トヨタの高級ブランドとして世界中で認知され、完全に定着したレクサス。近年はサルーンやスポーツカー以上にSUVのラインアップが充実している。コンパクトなクロスーバー「UX」、ミドルレンジの「NX」、主力の売れスジ都市型SUV「RX」、そしてランドクルーザー300とプラットフォームを共有するビッグサイズの「LX」といった構成。そこにレクサスブランド初のバッテリーEV(以下BEV)専用モデルとして加わったのが「RZ」。高価格ではあるが、パワフルなモーターを前後に備えた4WDであり、荷室も広々。街からアウトドアフィールドへと、外遊びでも活躍してくれそうなニューカマーだ。
レクサス RZってどんなクルマ?
レクサスの電動化プランを象徴するモデルとして登場したのがBEV専用車の「RZ」。ボディの大きさは全長が4805mm、全幅は1895mm、全高は1635mmであり、RXよりわずかに小さい。一方で前後タイヤ間のホイールベースは同じく2850mmで、クラスは同等と考えていい。ただそのベースとなっているのはRXではなく、トヨタのBEV専用モデル、bZ4X(およびスバル ソルティア)。そこにレクサスならではの、上質な装備やサスペンションの味つけ、ゆとりあるパワフルなモーター、そしてレクサスのデザインテイストなどの要素をたっぷりと与えたことで、唯一無二ともいえるBEVの世界観を完成させている。
注目は動力性能で、駆動方式は前後にモーターを搭載した新しい4WDシステム「DIRECT4」を採用。フロントには最高出力150kW (203.9馬力)、リアには80kW(109馬力)という強力なモーターを与えている。ベースとなったbZ4Xの4WDモデルが前後ともに80kW(109馬力)であることを考えると、駆動用モーターのスペックからも力強い走りがイメージできる。一充電あたりの走行距離は、駆動用リチウムイオン電池に総電力量が71.4kWh(bZ4Xと同じ)を用意したことで、2トンを越える重量でも494km(WLTCモード)を実現。ロングドライブも安心だ。
ラゲッジはまずまずの広さ
床下に駆動用バッテリーを搭載するBEVにありがちな欠点として、天井の高さが不足気味になることがある。RZの場合、身長175cmの大人が後席に乗車すると頭上の空間にはこぶしひとつの空間があった。さらに前後と幅にゆとりがあるおかげか、170cmほどのドライバーが座る前席の背もたれまで、座った状態で膝から10cm程度のゆとりがあった。大人4人のドライブでも、窮屈さを感じることは少ないだろう。
さて、気になるのはラゲッジスペース。後席は40:60の分割可倒式で、5人乗車時には奥行きが約98cm(実測値)、タイヤハウス間の幅は約99cm、最大で約150cm。左右の壁はスクエアでデッドスペースも少なく設計されている。開口部の高さは約69cmあるので、後席をたたまなくても2名一泊分のキャンプ道具が余裕で積める。
後席の背もたれを前方にたたむと、床は完全なフラットにならないものの奥行きは158cmに。ひとりで対角線上に横になれば、目的地に早く着いたときの休憩程度はこなせる広さだ。また床下には充電ケーブルなどを格納するスペースや、荷物の固定用に使えるフックを6か所、スーパーでの買い物袋などを下げるフックを2か所に装備するなど、積載時の配慮も行き届いている。
ECOモードでも十分に力強い
150kW+80kWという前後のモーターを備えた4WDの走りはさすがにトルク感たっぷりで、市街地から高速までゆとりのある走りを味わうことができる。しかもこの4WDシステムはかなり頭が良く、車輪速や加速度、舵角などの各情報を瞬時に分析して前後トルク配分を100:0~0:100の間で制御し、ダイレクトな加速感をとぎれなく味わえる。電力消費が多くなることを覚悟の上でスポーツモードをセレクトし、アクセルをグッと踏み込むと、0~100km/hの加速タイムが5.3秒という実力を遺憾なく発揮して、あっと言う間に制限速度に。
ただ、やはりスポーツモードでは電力消費が多くなるので、すぐに「ECOモード」に戻して走行。この切り替えだけで走行可能距離は数十キロ伸びる。ちなみに走行可能距離は、エアコンの設定を変更するだけでも大きく稼ぐことができる。猛暑ともなればエアコンをOFFで走ったりすることは非現実的だが、取材時(8月下旬)は走行モードをECOにして設定温度を24度から28度にするだけで、表示される走行可能距離が50kmほど伸びた。また試しにエアコンをOFFしてみると、ドライブコンピュータが表示した走行可能距離がなんと80kmも伸びた! ヒートポンプ式で省電力とはいえ、エアコンの電力消費の多さを改めて実感した次第。
今回、市街地から高速道路、そしてワインディングを含めた一般道を350kmほど走行した電費は6.1km/kWh(1kWhで走る距離)。ごくごく普通にエアコンを使っても、BEVならではのシームレスで滑らかな走行をゆったりと味わいながら、400kmはなんとか走れる計算だ。自然が多い場所へ行くならECOモードの方が運転も自然に優しくなり、同乗者への配慮もできていいことづくめだ。
路面状況が悪いときでも安心して走れる電動4WD
レクサス RZの最小回転半径は5.6m。6mを切るとそれなりに小回りがきくレベルなので、この扱いやすさはフィールドでも大いに便利。また、最低地上高は205mmを確保。オフロードの轍や雪道では200mm以上あれば「まずは一安心」という数値だけに、外遊びのパートナーとしても十分に使える、懐の深さを改めて感じた。
このようにフィールドでの使いやすさや良好な走りを支えてくれているのは、重量のある駆動用バッテリーをホイールベース内に収めて重心を下げ、同時に骨格の剛性アップを実現したことに起因する。そこにヤマハが特許をもつパフォーマンス・ダンパーを前後に採用したことで、走行安定性が高いレベルに仕上げられた。高速道路のフラットな走り以上に、ワインディングでは実に素直な曲がりを見せてくれる。乗員の上体は揺れも少なく、ロングドライブでの疲労感も軽減。このしなやかにして4輪でガッチリ路面を掴むような安心感のある走りは、レクサスブランドにふさわしい仕上げの良さだ。
キャビンは平和そのもの。説明では車体後方のピラー(天井とボディをつなぐ柱のこと)に発泡剤を注入したり、各部の建て付けを強化したとのこと。また、フロア、ホイールハウス、ダッシュボードの内側などボディ各所に遮音や吸音材、振動を抑える素材が貼られ、サイドガラスを抑えるゴムパーツにも工夫を凝らしているそう。こうした念入りな仕上げによって、ベースとなったbZ4Xよりも重量が約100kg重くなっている。とはいえ、それが安定感にもつながっているので、神経質になる必要はない。
オフロード用のモードはないけれど、電動4WDは雨でぬかるんだ道に遭遇しても安心して走れるRZは、これからのオートキャンプを想起させる魅力的なSUVだ。
【レクサス RZ 450 e “version L”)
- 全長×全幅×全高=4,805×1,895×1,635mm
- 最小回転半径:5.6m
- 最低地上高:205mm
- 車重:2,100kg
- トランスミッション:eAxle
- 駆動方式:4WD
- フロントモーター最高出力:150kW(203.9PS)
- 同・最大トルク:266Nm
- リアモーター最高出力:80kW(109PS)
- 同・最大トルク:169Nm
- 一充電走行距離:494km(WLTCモード)
- 車両本体価格:¥8,800,000(税込み)
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TEL:0800-500-5577