絶好のコンディションで2023年「ふたご座流星群」が見られる!
12月中旬は恒例の「ふたご座流星群」がやってきます。出現期間は12月5日から20日ごろですが、極大は15日未明の4時頃なので、14日から15日にかけての夜が見ごろです。14日の夕方18時に薄明が終わるころには月齢1.5の月が沈むので、ひと晩中、月明かりのない絶好のコンディションです。
ふたご座流星群は比較的コンスタントに流れる安定感ある流星群です。
近年では、極大のころには1時間に60個、つまり1分に1個を超えるペースで流星が出現することもあります。今年も、15日の未明に街から遠く離れた場所で観察すれば、同じくらいの流れ星が出現すると予想されます。多少の街明かりがある場合でも、照明を避けて開けた場所を選べば、一晩で数十個の流れ星が見られるかもしれません。
ふたご座は兄カストルと弟ポルックスの2つの星が目印です。弟のポルックスが1等星、カストルが2等星です。といっても、それほど見かけの明るさは違いません。オリオン座の星のうち北東(左上)にある赤い1等星がベテルギウスですが、そのベテルギウスのさらに北東に2つ、金銀の星が並んでいるのが見えるでしょう。
放射点はカストルの近くです。放射点とは、そこから流星が放射状に出現しているように見える点のこと。流星の軌跡を逆にたどっていくと、放射点のあたりに集約されます。と言っても、放射点の方向だけ見ていてもたくさんは見られません。流星は空全体に飛びます。放射点を中心に、なるべく広い範囲を観察してください。
母“小惑星”ファエトンの不思議
ふたご座流星群の原材料になるチリをまき散らしていった母彗星の名は「ファエトン」……と言いたいところですが、実はファエトンは彗星ではなく小惑星とされています。昨年のふたご座流星群の回にもご紹介しましたが、ファエトンはもはや彗星と呼べる尾っぽがありません。
彗星は凍った泥団子のような天体で、太陽に近づくと氷が蒸発して尾っぽとなり、軌道上にチリをまき散らしてきます。しかしファエトンにはその氷が蒸発している形跡が見られません。昔はチリを飛ばしていたはずなのですが、すでに氷が溶けきったと考えられます。
現在、ファエトンは1.4年という、とても短い周期で火星と木星の間を飛んでいます。もうチリをまき散らさないので、軌道上に流星の原材料になるチリが補充されることはありません。
それでも、ふたご座流星群は毎年コンスタントに流星を飛ばしています。むしろ近年は増加傾向にすらあるという、不思議な流星群でもあります。
母彗星のチリの残った軌道をダストトレイルと呼びますが、ファエトンの地球に対するダストトレイルが少しずつズレているという可能性もあります。実際のところ、今後、劇的に流星の出現が増えることは考えにくい状況ですが、かといって劇的に減ることもなさそうです。
ところで、彗星から小惑星になってしまったファエトンに向けて、今JAXAが「DESTINY +」(デスティニープラス)プロジェクトを進めています。
JAXAは「はやぶさ2」で小惑星リュウグウの探査を行い、その破片を持ち帰ることに成功しました。「DESTINY+」は「はやぶさ2」をさらに改良した推進エンジンを使い、小惑星を探査するだけでなく、将来の深宇宙探査のための技術を実証する計画でもあります。ファエトンをフライバイ(探査機が天体の近くを通過すること。またその時、天体の重力を利用して加速したり減速したりすること)する際に、表面を撮影、放出されるダストの組成を分析するそうです。2024年度に打ち上げられ、2028年1月にフライバイする予定です。まだまだ先の話ですが、謎めいたファエトンの正体が少し明らかになるかもしれません。こちらも楽しみです。
最後に、ふたご座流星群の夜はとても冷えます。防寒準備を忘れずに楽しんでください!
構成/佐藤恵菜