谷底から見上げる絶景!オーストラリアの「大地の割れ目」を歩いてみたら…
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    2023.09.14

    谷底から見上げる絶景!オーストラリアの「大地の割れ目」を歩いてみたら…

    あっ!と圧倒される絶景。毎回ダジャレスタートですみません…。

    「絶景」というと、普通山頂など高いところか、または「ウユニ湖」のような水面の反射を利用したものが多いですよね。でも今回は「谷底から見上げる絶景」を紹介したいと思います!

    どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。

    その絶景が存在するのは、オーストラリア中央部の小都市アリススプリングス。

    ここから470キロメートル離れたところには、ユネスコ世界遺産(複合遺産)に登録されている「ウルル」(旧名称「エアーズロック」)があります。ウルルは地球の中心という意味を込めて、「大地のへそ」とか「地球のへそ」と呼ばれることもあります。「ん?へそって通常は引っこんでないか?」という素朴なギモンは、ひとまず置いておき。

    ウルルが「大地のへそ」なら、今回訪れた場所はさしずめ「大地の割れ目」。決して引けを取らない見どころ満載です!

    「大地の割れ目」に迫る旅

    その名は「Standley Chasm」。「スタンドリーチャズム」ではなく、「スタンドリーカズム」と読みます。アリススプリングスの中心部から車で30~40分、マクドネル山脈の一角にあります。

    では、さっそく「大地の割れ目」を目指しましょう。

    大人1人12豪ドル(約1100円)を払ってゲートから入場します。にこやかに笑う左の男が今回の記事に友情出演の「ガイド氏」です。

    ゴール地点の「割れ目」までは片道で1.2キロメートル、往復で2.4キロメートル。ただ行って帰るだけなら30分ほどの距離です。

    道は歩きやすく整備されています。

    ガイド氏から「これを見てくれ!」と言われた先には…

    で、今回同行してくれたアリススプリングス在住のガイド氏が「これを見てくれ!」と、ある植物を指さしました。

    写真中央の植物です。「見てくれ!」と言われても、ただの雑草にしか見えませんが…。

    この植物の名前はスピニフェクス(spinifex)だそうです。

    「アボリジナル(先住民)の人たちはこれをちぎって石の上でバチバチ叩くんだよ。するとネバネバして接着剤として使えるようになるんだ」

    へえ~っと先住民の知恵に感心していると、ガイド氏はさらに驚愕の事実を口にします。

    「これからつくった接着剤をNASAが宇宙開発に使ったんだよ。人工的ないかなる接着剤よりも強力だからね」

    すげえ!とそのときはさらに感心しましたが、原稿を書くにあたって調べ直してみても、まだそれらしい記述は見つけられず…。興味がある方はぜひ短気な私の代わりに調べてください。

    ただもしも事実だとしたら、遠くオーストラリアの内陸部にいる先住民が使っていた野草にまで目をつけるNASAって…。

    本日2回目の「これを見てくれ!」

    そして、また心地の良い遊歩道を進んでいくと、再び「これを見てくれ!」とガイド氏。

    「cycads」という植物だと説明してくれましたが、ソテツですね。ちなみに「サイキャッズ」と読みます。

    「これ、何歳だと思う?」

    あっ、来た来た。人間でもいますよね。「ねえねえ、私、何歳に見える?」って、こっちが聞いてもいないのに聞いてくる人。そういう人はほぼ100パーセント、自分の「若見え」に自信を持っているものです。

    そう考えると、このソテツも思った以上に若いはず。見事な推理を頭の中で展開して私はズバリ、こう答えました。

    「おそらく10ヵ月といったところだろうね」

    こちらが「5 years old」とか「10 years old」と答えてくるだろうと期待しているガイド氏の裏をかいてyearではなくmonthで答えてやったのです。

    ギャフンといった表情を見せるガイド氏。…かと思いきや、満面の笑みを浮かべています。

    「逆だよ。ここにあるソテツは500~1000歳くらい。最大1300歳くらいまで生きるらしいよ」

    ウソつけと思ったのですが、後で見た案内板にもそのような記述がありました。

    さらに調べてみたところ、日本にも樹齢1000年越えのソテツがあるそうです。植物の生命力にはまったく恐れ入ります。

    本日3回目の「これを見てくれ!」

    心地よい遊歩道をさらに進んでいきます。

    するとこの先で…。

    「ほらっ、これを見てくれ!」先頭を歩くガイド氏がまた叫びました。

    今度はどんな植物の登場かと思ったのですが…。あっ!私の口から驚きの声がもれました。ようやく目的地に到着です。

    そう、ここが「スタンドリーカズム」。雑学がおもしろすぎて、本来の目的を忘れかけていました(笑)。

    「カズム」とは「裂け目。割れ目。谷間」といった意味。まさに「大地の割れ目」じゃありませんか!

    写真に映るガイド氏。モデルとしてもなかなか優秀です。

    この「大地の割れ目」はこの場所を昔から所有している先住民アボリジナルの「アルンダ族」の人たちにとって、「女性の聖地」であるとのこと。

    両側の崖の高さはなんと80メートル。20階建て以上のビルくらいです。

    見上げると大迫力!両側から挟まれたような気分になり、圧倒されます。

    一番狭いところで、幅は約3メートルもありません。

    赤土の岩肌の色も印象的です。

    このときふと思い出したのが鎌倉などにある「切通し」。でも、こちらはまったく自然の力でつくられたものだそうです。何百万年という歳月をかけて、砂岩が侵食されてできたとのこと。

    私たちのグループ以外には訪れる人がいなかったので、ふとこの大きな割れ目の間で目を閉じ、膝を曲げて座ってみました。そう、まるで胎児のように。

    目に入るものは何もなく、聞こえる音もほとんどありません。さっきまで両側から迫りくる崖の絶景に圧倒されていたのに、妙に落ち着きます。そして…目を開けるとなんだが自分が生まれ変わったような、リフレッシュした気分になりました。

    名残惜しいですが、そろそろ出発の時間です。おっとその前にもう一度記念撮影を。ガイド氏ではない別の同行者にお願いしました。すると…。

    図らずも後ろ向きにすっと立つという、インスタグラマー風ポージングに。すると撮ってくれた写真がぜ~んぶ縦長でした(笑)。

    ガイド氏の「これを見てくれ!」という合図をきっかけに、豊かな自然に出会えた「大地の割れ目」での貴重な体験。

    帰りは元来た道を戻ります。旅はまだまだ続くのです。

    スタンドリーカズム(Standley Chasm)

    アクセス:アリススプリングスの中心部から車で約40分
    入場料:大人一人12豪ドル(約1100円)
    URL:https://www.standleychasm.com.au/
    ※この他に先住民アボリジナルの歴史や文化も学べるツアー(3時間/大人140豪ドル=約1万3000円)などもあり。

    私が書きました!

    オーストラリア在住ライター(海外書き人クラブ)
    柳沢有紀夫

    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブのお世話係https://www.kaigaikakibito.com/

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