サヴォッタ、モーラナイフ、ソロストーブなど通好みのブランドを扱うアンプラージュインターナショナル(以下、UPI)による「THE BIG SESSION 2023」が開催された。
4人の講師たちによるブッシュクラフトワークショップを受けるとっておきの2日間とあり、平日開催(10月11〜12日)にも関わらず30人超もの参加者が長野・ライジングフィールド軽井沢を目指した。
会場はライジングフィールド軽井沢の林間サイト”フォレストフィールド”と、クルマ乗り入れはできないけれど約30分の講習を受けた人であれば直火ができる”ブッシュクラフトフィールド”。
ワークショップ会場の合間に参加者のタープやハンモックが並ぶ姿は圧巻だ。
夜はメイン会場となるブッシュクラフトフィールドに細長く掘った溝で長い焚き火を囲む。はらった枝を切りわけることなく利用する直火ならではのスタイルだ。UPIが扱う豪華製品をかけたじゃんけん大会はいやが上にも盛り上がる。
そしてイベントをバックアップするのはフィンランド発のバックパックブランド「サヴォッタ」。
2日目の早朝にサヴォッタのサウナに火を入れ、モーニングサウナを実施。心ゆくまで蒸気を浴びて芯からあたたまった後、キリッと冷えた軽井沢の空気でクールダウンするのは最高だ。
「THE BIG SESSION」では4組に分かれて4つのワークショップを巡る。講師はBE-PAL本誌でもたびたびブッシュクラフトを紹介して
日本のブッシュクラフトシーンを牽引する4名が、対面で指導してくれる夢のような体験だ。
ワークショップではテーマごとに多岐にわたる技術を教えてくれたわけだが、その中からとくに印象深いモノをご紹介。
パラフィンコートワックスドコットン作り
「火起こし」担当の荒井さんは、手軽に作れて濡れにも強いティンダー”パラフィンコートワックスドコットン”の作り方と着火方法、火の育て方を指導。
パラフィンコートワックスドコットンに必要なものはドラッグストアで手に入るモノばかり。安価だし作り方も簡単だ。
コツはワセリンを含ませすぎないこと。繊維部分に火をつけるので毛羽だったコットンを触るとしっとりしている状態がベストだ。
少量を切り取って使うので1泊や2泊のキャンプでは使い切らないだろう。パラフィン紙で包んでいるので濡れに強いけれど、保管するにせよ持ち運ぶにせよ缶に入れておけばなおよし。
ファイヤースターターだけでなく火打ち石の着火体験も。石によって飛び方が変わるし、落ちている石を使って火起こしができるのがおもしろい。
ノッチカッティング
「ナイフワーク」担当の越山さんは、いろいろなカッティング技術を使ったノッチを指導。使い勝手の良いノッチの作り方を教えてくれた。
斜めに刃を当てて削るだけじゃない。
バトニングでまっすぐ切り込みを入れてその両側を削れば“Vノッチ”、片側を削れば“ラッチノッチ”になる。さらにラッチノッチを2つ作り、その間を削れば“スクエアノッチ”ができる。
一方、バトニングでX字に切り込みを入れ、その周囲を削れば“ポットラックノッチ”にも“ラッシングクロス”にもなる。
森の中で道具を作るのに身につけたい技術だ。
野草アウトドアバーム作り
「野草活用術」担当の三浦さんが教えてくれたのは、消炎作用を期待できるオオバコと蜜蝋を使ったアウトドアバーム作り。
保湿のためや傷に塗るほか、木や皮革の手入れなどいろいろな使い方ができるという。蜜蝋がベースなのでティンダーやロウソクとしても優秀だ。
ライジングフィールド軽井沢で採取した無農薬オオバコ。
少しくらい汚れたり傷が付いていても気にしない。
手順は簡単だ。オオバコエキスと蜜蝋を混ぜ合わせ、好みで精油を加えるだけ。湯煎したアルミ鍋の底についた水分が入るとやっかいなので、ていねいに水分を拭き取ってから缶に注ぐことがポイントだ。アルミ鍋にわずかに残ったバームはコットンで拭えば、ティンダーとして使える。
肌にのばすバームは素材にこだわりオーガニックを選択したほうがいいが、同じ手順で作れるキャンドルならサラダ油や精製蜜蝋の使用でもいいとのこと。安価に試せるのはありがたい。
ロープワークひとつでタープシェルターを張る
「ロープワーク&タープワーク」担当は川口さん。ハードルが高く感じるタープシェルターも“トグルヒッチ”ひとつ覚えるだけでいろいろな張り方ができると伝授。
大きな輪を作り、輪の頂点を手前に倒して親指で押さえてふたつの輪を作る
両側の輪を重ね合わせるようにたたんでひとつの輪にし、枝を通す。これがトグルヒッチ。
タープのループや鳩目に通したロープをとめることができる。小枝がストッパーになり、小枝を抜くと簡単にほどけるというわけ。
ロープの長さを調整する自在結びのかわりにもなる。自在結びの場合、ロープが曲がると動きづらくなるし、どっちのロープを引っ張ればいいか混乱するが、トグルヒッチなら一目でわかり調整しやすいのも優秀だ。
タープとロープの接続も、ポールの取り付けも、ペグ側のロープの処理もすべてトグルヒッチ。ホントにロープワークひとつでタープシェルターが完成した。
張り方の応用編。吊したりタープの裾を持ち上げたりすれば風が通り、開放感を得られる。
動画や雑誌でいろいろなブッシュクラフトのテクニックが紹介されている。しかし、膨大な知恵と技術を前に「こんなに覚えるなんて!」「どう活用すればいいのかわからない」と諦めてしまうのも事実。
「THE BIG SESSION」ではマネしやすく、応用が利くテクニックばかり。しかも応用例を織り交ぜて教えてくれる。講習後、次のキャンプで試してみようと思わせる。
「THE BIG SESSION」の次回開催は未定だが、各講師のスクールやUPIの日帰りワークショップを利用すれば、実用的な技術を安全に学べる。そうして少しずつできることを増やせば、ハードルが高いと思えるブッシュクラフトの世界だって無理なく入っていけそうだ。
取材協力:アンプラージュインターナショナル https://upioutdoor.com
フリーランスのライター、編集者。主なテーマはアウトドア、旅行で、ときどきキャンピングカーや料理の記事を書いています。https://twitter.com/utahiro7