新しい車台“SGP”(スバル・グローバル・プラットフォーム)をベースに、主要車種のモデルチェンジが続いているスバルのラインナップに、新たなバリエーションが加わった。それがレヴォーグ「レイバック」である。くつろいだ、のんびりとした、という意味の言葉(レイド・バック)をルーツとしたこのモデルは、都会派クロスオーバーを標榜する一台。一般向けの発売に先駆けてプロトタイプを試すことができた。
レヴォーグ レイバックってどんなクルマ?
日本はもとより、世界中にファンの多いスバル車。特に北米での人気は高く、サイズ感や価格などのバランスの良さ、そして信頼性の高さが評価されている。そのなかでも注目を集めてきたのは、ワゴンのスタイルはそのままに、足回りに改良を加えてボディをリフトアップしたクロスカントリーモデルである。レガシィ・グランドワゴンやランカスター、アウトバックという歴代のモデル名を挙げればピンとくる人も多いだろう。
これらのモデルは一般的なワゴンモデルよりも広いグラウンドクリアランス(最低地上高)を確保することで、使い勝手のよさとSUVに遜色ない悪路走破性を両立しているのが人気のポイント。最近では現行型レガシィをベースとしたアウトバックや、インプレッサから派生したクロストレックという“嵩上げ”仕様が用意されており、高い人気を誇っている。そして今回、そのラインナップに加わったのがレヴォーグ レイバック(以下レイバックと略す)である。
ベースとなるレヴォーグと大きく異なるのはもちろん最低地上高。標準型が145mmだったのに対し、レイバックでは55mmプラスとなる200mmを確保している。同社の本格的なSUVであるフォレスターが220mmということを考えると、ワゴンスタイルでこの値はかなりの挑戦とも取れる。実際、レイバックの全高は1570mmに達するため、従来からある日本の一般的な機械式立体駐車場のパレットの高さ部分で引っかかってしまうが、開発スタッフ氏によれば「200mmというグラウンドクリアランスの確保はスバルのアイデンティティとして譲れなかった」とのこと。そんなこだわりが貫かれているのも、スバル車が根強く愛される理由のひとつだろう。
他は基本的にレヴォーグを踏襲しており、ボディサイズにも大きな違いはない。グリル等のデザイン変更によって多少のアクセントは付けられてはいるものの、エクステリアから受ける印象はレヴォーグと同様にシャープでスタイリッシュ。パッケージングももちろん大きな変更はなく、ワゴンの要となる荷室も通常時で492ℓの容量を確保し、床面下にも69ℓのサブトランクを用意する。
レヴォーグとともにレイバックで特筆すべきは荷室奥行きの長さだ。通常時で1005mm、リアシートを前倒しした際は1630mm程度まで拡大でき、しかも完全なフラットになるため長尺物が積み込みやすい。筆者くらいの身長(178cm)であれば、標準型レヴォーグよりも車高が高まったレイバックのほうが荷物の出し入れがしやすいと感じるかもしれない。
使いやすさが増した
今回は正式発表直前のプロトタイプ試乗ということだったが、一般道を貸し切った試乗コース(ワインディングロード)が用意されていたこともあって、日常と変わらぬシーンでの試乗ができた。レイバックの足回りの基本はベース車から変更ないものの、セッティング自体は先に登場したクロストレックと同様、ハイトの高いオールシーズンタイヤに組み合わせた独自のセッティングが奏功しているようで、ダンパーのストロークを生かした乗り心地の良さが際立っていた。
大きな段差を乗り越えた際のサスペンションの伸び縮みが滑らかで、そのあとの収束がすばらしいため、車体の姿勢が乱れることがない。それは速度域を問わずに変わらない美点だから、たとえばアウトドアフィールドに向かうまでの一般/高速移動はもちろんのこと、キャンプサイトへのアプローチのガレ場だとしても不快な振動を伝えてくることはないだろう。レヴォーグやクロストレックに続き、レイバックでもスバルの新しい車体の旨みが存分に生かされているようだ。
魂はフィールドにある
レイバックは、その車名が表すようにスバルとしてはちょっと肩の力を抜いた都会派クロスオーバーとしてキャラクターづけしようとしているが、実際のその中身はまぎれもなく開発陣の実直な姿勢が形となった“しっかりと使える”SUVだ。1.8ℓ水平対向4気筒ガソリンターボに4WDの定評のある組み合わせや、カメラを追加してさらに検知性能を高めたアイサイトシステムなど、安心感に溢れるところも変わらない。
だからレイバックはこれまでのスバルファンはもちろん、道具感を大事にするアウトドアマンの期待を決して裏切ることはない。むしろ全方位にバランスよくまとめられた格好のギアが増えたことに、頭を悩ませるアウトドアマンが増えるはずである。
※撮影/桐畑恒治、SUBARU
【スバル・レヴォーグ レイバック リミテッドEX(プロトタイプ)】
- ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,770×1,820×1,570mm
- 車両重量:—–kg
- 最低地上高:200mm
- 最小回転半径:5.4m
- 駆動方式:4WD
- トランスミッション:CVT
- エンジン:1.8ℓ水平対向4気筒ガソリンターボ
- 最高出力:130kW(177PS)/5,200〜5,600rpm
- 最大トルク:300Nm/1,600~3,600rpm
- 車両本体価格:未発表
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