5日間ガッツリ働いた後の週末は、マンハッタンの喧騒をぬけだして自然の中でリチャージするのがニューヨーカー流。焚き火をかこみ、夕食を手分けしてゆっくりと用意しながら、つかの間のデジタルデトックスです。
そんな夜に彼らが楽しむ人気のホットカクテルレシピをご紹介します!
大人のホットココア「ホットチョコレートウィズキックス」
Hot Chocolate With Kicks
冬のキャンプの「あったまりドリンク」の定番といえば、ココアですよね。そのいつものココアにお酒をプラスしてちょっと大人のホットカクテルにしたのが、この「ホットチョコレートウイズキックス」。キックスとは「パンチを効かせた」という意味なのです。
ベースとなるココアをおいしく作るコツは、ココアパウダーを用いるのではなく、焚き火で温めたミルクにダークの板チョコを贅沢に割り入れてゆっくりと溶かすこと。まろやかさのレベルがまったく異なります。
おいしいホットカクテルができるのを想像しながらゆっくり混ぜる。これもまた、忙しい日々を離れたキャンプならではの醍醐味です。アツアツのココアができたら、いよいよカクテルに。ウォッカとバニラクリームのリキュール「ベイリーズ」を50ccずつ加えてできあがり。濃厚なココアにアルコールも加わって、カラダが芯から温まっていきます。
ちょっと甘みを加えたい場合は、お好みでブラウンシュガーや生クリームをのせてもOKですし、シナモンスティックを添えるのもありです。
ホットコーヒーのカクテル 「スパイクドクリーミーコーヒー」
Spiked Creamy Coffee
ココアの次は、こちらも香りを嗅ぐだけでホッとするコーヒーを使ったカクテルです。スパイクド=「アルコールを加える」という名の通り、キャンプ用のコーヒーメーカーで時間をかけて丁寧に入れた熱々の一杯に、お好みのウイスキーをたっぷり加えます。
上の写真は、ニューヨーカーに大人気の「Bulleit (ブレット))というケンタッキー産のバーボン。すこし甘みのあるアメリカンバーボンはコーヒーとの相性も抜群。アメリカンサイズの大きめのコーヒーなら、ウイスキーはちょっと多いかな?と思う100ccくらいがコーヒーの強い味に負けず美味しく仕上がります。
小ぶりのボウルと泡だて器も持参して、コーヒーができる間に生クリームを泡だてます。二人分で約100ccも泡立てれば十分。
コーヒーの酸味とバーボンの甘みの混じった香りで、心もからだもリラックス。そして、最後にタップリのせた生クリームがなんとも言えない舌触りを生んでくれます。熱さが喉をこえてそのままお腹まで降りていき、じんわりと体全体が温まる感覚はやはりホットカクテルならでは。
もっと甘いのが好き、という方はコーヒーにブラウンシュガーをお好みで溶かしてくださいね。
バーボンのかわりに、コーヒーリキュールのカルーアやラム酒を入れると、また味がガラリと変わります。それぞれ何種類か作ってみても楽しいですね!
ウイスキーカクテルの定番を一捻り「グリルドオレンジ・オールドファッションド」
Grilled Orange Old-Fashioned
オールドファッションドとは「古風な」という意味。その名の通り古く昔から親しまれてきたウイスキーカクテルですが、ココでご紹介するのは、目の前の焚き火でグリルした材料を入れてアレンジしたもの。
まずは、中ぐらいのサイズのオレンジ(ネーブルオレンジがおすすめ)を厚さ5ミリから8ミリくらいにスライスします。グリル網に乗せるかスキュアー(串)に挿して表面に焦げ目が付く程度にグリルすると、皮の焦げる香りに甘いオレンジ果汁が滴って、なんとも言えない香りが漂い始めます。
グリルしたオレンジ1枚と瓶入りの甘いチェリーを一粒グラスに入れて、軽く押しつぶしたらそこに数滴のビターを垂らします。たった数滴でぐぐっとウイスキーの風味に深みを与えてくれるビターはこの飲み物の影の主役なので、ぜひ調達して行ってくださいね。
オレンジを潰したグラスに、いよいよお好みのウイスキーを150cc程度加えてストレート、または水割りに。これまたバーボンがこのレシピには根強い人気です。
スキュアーや木の枝に挿して表面を焦がしたマシュマロを浮かべたら出来上がり。マシュマロは気をつけないとあっという間に真っ黒になってしまったり、中身が溶け出してしまったりしますよね。そこを、くるくると器用に回しながらちょうどいい焦げ目がついてくれると、なんだか得意な気分になります。見た目もきれいなオールドファッションドは、マシュマロを夢中で炙って火照った頬に心地いい、きりっと冷たいドリンクです!
さて、最後に2つ、伝統的なフルーツ、ハーブ、スパイスを使ったとっておきのカクテルをご紹介しますね。
ホットトディのフルーツ版 「スパイスドアップルホットトディ」
Spiced Apple Hot Toddy
まずは、りんごとシナモンという永遠の組み合わせに、ウイスキーの風味を活かしたフルーティなカクテル。材料がシンプルで、作り方もとても簡単。
新鮮なリンゴジュース、またはアップルサイダーにシナモンスティックを入れて焚き火に乗せて温めます。甘~い香りが立ち上ってきて、思わずつばをごっくん、なんてことも。アメリカの秋冬の味覚、栄養たっぷりのりんごは、この時期パイになったり豚肉と煮込んだりと大活躍なだけに、アメリカ人なら誰しも鼻とお腹をくすぐられる香りなのです。
あつあつのリンゴジュースに、約4分の一の量のウイスキーを加えるだけ。ウイスキーの樽の香りとシナモンの香りもりんごにぴったりで、舌を火傷しそうな熱さをふうふうしながら飲むこのトディ、これがなくてはキャンプの楽しみも半減というくらいの定番ドリンクです。はちみつを垂らしたり、レモン汁をちゅっとしぼったりして味の調節を。
他に、この飲み物に合うスパイスにはクローブ、スターアニス(八角)、オールスパイス、オレンジを乾燥させたもの、黒胡椒の粒などがあって、それらはよくホリデーシーズンに Mulling Spice (マリングスパイス)としてかわいらしい袋に入れられてお店に並んでいます。
子供の頃から慣れ親しんできたこのスパイスセットを持参して作るのが、次にご紹介するドリンクです。
冬のスパイス入りホットワイン「マルドワイン」
Mulled Wine
マルはもともと「考える」という意味ですが「香料を混ぜて馴染ませる」という意味で使われます。
赤ワインまるごと1本とスパイスを大きめの鍋にあけて、焚き火の端っこで(直火は避けて)ゆっくり、じっくり、時折優しくかき混ぜて温めて行きます。各自、手のひらに持ったマグに好きなだけレードルでたっぷりと掬って頂きます。
各種スパイスのエキスを時間をかけて煮出したこの飲み物は、昔から温まりたいときに必ず供された伝統的なホットカクテル。ホリデーの集まりなどで寒い戸外から到着した人たちにまずいっぱい、と手渡される飲み物でもあります。
オレンジが多めが好き、シナモンをタップリと、と自分で好きな風味に自由にアレンジできるのも魅力。
使うワインは、すこし重めのものがおすすめ。お店ではよくオーストラリア産のシラーズに「マルドワインにぴったりです」という表示が付けられて並んでいます。
いかがでしたか?健康と外見に敏感なニューヨーカーたちも、友達と繰り出すキャンプではちょっとハメを外し、スペアリブやハンバーガー、そしてダッチオーブンで焼きあげたコーンブレッドも解禁。食後には、デザート代わりに体の芯まで温まるホットカクテルで夜半までおしゃべりに花を咲かせます。
ご紹介したホットカクテルは、星空の下のキャンプはもちろん、忙しかった日の夜のリラックスタイムにもぴったりの飲み物ばかり。おしゃれだけど作り方は意外と簡単。お酒が入った温かいマグを手のひらに、ひととき戸外で、自宅で、ニューヨーカー気分を楽しみましょう。