります。
ギャレーがリアにあるレイアウトの場合、車両後方をアウトドアリビングにするスタイルが合いそうです。普段は「狭さ」や「天井の低さ」が気になるバンコンですが、リアを開け放つと一気に視界が開けて気分爽快!
キャンプが好きならクルマに「サイドオーニング」を装着するのもよいでしょう。高価な装備ではありますが、シートを引き出すだけで雨よけ・日よけになる便利なアイテムです。
私はキャンプの頻度が低いので現在のクルマには未装着ですが、こんな日には「付ければよかった!」と激しく後悔します。
設営ができたらビールで乾杯!といきたいところですが、ソロキャンプの場合はいつクルマを動かす事態になるかわかりません。同行者がいれば晩酌もいいですね。
余談ですが、車内への虫の侵入にだけは気をつけたい!
密室である車内に羽虫などが入り込んでしまうと、死角が多いために追い出すことも簡単ではなく、就寝時にとても気になります。ハエや蚊が寄らなくなると話題のオニヤンマの模型に期待を込めます。
さて、余った時間はすべてフリータイムです。設営が瞬時に終わるので、到着時刻とほぼ同時に自由時間がスタート。
釣りや海水浴などのアクティビティ(※今回の岩城オートキャンプ場の直下の海岸は遊泳禁止)もよし、じっくり時間をかけるアウトドア料理もよし、創作活動に打ち込んでもよし。
インドア派の私はタブレットを持参。映画を再生したり、電子書籍を読んだり、1台で何役もこなしてくれました。慌ただしさとは無縁の、のんびりした時間が流れます。
隣接する道の駅に出かけると、地元野菜などもたくさん扱っていました。懐かしさを感じるような素朴なキュウリ漬けがあり思わず購入。
メリット2. サブバッテリーで電化製品を活用
クルマに冷蔵庫があれば、現地で購入した食材の保冷も簡単です。
テントキャンプでも使えるポータブル電源やポータブル温冷庫、クーラーボックスなどは、目的や家族構成の変化に応じて容易に買い換え・買い増しができる利点があります。
一方、キャンピングカーにビルトインされた家電や電源システムは、故障時などの対応が少し大変ですが、毎回の荷造りや積み込みを圧倒的にラクにしてくれます。
汗をかいた身体に、先ほど道の駅で買った漬物の塩分が染みます。美味しくないはずがない!
徐々に空があかね色に染まってきました。日本海側なので太陽は海に沈みます。
せっかくの便利なオートキャンプなので、その恩恵を最大限に受けられるよう、とことん時短を追求しましょう。炭はおこさずカセットコンロで夕飯としました。
マジックアワーの絶景を目の前に、ただ焼いただけのシンプルな肉を豪快に頬張る至福。
市販品の何の変哲もないおにぎりでさえ、最高に美味しい!
夜の海というとちょっと怖いイメージもありますが、キャンプ場が一段高い場所に位置し、波打ち際からほどよく距離があります。国道を走行中のクルマからキャンプサイトが見えるほど開けた立地で、すぐ隣に温泉施設もあることから、女性のソロキャンパーにもおすすめできる高規格キャンプ場でした。
メリット3. 車中泊には防犯上の利点も
食事が終わったら、テーブル&チェアも早々に撤収してしまいました。翌朝の朝食くらいならクルマに腰かけて食べられるためです。
ささっと脚を拭いて、折り畳むだけでコンパクトに収納できることから、ヘリノックス製品をとても気に入っています。
私のクルマにはドレン付きの床下収納があるほか、防水マルチルームを備えたキャンピングカーや、エントランスだけ防水仕様のキャンピングカーもあります。そういったモデルなら、雨や泥で濡れたギアを帰宅まで「一時置き」するにも便利です。
よく晴れて乾燥した日でも、土、砂、虫、焦げなどの付着したギアの手入れは大変なもの。「撤収さえ楽しい」という根っからのキャンプ好きならともかく、後始末はキャンプのハードルのひとつです。
フリーランスとして独立する前、上司が大きな鉄板を持ち込んで公園でBBQ会を開催してくれたことがありました。「よっぽど好きなんだな」とのんきに感心しながら、開始前から飲み始めたり、「暑い」「寒い」と勝手なことを言ったりしていたのですが、自分が外遊びをするようになった今ならわかります。
すぐ調理できるよう、おそらく前日から自宅で食材の下ごしらえしてくれていたこと。皆が気ままに騒ぐなか、上司は火起こしから消火まで鉄板を離れずにいたこと。帰宅後に焦げついた大きな鉄板を洗ってくれたであろうこと。
私は「後片付けが楽しい」と思うほうでは決してないので、いかに手をかけず過ごせるか、という方向に試行錯誤が進んだように思います。その点では車中泊スタイルがぴったり。
調理器具は帰宅後にしっかり洗うことにして、ざっと撤収したら隣接する温泉施設へ行ってから車内で就寝。ソロキャンプの場合、しっかりカギがかかり、鋼鉄の壁に守られた車内は防犯上も利点があります。
ただし、私のクルマは家庭用エアコン未搭載、また黒に近いボディカラーのため、昼の直射日光をためた車内はものすごく暑い!ルーフベント×窓×ハンディファンで風の流れを作り、なんとか就寝しました。
テントでは全面メッシュで就寝する人も見かけました。治安・メンバー構成・周囲の環境などの条件が揃ってこそですが、風通しという点ではテントに軍配が上がります。
車内と屋外がつながるような開放感が車中泊キャンプの魅力
翌朝、山側から太陽が昇って暑くなってきました。
再びバックドアを開け、ギャレーで朝の1杯。撤収もほぼゼロ秒で、自分さえその気になったら、すぐに出発できる機動力も魅力です。
車内の狭さを忘れられる開放感を享受しながらキャンプメシを食べ、設営・撤収に手間を取られず身軽に行動。まさに省エネで「いいとこ取り」の車中泊キャンプ。
不便を楽しむ醍醐味や、自然との一体感には欠けますが、私のように「本格的なキャンプは自信がない」という人でも実現可能なスタイルです。
なお、最近ではドアの開閉が騒音となる、車内からもれる光がまぶしいなどの理由から「車中泊禁止」のオートキャンプ場もあるようです。今以上に禁止箇所が増えないよう、周囲との調和に配慮しながら利用したいです。