2023年「しし座流星群」ピークの11月18日は「おうし座南・北流星群」も一緒に楽しめる!
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    2023.11.16

    2023年「しし座流星群」ピークの11月18日は「おうし座南・北流星群」も一緒に楽しめる!

    今年は11月18日の14時ごろピークを迎えます

    11月中旬の天文現象としてよく知られている「しし座流星群」。今年は1118日の14時ごろにピークを迎えるので、18日と19日の未明が見ごろになります。それでも見られる流れ星は1時間に数個程度と予想されます。

    流星群の原材料になるチリ(ダスト)を、地球の軌道上に残していく彗星のことを「母彗星」(ぼすいせい)といいます。文字通り、流星の母です。彗星は雪でできた泥団子のような天体ですが、太陽に近づくにつれどんどん溶けて、地球の軌道にチリ(ダスト)を残していきます。それが流星の元になります。

    しし座流星群の母彗星は「テンペル・タットル彗星」といいます。33年で太陽の周囲を回り、直近で地球の軌道に帰ってきたのが1998年です。それからもう25年が経ち、近年は出現数が少ない傾向にあります。このため、同じ時期に出現する「おうし座流星群」のほうが目立つと言えるかもしれません。

     おうし座流星群は、実は10月の後半から見え始め、11月の中旬までがシーズンです。息の長い流星群ですが、観測環境が良くても1時間に数個という地味な流星群です。

    11月19日3時頃の「おうし座南・北流星群」と「しし座流星群」の放射点。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    放射点が2つある「おうし座南・北流星群」にも注目

    しし座は春の星座ですので、この時期は、夜中の0時を過ぎた頃にやっと東から昇ってきます。放射点が高く昇るほど、流星は見やすくなります。そのため、しし座流星群は真夜中になるほど見やすくなるでしょう。

    放射点とは、流星群のいわば出所のこと。流星の軌跡を逆にたどっていくと、ある1点に収斂しますが、そこが放射点です。といっても、流星は放射点から離れたところに出現することが多いので、観測時は、空全体に広く視野を取るのがたくさん見つけるコツです。

    おうし座は冬の星座。この流星群の特徴は放射点が2つあることです。プレアデス星団(すばる)の下に2つ、放射点が並んでいます。そのため「おうし座南・北流星群」と呼ばれるのです。

    おうし座流星群の母彗星は「エンケ彗星」といいます。周期3.3年という異常な短さで、つまり約3年に一度、地球の近くを通り抜けているわけです。それがほとんど話題にならないのは、とても小さな彗星で、地球や太陽に近づいても明るくならないからでしょう。

    2023年11月の惑星の位置とエンケ彗星の軌道。※惑星の大きさは誇張されています。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    彗星はどこから飛んでくるのか?

    エンケ彗星は特に周期の短い彗星ですが、ふつうは数十年から数百年、それ以上という周期をもっています。たとえば、しし座流星群の母彗星のテンペル・タットルが33年、オリオン座流星群(10月)の母彗星であるハレー彗星は約76年です。

    これらの彗星はどこから飛んでくるのでしょうか? 

    彗星の軌道は楕円形を描いていますが、この軌道を計算することで、どこから飛んでくるのかがわかります。テンペル・タットル彗星の遠日点(太陽からいちばん離れた地点)は天王星の軌道のあたり、ハレー彗星の遠日点は海王星よりも遠くにあります。

    海王星の外側、冥王星が回る領域は「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれる、氷天体の世界です。冥王星くらいの大きさの天体がごろごろ存在しているのではないかと推測され、多くの彗星の生まれ故郷ではないかと考えられています。さらに、エッジワース・カイパーベルトよりも外側、はるか遠くに「オールトの雲」と呼ばれる氷の世界が存在し、ここから飛来してくる彗星もあります。

    2023年11月の惑星の位置とハレー彗星の軌道。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    これらと比べると、エンケ彗星がいかにこぢんまりとした軌道を描いているか、おわかりでしょう。しかし一方で、エンケ彗星がなぜ木星の内側に入ってきたのかは明らかになっていません。諸説ありますが、おそらく、その昔は、もっと遠くの方から飛んできていたと推測されています。それが何らかの理由で軌道が変わり、木星の内側を回るようになったと考えられています。

    謎はそれだけでありません。木星の内側に軌道を変えたあとに、さらにもう一回、何らかの理由で軌道が変化し、現在は2つに割れて飛んでいる……という説もあります。おうし座流星群の放射点が北と南、2か所に分かれているのはそのためではないか、とも考えられます。

    エンケ彗星は、3.3周年という短い周期で太陽の周りを回りつつ、今でも氷を蒸発させて尾を出しています。その一方、エンケ彗星のように短い軌道で太陽への接近を繰り返した結果、もうガスを使い果たしてしまった彗星が存在している可能性も指摘されています。ガスを失った彗星はチリの尾っぽを出しませんから、もはや彗星とは呼べず、太陽の周りを回る小さな天体、小惑星ということになります。

    ちなみに、「はやぶさ2」が探査に行った小惑星リュウグウも、元々は太陽系の外縁で生まれた氷天体ではないかと考えられています。年月とともに氷が蒸発してしまった結果、細かな岩石だけが残って、リュウグウはがれきの寄せ集めのような構造をしています。

    はたしてエンケ彗星は今後、どんな姿になるのか? そんなことを想像しながら、11月中旬、しし座流星群とおうし座流星群をお楽しみください。どちらの流星群も数は多くありませんが、比較的明るい流星が流れることで知られています。

    最後に、流星が、しし座かおうし座か、どちらの放射点から流れたのかを見分けるのは難しいです。ただ、この時期にしし座流星群を眺めていると時として、しし座の頭の方向に飛んでいく流星があります。これがおうし座流星群発と考えられます。逆方向に飛ぶ流星が見られたらラッキーです。

    構成/佐藤恵菜

    私がガイドしました!
    星空案内人
    廣瀬匠
    星空案内人 天文系ライター。株式会社アストロアーツで天文ニュースの編集などに携わる。天文学の歴史も研究していて、パリ第7大学で古代インドの天文学を 扱った論文で博士号を取得。星のソムリエ®の資格を持つ案内人でもある。アストロアーツより、2024年の天文現象の見どころと楽しみ方をまとめた『アストロガイド 星空年鑑2024』が1114日に発売。

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