筆者も日頃から愛飲させていただいている、大好きなお酒のひとつ「白州」。このたび山梨県北杜市にある「サントリー白州蒸溜所」が50周年を迎えてリニューアルし、2023年10月2日(月)から一般公開するということで、それに先駆け、取材でお邪魔できることになった。
今回はリニューアルのポイントを伺いながら、白州蒸溜所の歩んできた歴史を学んだり、製造工程を見学したりと、ウイスキー「白州」に関する知識を深めた後で、実際におすすめの飲み方「白州 森香るハイボール」を試飲したのだが…(この日は特別にシングルモルトウイスキー「白州25年」も試飲させていただけた)。 結論!ぜひ、自然に囲まれた白州蒸溜所の中で「白州」を味わっていただきたい!
今年50周年を迎えた“森の蒸溜所”
白州蒸溜所は1973年に竣工された。サントリー初のウイスキー蒸溜所「山崎蒸溜所」とは異なるタイプの原酒を造るため、当時のチーフブレンダーが日本中を歩いて探したのが、この山梨県北杜市白州町の土地だった。ここは花崗岩(火成岩の1種)によって磨かれた良質な水が豊富で、名水100選にも選ばれた尾白川(おじらがわ)が流れている。
ここに、自然との調和を掲げた蒸溜所を目指し、白州蒸溜所は建築された。確かにここは、緑深き森の中にある。
また、1973年の竣工当時より、敷地内に野鳥の保護区「バードサンクチュアリ」があり、今でも50種ほどの鳥が生活している。野生の鳥との出会いも楽しめるのだ。
今回のリニューアルで新たに作られた「ビジターセンター」は、そんな白州の森の魅力を知ってもらう施設として登場。白州蒸溜所と、サントリー天然水 南アルプス白州工場の共通の玄関としての役割も担っている。
中には工場全体が把握できるジオラマを設置。木材を使ってひとつひとつ手作りの温かみのある作りになっているのが特徴的だ。
また、2024年には、バードサンクチュアリへの架け橋となる「バードブリッジ」なども完成予定だ。
年月をかけておいしいウイスキーになる…その歴史を感じられる白州蒸溜所見学
自然豊かなこの土地で作られる「白州」。次に、どんな工程を経て私たちの元に届くのか。「白州蒸溜所ツアー」に参加すると、実際の蒸溜工程を順番に見ることができるだけでなく、匂いや熱さなどを五感で感じたり、貯蔵庫でじっくり熟成されている様を見学できたり、作り手が働く様を見ることができる。
仕込みから発酵まで~蒸し暑い!そして麦汁の匂いが充満~
ウイスキーの材料は意外とシンプルだ。おいしい水と麦芽。そこに酵母を加えて発酵させ、発酵液(もろみ)をつくる。その課程は近くで見学することが可能だ。
次に発酵へ。麦汁に酵母を加えてアルコールと炭酸ガスに変え、ウイスキー特有の香味成分をつくる。発酵は約60時間かけ、もろみをつくる。
発酵の香りを強く感じる場所だった。麦汁を入れる音なども聞こえてくるのが楽しい。
蒸溜、そして貯蔵へ~ウイスキー作りの大変さと作り手の思いを感じる~
発酵でできたもろみを、銅製のポットスチルという蒸溜器に入れて二度蒸溜。ここでアルコール度数が70度くらいの「ニューポット」と言われる原酒を作成する。ちなみにこの場所は非常に熱気のある場所で、その熱さを感じる演出もあるのでお楽しみに。
作られたニューポットは樽に詰められ貯蔵庫へ。そして3年、5年、10年と寝かされてウイスキーになっていく。樽材や樽の大きさで味が変わるだけでなく、気温や湿度、同じ部屋であっても、上に置いてあるか下に置いてあるかでも変わるのだそう。
その様々なテイストになったウイスキーを、ブレンダーが絶妙にブレンドし、私たちの知る「白州」の味になるのだ。ちなみに白州蒸溜所には貯蔵庫は18棟あり、その場所の高低差も50mほどあるので、棟ごとのウイスキーに個性が出てくるのだそう。
仕込み中の樽の断面図も見られる。まんぱんに入っていたウイスキーが年月を追うごとに減っていくそうだが、それを作り手たちは「天使の分け前」と呼んでいる。
白州の土地を感じ、作り手の思いを感じて…いざ試飲!
最後にお待ちかねの試飲の時間がやってきた。じっくり寝かされて育ったシングルモルトウイスキー「白州25年」を今回特別に試飲させてもらった。
おおっ…かなりスモーキーかつ深みのある、それでいて最後にマンゴーを感じるような甘みがふわっと。これは、焚き火をゆっくり見ながら、少しずつ、少しずつ飲んでいたい極上のお酒だ。
そして白州のおすすめの飲み方「白州 森香るハイボール」も試飲。
- 氷をグラスに1杯に入れて冷やす
- ウイスキーを適量注ぎ、よくかき混ぜる。
- 氷を足す。
- 冷えたソーダを加える(ウイスキー1:ソーダ3・5)
- マドラーで縦に1回混ぜる。
- 叩いた生のミントを乗せる
こちらも試飲…おおっ…爽やか~、口の中いっぱいに爽快感が走った。ミントとの相性がこんなにもいいとは!しかも、テイスティングしていた部屋の大きな窓からは、白州の森が一望できるのだが、その森を見ながら飲むのが格別においしい。昼間のキャンプ場で、ワイワイみんなと飲むのも楽しそうだ。作り手に、そして白州の森に感謝の気持ちを抱きながら、ありがたく試飲させていただいた。
作り手たちが受け継いできた思いとお酒作りへの自信
ウイスキー作りに熱き情熱を注いでいるおふたりからも、お話を伺うことができた。
「この白州蒸溜所は、サントリーの企業理念である“人と自然と響き合う”を体現する場所です。今回のリニューアルポイントは自然と触れあうだけでなく、蒸溜所で働く人がイキイキとしている様もぜひ見ていただき、ものづくりへの理解を深めていただければと思っています」(サントリー株式会社 常務執行役員 原酒開発生産本部長 栗原勝範氏)
「今回の改修にあたってのコンセプトは『LIVE!』です。白州蒸溜所のすべてを五感で味わっていただきたい。ウイスキーは初めてと言う人も、かなりお詳しい人も、ぜひ楽しみに来ていただけたらと思っています。そして従業員も白州の森で働くことをより実感できるよう、お客様との接点を増やし、お客様の声を自らの仕事に還元していく、そんな流れも作っていきます」(サントリー株式会社 白州蒸溜所工場長 有田哲也氏)
白州の土地や白州蒸溜所を五感で感じ、作り手の思いを受けとめながら飲む「白州」は、きっと今までとはまた違った、深くておいしい味わいに変化するはず。ぜひ一度、訪れてみてはいかがだう。
2023年10月2日からの「白州蒸溜所ツアー」について
白州蒸溜所 ものづくりツアー
・所要時間90分 ・参加費3000円(税込)
・主な内容
「サントリーシングルモルトウイスキー白州」が生まれるものづくり現場を見て、その場所でしか感じられない香りや温度を五感で体感できるツアー。テイスティングは「サントリーシングルモルトウイスキー白州」や希少な「モルトウイスキー原酒」、「白州森香るハイボール」。見学ツアー後には、「白州オリジナルテイスティンググラス」の持ち帰りが可能。
白州蒸溜所 ものづくりツアー プレミアム
・所要時間 130分 ・参加費5000円(税込)
・主な内容
サントリーシングルモルトウイスキー「白州」ブランドが生まれるものづくり現場を見て、その場所でしか感じられない香りや温度を五感で体感できるツアー。
「プレミアム」ツアーでしか立ち寄れない製造エリアや貯蔵庫内での特別なテイスティングを通して、白州蒸溜所ならではのつくり手のこだわりや、自然環境をじっくりと見られる。テイスティングは「白州12年」や希少な「モルトウイスキー原酒」など。見学ツアー後には「白州オリジナルテイスティンググラス」と「グラスホルダー」の持ち帰りが可能。
「サントリー白州蒸溜所」ホームページはこちら
取材・文/町田玲子(ビーパル編集部)