広島市の進徳女子高等学校には保護犬や保護猫の世話をする部活、WDP(Walking with Dogs Project)部がある。大人顔負けの部活動を紹介!
保護犬&保護猫のお世話、譲渡会、募金活動etc.「犬猫愛護ボランティア部」
高校としては全国的に珍しい、動物愛護ボランティアの部活動、WDP部。顧問の山下育美先生に発足の経緯をうかがった。
「自然発生的に有志で文化祭の発表をしたのが始まりです。それが少しずつ形になり、5年前に部として承認されました」
部員は現在22名。「WDP部に入部したくて受験をした」という部員も少なくない。部活は基本的に週2回。自転車で15分ほどの場所にある広島市動物愛護センターで、保護された犬や猫の世話をしている。今回はその活動に密着させてもらった。
センターがビル街にあり、狭いため、1度に行けるのは7人だけ。生徒たちは活動日を楽しみにしているようで、「癒しだよね~」と嬉しそう。素早く支度を整え、保護犬キャンディを散歩に連れ出し、疾走するキャンディに伴走する。若いっ! 取材陣はついていけない~(苦笑)。
基本の活動以外にも、保護犬や保護猫の譲渡会の運営、ドッグトレーナーのセミナーの受講、不定期だが部室で仔猫のお世話、文化祭での発表などがある。
「譲渡会の運営時は、手作りのチラシを街頭に立って配ったり、飼い主募集の動画を作ったり、里親募集中の犬や猫のプロフィールを作ったりと、かなり忙しくしています」と山下先生。しかし、そんなに頑張っても、引き取られる犬や猫は多くはない。
「譲渡会では人目にさらされて、何時間もがんばってくれたのに、飼い主を見つけてあげられなくて……。自分たちの力不足が悔しくて、泣いてしまいました」
保護犬や保護猫に関わるようになり、気付いたことも多い。
「ペットを扱ったテレビ番組でも、間違った情報を伝えている、と感じることもあります」
「人間と犬猫の命の扱いが違う意味がわからない。ペットショップは人身売買と変わらない」
純粋で一途な彼女たちの言葉が心に突き刺さる。
全国の犬・猫の殺処分数は、1万4457頭(令和3年度)。数字は減っているが、保護犬・猫を処分せずに、民間の動物保護団体が行政から引き取り、世話をしているのが現状だ。でも、きっと改善されるはず。熱い思いを抱く彼女たちの活動を知り、明るい未来が見えた気がした。
動物愛護センターでの活動は「癒し」と部員のみなさん。顧問の山下育美先生(後列左)は動物愛護のNPO法人「SPICA」の代表理事も務めている。
10月某日の活動に密着!
いざ、出発~!
月・木曜日は広島市動物愛護センターで、保護犬&保護猫の世話をする。自転車に乗っていざ出陣。
広島市動物愛護センターへ
まずは保護犬たちに挨拶をすませて屋外へ。街中なので自転車や通行人に注意しつつ散歩。
嬉しそうな柴犬のキャンディ。リードを持つ担当、交通に注意する担当など、基本は5人ひと組だ。
にゃんこのお世話も!
おやつを寄付
わんこの散歩後は、室内にいる保護猫のお世話。集めた募金で購入したおやつなども寄付している。
こんな活動もやってます!
譲渡会
9月に開かれた保護猫の譲渡会。チラシ作りから街頭での配布や宣伝まで、生徒やOGで行なった。
動物愛護センターやボランティア団体で世話をしている犬や猫を集めて譲渡会を運営。年数回ほど開催。
各猫のプロフィールを作成。写真撮影からレイアウトまで、自分たちでこなした。スキルが高い!
ドッグトレーナーのセミナー
1学期に1回(年に3回)、ドッグトレーナーの講習会を受講している。犬との挨拶のし方やほめるしつけなどを実際に体験。
仔猫のお世話
不定期だが、部室で行き場の決まっていない仔猫の世話をしている。飼い主募集の動画を作ったりもする。
乳飲み仔猫にミルクをあげたり、トイレ掃除をしたり、嬉々として世話をする部員のみなさん。
JKの叫び「成犬&成猫の魅力を知ってほしい!!」
若い子のほうが里親が見つかりやすいが、成犬は免疫力が高く、体調を崩しにくい。また、成猫はおとなしく、初めてペットを飼う人にも向く。「若い子に比べ、お別れが早いですが、命の尊さを知る機会。子供にとってもいい経験になると思います」。
譲渡会では手作りのボードを作り、成犬や成猫の魅力をアピール。部員たちの切実な思いが伝わってくる。
シニア犬ハチくんとの物語
今年4月、保護されたハチ(14歳)。世話をしたが6月の譲渡会では里親が見つからず……。
その後、里親が見つかり、学校を訪問。譲渡会で頑張ってくれたハチ。幸せになれたよ。
※構成/松村由美子 撮影/江藤大作
(BE-PAL 2023年12月号より)