キャンプをすることで普通の観光とは、まったく別の体験ができる
皆様には、いつか行ってみたい場所というのがありますか?僕にとって、その場所のひとつが長崎県平戸市でした。
もう何年も前に、たまたま入った百貨店の平戸物産展で買った「いりこ出汁」が驚くほど美味しく、いったいどんな場所で、どうやって作られているのだろうと気になりました。また、アメリカに渡る長い飛行機のなかでみた、高倉健さん主演の映画「あなたへ」に登場した平戸の薄香(うすか)漁港の雰囲気もまた素敵でした。これらが重なり平戸は僕の「いつか行ってみたい場所ナンバー1」に君臨し続けていました。
実は、これまで長崎県には縁がありませんでした。しかし、今年5月に「さばいどる かほなん」の無人ビーチチャレンジの取材で初めて長崎県に渡ることになったのです。
といってもそこは対馬。対馬の自然も食も素晴らしく、再来したい場所となりましたが、そのとき「長崎本土はどんなだろう?ちゃんぽんも美味いだろうな?」と好奇心が湧き立てられたのです。
「そうだ、平戸に行こう」と調べ始めたのが夏の頃。豊かな自然の景観、海産物はもちろん、肉まで地産のものが手に入りそう。なにより、酒蔵と温泉とキャンプ場が揃っているじゃないですか。はい、この秋のキャンプ地に決まりです!
我が家のキャンプスタイルは、案外自由です。
料理研究家の妻・小牧由美とふたりで、その土地のキャンプ場をベースに、地元産の食材を使った料理と酒を楽しみ、あとは名所を巡ったり温泉に入ったり、普通に観光します。
温泉宿やホテルに泊まってもいいのですが、キャンプをすることで、その土地の自然をより長い時間、深く感じることができます。空に満天の星が見られたり、サンセットや夜明けなど、特別な瞬間に遭遇する可能性も高まります。料理人による高級な食事も魅力的ですが、市場で買った地産の材料で、妻が作る創作料理は、素材の旨味をとことん引き出し、しかも、その土地の酒にピッタリというものばかり。これほど贅沢な旅の楽しみ方があるでしょうか?
これまでは、名古屋市内にある自宅からマイカーにキャンプ道具を積んで、三重、岐阜、滋賀、長野などのキャンプ場に行くことが中心でした。しかし、今年6月、ビーパル本誌の取材のため、夫婦で青森県八戸市に出かけキャンプをすることになりました。その距離約1,000km。マイカーでの移動をあきらめ、宅急便で荷物を送り、レンタカーを使ってキャンプする方法を試しました。これが大正解。移動は新幹線で楽に速く。しかも、現地では普段から使い慣れた愛用の道具たちを使えるのですから。
そんな経験もあり、平戸キャンプ旅は飛行機+レンタカーで行くことになりました。前置きが長くなりすぎたので、旅のスタイル(飛行機で行くキャンプのコツ)は、また別の機会に詳しく紹介します。
福岡空港までは飛行機で。そこから先はレンタカーで移動
朝10時過ぎに福岡空港へ。空港の目の前のレンタカー店で車を借りたら出発。空港近くのアウトドアショップに寄って燃料を買ったら高速道路へ。糸島、唐津を経由して平戸を目指します。長崎県に入り松浦市にある宅急便の営業所で、「営業所留め」として送っておいたキャンプ道具をピックアップ。13時過ぎには平戸大橋を渡り、最初の目的地「森酒造場」に到着しました。
126年の歴史を誇る平戸の酒蔵を訪ねる
森酒造場は、平戸城に近い街の中心地にあります。こじんまりとした趣のある蔵が印象的です。この建物は明治28年の創業当時のもの。梁や柱に126年の歴史が刻まれています。
この日は、蔵の女将さんがいろいろとお話をしてくれました。「ここでは毎月毎月違う種類のお酒を造り、樽に貯蔵せず、すぐに瓶詰めをして出荷するんです。そのため生産できる量も少なく、全国に52軒ある販売店さんを通じて買っていただいています。せっかく来ていただきましたが、この蔵で買える生酛づくりの日本酒は酒蔵限定販売の1種類だけです」。
森酒造場は、現在、女将さんの息子さん(なんと30代!)が杜氏となり、新しい酒造りにチャレンジしているそうです。日本酒は、「飛鸞(ひらん)」「HIRAN」というブランド名で、平戸産の米と水にこだわった純米、生酛づくりのものだけを作っているそうです。若い人たちにも日本酒を楽しんでいただけるよう、度数を低めにしたお酒も多いとか。
この日は、酒蔵限定の「HIRAN」と、「フィランド」という春日の棚田で作られた米を使ったアルコール度数9度の純米原酒を購入しました。このネーミング、どちらも「平戸」を意味します。平戸がオランダやイギリスとの貿易の窓口を担っていた時代に、海外の人たちが、そう呼んでいたそうです。
森酒造場
- 所在地:長崎県平戸市新町31-2
- 営業時間:9時~17時
- 定休日:年中無休(1月1日を除く)
- ホームページ: https://mori-shuzou.jp/
地元産の食材を求めて市場へ買い出しに
地酒が手に入ったら、次は食材の調達です。事前に調べておいた「平戸瀬戸市場」へ。田平港にあり、目の前には平戸大橋が。圧巻です。1階は、魚介類、精肉、野菜、お菓子など、平戸産のありとあらゆる食材を調達できる市場になっています。この時すでに15時過ぎ。野菜も魚介類も、棚が”がら~ん”。これは鮮度のいいものを揃えている市場の証。いい食材は、朝一番に出かけて買うのが鉄則です。しまった、出遅れた~!
でも大丈夫です。市場を運営する協同組合の寺田さんが、地元の人ならではの旬の食材を教えてくれました。
「9月は、トビウオ漁の最盛期で、このあたりでは出汁や食用に使う1年分のトビウオをこの時期だけで水揚げします。トビウオは主に定置網で捕りますが、トビウオを追ってシイラもやってきます。平戸のシイラは、トビウオを食べているので、味が別格に美味しいですよ。ぜひ試してください」
料理研究家の目にかかれば、この日の食材の選択肢の少なさは問題ないレベルだったとか。寺田さんおすすめのシイラほか、謎の小魚詰め合わせ、平戸産の新米、新あご(トビウオ)の一夜干し、野菜などを購入。さてどんな料理になるのでしょう?
平戸瀬戸市場
- 所在地:長崎県平戸市田平町山内免345-15
- 営業時間:8時~18時
- 定休日:毎月第2水曜日(8月を除く)、および1月1日~3日
- ホームページ:https://setoichiba.com/
海と草原と星空が楽しめる極上のキャンプ場
市場からキャンプ場までは、ものの10分。1泊目は「中瀬草原キャンプ場」へお邪魔しました。駐車場に車を停め、階段上にある管理棟へ。すると目の前に草原がド~ン!さらにその先には海と島々が。見事な絶景キャンプ場です。
管理棟内には、草原を眺めながらワーケーションを楽しめる窓辺のカフェスペースや、美しすぎるシャワールームや調理場もあり。なにより冷蔵庫が充実していて、先ほど寄った森酒造場のお酒や、もう1軒、平戸市内にある酒蔵=福田酒造のお酒も販売されていました。ベルギービールもごっそり。玉(酒)切れの心配いらずの素晴らしい品揃えです。
ほかのお客様は、3組ほど。すでにソロの方が2名、草原の真ん中にテントを張っていました。「草原と海を背景にしたシーンを撮影したい」と管理人さんに相談すると、「管理棟の横がベストですよ。その先の2組は、1段低い位置にテントを張っていますから、管理棟横なら視界に入りません。それに荷物を運ぶのも楽ですよ」。
さすがです!駐車場からリヤカーにキャンプ道具を積んでよっこらせっと。だんだんと日が落ちて暗くなる海を見ながら、テントサイトをセットアップ。平戸の食材をふんだんに使った妻の料理の撮影にかかるころには、すでに真っ暗でした。
魚介と野菜を中心にした新鮮な料理、そして、この土地の水と米で作られたお酒。目の前の海には船舶の灯火が行きかい、空には満天の星が。こうして人生初の平戸の夜は更けていきました。
平戸の食材で作ったキャンプ飯が気になる方は、ぜひ、小牧由美のレシピページをチェックしてください。
中瀬草原キャンプ場
- 所在地:長崎県平戸市田平町大久保免1111-2
- 利用時間:12時(チェックイン)~12時(チェックアウト)
- 営業期間:通年
- 参考料金:5,000円(展望サイト2~6人、テント1張りで使用の場合。追加タープ・テントは1張り1,000円)※閑散期(12~2月)は4,500円
- ホームページ: https://nakazekamp.com/
2泊3日の長崎・平戸キャンプ旅。まだまだ続きます。
今回参考にした旅の情報はこちら
- 平戸観光協会 https://www.hirado-net.com/
- 長崎県観光連盟 https://www.nagasaki-tabinet.com/