アメリカ西海岸・シアトルの北東に位置し、山々が連なるノース・カスケード地域には、年間を通して多くのハイカーが訪れます。その中でも、「レイク22」はトレイル入り口(登山口)までシアトルから車で1時間強と比較的近場でアクセスしやすく、トレイル自体も湖まで往復3時間半とちょうどいい距離感。シアトル市民から人気を集める日帰りハイキング・スポットとなっています。今年ついに、夫婦で体験してきました!
アメリカ西海岸ではハイキングが日常のアクティビティー
シアトルのあるワシントン州は、大自然の宝庫。特に、カナダに程近い北東の山岳地帯は、「ノース・カスケード国立公園」や「ベーカー山スノコルミー国有林」が広がる屈指の登山観光地です。シアトル市民は日常的にキャンプやキャビン泊、または日帰りで、山歩きやハイキングに親しんでいます。湖が多いことでも知られ、その数はなんと200近くにも及ぶそう。
湖の展望をゴールとするハイキング・コースが整備され、今回紹介するレイク22のそのひとつです。レイク22は、氷河の活動により空いた穴の窪みへ、滝から雪解け水が注がれる氷河湖。背後のピルチャック山に抱かれるこの湖に、どうして「数字」の名が付いているのでしょう。気になりませんか? 諸説ありますが、特定の水源または森林区画に番号が割り当てられたとも言われます。
レイク22のハイキングの魅力
雪解け後の6月頃から11月中旬くらいまでがハイキングのハイシーズンですが、冬〜春もまたスノーシューや適切な装備で凍った湖の絶景を目指すアウトドア愛好家が少なくありません。
トレイル入り口に有料大型駐車場が完備するものの、ハイシーズンには平日ですらよほど朝早く家を出ないと、駐車スペースの争奪戦に巻き込まれること必至。サマータイムを実施しているシアトルは、夏場であれば夜9時過ぎまで空が明るいので、逆にハイキング客が帰り始める午後3時以降に到着するのも狙い目です。
私たち夫婦は後者のプランで出かけました。思った通り、帰り客の姿がちらほら。駐車場も空いています。「ラッキー!」と、私たちもにんまり。幸先の良いスタートとなりました。
ハイキング・コースも湖もここだけではないのに、なぜか早朝から激混みの人気ぶり。いったい、どうしてなのでしょう? 私も体験してみて初めてその理由がわかった気がします。
うっそうと茂る温帯雨林、巨木がそそり立つ原生林、岩だらけの崖道、湖を囲む湿地帯と、起伏に富んだ登山道は飽きることなく、子どもからシニアまで冒険心をくすぐります。何より、周りの山々と湖の景観が最大の魅力。湖畔の万年雪にもロマンを感じるはずです。
夫も、
「あそこに行ってみよう」
と、万年雪のあるエリア目掛けて、私の先を歩いていきます。もうすっかりオジサンなのに、少年に戻ったみたいに大はしゃぎ(笑)。ただし、いくら美しくても万年雪のかかる崖に登るのは危険!過去には死亡事故も起きています。
ゴールに待つ最高のご褒美、湖畔でピクニックを満喫!
足場はかなり悪く、大きな岩がゴロゴロする道なき道を歩くこともしばしば。見渡す限り山々、という風光明媚な展望は素晴らしいものの、崖の上に手すりもなく、どこを通れば正解なのかよくわからないトレイルがひたすら続きます。
「ここを行け、と?」
ハイキング初心者の私には冷や汗ものですが、折り返してきた小学生らしき子どもが颯爽と私の隣を通り過ぎていきます。まだ小さいのに、なんと頼もしい……。
ひいひい言いつつ、横倒しの巨木の下をくぐり抜け、渓流の飛び石をジャンプして渡りながら、ふと懐かしの「風雲!たけし城」を思い出しました(この番組はアメリカでも放映され、大評判)。「竜神池かい!」と、心の中でツッコミを入れつつ、先を急ぎます。
最後の森を突っ切ると突然視界が開けて、断崖絶壁を背に湖が出現。ようやくたどり着いた湖は、氷河に削られ、崖に囲まれてぽっかり空いた空間に横たわり、まるで絵葉書のよう。この上ない達成感を覚えます。しかし、ここからがいちばんの見どころ! 立ち止まることなく、湖を一周する遊歩道へとさらに進みます。
私たちは遊歩道を少し外れ、湖岸の岩に腰掛けて休憩としました。静寂に包まれ、湖面を眺めながら持参したサンドイッチを頬張ると、だんだんと気分もほぐれていきます。
水しぶきの音に何事かと振り向けば、遠くにはダイビングに興じる若者たちが。もちろん、氷河湖の水の冷たさは尋常ではありません。私たち夫婦は、当然「ノーサンキュー」です……。ちなみに湖の大きさは17.9ヘクタール、最大水深は16メートルとのこと。
この地域は1947年から研究自然地域(Research Natural Area)に指定されており、今も手つかずの自然の中にあります。ウエスタンレッドシダー、ウエスタンヘムロックの古代の森は320ヘクタールにもなり、地形の特殊性から標高750メートルの低地にもかかわらず、高山植物と万年雪が見られる稀有な場所。トレイルそばに小川や滝も流れます。
チャレンジングながら初心者も特別なギアなしで楽しめ、短時間でリフレッシュできるレイク22へのハイキング。これからもシアトル市民の定番アウトドア・アクティビティーであり続けると、身をもって確信しました。
Lake 22 — Washington Trails Association