ヒマラヤツーリングの夢を叶えるためにインドへ!
『Don’t think Feel!(考えるな、感じろ!)』
インドに到着してすぐ、私の中のブルース・リーが語りかけてきた。
私の名は、橋爪ヨウコ38歳。身体は熟れているがまだ女としても芸人としても売れてないお笑い芸人だ。
大型バイクに乗り始めて数年。「でけぇ山を走りたい!」と思い立ち(前記事をご覧ください)様々な参加条件をギリギリでクリアし、夢のヒマラヤツーリングに向け、とうとうインドへ旅立った。
2023年8月。インドのデリーにある「インディラ・ガンジー国際空港」に到着。トランジットのため空港内のホテルに1泊し、翌日には標高3650mの「レー」に移動する予定だ。
ここでまず驚いた事は、インドの空港は出入りするのが非常に難しい。4時間ほどフリーの時間があるので「せっかくなら!」とデリーの街並みを見てみたかったのだが、日本のように、誰でも自由に行き来が出来る空港とは違い、空港に出入りするためだけでも厳重な検査が必要だという。
そんなガチガチのセキュリティをどうにか突破出来たとしても、また空港の中に入るためには数時間はかかるらしい。
残念ながらデリーの散策は諦め、ホテルでおとなしく過ごすことにした。
ただ時間はムダにしたくない。空港内にある両替所へ行くことにした。基本的にインドの通貨「ルピー」は原則国外持ち出しは禁止。しかもインドと一部の国でしか両替できないのが特徴である。
「日本で先にドルに替えておくとインドの両替所でスムーズに行くよ!」と前もって聞いていたのでドルを片手に両替所へ。
『マネーチェンジ!オーケー!?』「what?」『ドル、チェンジ!プリーズ!ルピー!ルピー!』「……OK」
カタカナと熱意だけで何とか伝わったらしい。向こうも「あらあら、この子はイングリッシュベイビーちゃんなのね!」と優しい目をしながら何とか両替をしてくれた。
ドルから両替したルピーは思っていたよりも少ない気がした。【日本円→ドル→ルピー】に両替したのでもうよく分からなくなっていたのだ。
ホテルに戻り、ベッドに横たわりながら『地球の歩き方〜インド編〜』を読む。これから始まる人生初のインド旅。「ここへ行きたい!ここも見てみたい!」とウキウキしながらページをめくっていくと…とある文字が!
【空港の両替所でもぼったくられたという投稿が多数あるので注意!】
うそ…?確かにちょっと少なくないか?と思ったが、実際にそんな事があるなんて!「空港の両替所なら大丈夫だろう」という常識と概念をしっかりと覆す国、インド。
ふふふ、面白い国だぜ。
翌日朝4時起きで、標高3650mの「レー」の街へ
レー(Leh) は、中国との国境ギリギリの北インドに位置し、ヒマラヤツーリングにもってこい!の場所だ。ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈に挟まれた渓谷部。
レーがあるラダック地方は「天空の楽園ラダック」と呼ばれているらしい。標高が高いので乾燥はしているが、夏は涼しく過ごしやすい観光地。イメージ的には日本でいう軽井沢的な場所だと考えていただけると分かりやすい。
ここから、私の夢のヒマラヤツーリングが始まる。ウキウキワクワクと希望と夢を抱いていたが、飛行機がレーに到着直後からどうも体調がおかしい。
二日酔いのような胸焼け。飛行機に酔ってしまったのだろうか。そして「私ってどうやって息をしてたっけ?」と忘れるぐらいに呼吸がしづらい。レーは富士山の頂上と同じぐらいの標高の高い場所ではあるがこんなにも息が上がるとは…。
「うぅ…気持ち悪い…」
ついに、レーの空港でしゃがみ込む。何だかグーっと眼圧も感じる。一刻も早く目を閉じて横になりたかったが、レーの空港はインドでも最もセキュリティが厳しいといわれている軍事空港。
軍の敷地内に空港があるため写真や動画撮影は絶対にNG。空港内で、私がやっているバイクYouTube《ようこそ!づめちゃんねる》の撮影もしたかったが、そんな事をしたら怒られるだけでは済まないだろう。撮影OKだったデリー空港よりもセキュリティが厳しく、空港の外に出るには様々な手続きをしなくてはならなかった。
「さっきも同じ事を聞かれたよ…えっ親の名前まで必要なの?…それもさっき答えたよ…だから親の名前はタカオで…それもさっき…」とレー空港の独特な手続きが始まった。体調不良も相まってか、一気に10歳くらい老け込んだ気がしないでもないが、何とか手続きを終了。無事、シャバへ!!
「うわー!空が近い!山がデカイ!」
レーの雄大な景色にしばらく口を開けたままフリーズしてしまった。右を見ても左を見てもゴツゴツしたヒマラヤの山々。ただ目の前に見た事ないレベルの大きな山々があり、その一見殺風景にも見える景色がとても神秘的でパワーを感じ、圧倒されてしまったのだ。
しかもひんやり涼しいのにジリジリと肌が焼けるような陽射しを感じる。湿気はなく少し砂っぽささえも感じる気温。日本では味わったことない感覚だった。
標高3650mのレーは雲も少なく、手を伸ばせば触れるんではないかと思うぐらいに空が近い。私の大好きなイラストレーター・永井博さんが描くような綺麗な青色の空に感動しつつ「この空を目に焼きつけたい!」と見上げたが太陽が眩しすぎて長時間は厳しそうだった。
これが夢にまで見たヒマラヤなのか。ワクワクはもちろんなのだが、自分の想像を遥かに超える景色に少し恐怖さえも感じ始めていた。
「…本当にバイクで走れるのか?」
3日後には、標高5600m越えの車とバイクで行ける世界一高い峠を攻めに行く予定だ。標高3560mでさえ呼吸がしづらいのに、2000mも空に近づくのである。道もどんどん険しくなっていくだろう。そんな規格外のヒマラヤにビビり散らかしていると…。
『Don’t think Feel!(考えるな、感じろ!)』
と私の中のブルース・リーが語りかけてきた。そうだ、考えたって何も答えはない。
「でけぇ山を走りたい!」と思い立ち、インドに来た自分の直感を信じて、感じたまま進めばいい。ミスチルの桜井さんだって高い壁の方が、登った時気持ちが良いって歌ってくれていたじゃないか!
そんなブルース・リーとミスチル桜井さんのお陰で先程の不安は吹っ飛んでいった。
ついに、間近に迫ってきたヒマラヤツーリング。「胸が高鳴るぜ!」と言いたいところだったが、まさかのこのまま高山病で寝込むことになるとは…誰が予想しただろうか。
次回!【どうなる!?高山病!!標高5600m越えに挑戦する事が出来るのか!?】
まだまだつづく、ヒマラヤツーリング!
絶対読んでくれよな!