メキシコ国内の麻薬戦争、パレスチナの住民蜂起、アフリカの内戦……。世界各地の戦場・紛争地の厳しい現実を取材し続ける亀山亮さんが写真で伝えたいこと
探検家・関野吉晴さんが、時代に風穴を開けるような「現代の冒険者たち」に会いに行き、徹底的に話を訊き、現代における冒険の存在意義を問い直す──BE-PAL1月号掲載の連載第30回は、アフリカの紛争地帯を撮影した写真集で土門拳賞を受賞した写真家、亀山亮さんです。
亀山さんは2000年秋、パレスチナのインティファーダ(イスラエルの占領に対しての住民蜂起)を取材中にイスラエル軍のゴム弾に撃たれ左目を失明しました。なぜ命の危険を冒してまで戦場や紛争地に赴くのか、関野さんが迫ります。
関野吉晴/せきの・よしはる
1949年東京都生まれ。探検家、医師、武蔵野美術大学名誉教授(文化人類学)。一橋大学在学中に探検部を創設し、アマゾン川源流などでの長期滞在、「グレートジャーニー」、日本列島にやってきた人びとのルートを辿る「新グレートジャーニー」などの探検を行なう。
亀山亮/かめやま・りょう
1976年千葉県生まれ。15歳のときに初めて手にしたカメラで、三里塚闘争を続ける農家の撮影を始める。1996年から世界各地の戦場・紛争地帯を取材。2013年、写真集『AFRIKA WAR JOURNAL』(リトルモア)で第32回土門拳賞を受賞。八丈島在住。
使命感ではなく、自分のために戦争を撮っている
関野 亀山さんは戦争の何を撮ろうとしているのですか。
亀山 なぜ隣人同士がちょっとしたことがきっかけで殺し合いを始めるのか――戦争にはそういう一面が間違いなくあります。そんな共通項を探して写真に撮り、戦争を表現したいと思っています。それともうひとつ、戦争の傷跡を普遍化したいと思っています。たとえば戦争で足を失ったら、足がなくて不便というのが一生続きます。その人にとっては、戦争が生涯続くんです。そういう感覚って、僕は目を失っているからわかるけど、他人にはなかなか理解できないものです。そのような戦争の傷跡を普遍化して写真に残したいと思います。
関野 「しんどいし、撮影自体も楽しくない」のに撮るのは、戦争の共通項や傷跡を写真に残さなければという使命感からなのですか?
亀山 使命感はないですね。使命感で現状を変えたいというのなら、NGOなどで活動したほうがいいと思います。若いころは、いい写真を撮って他者に自分のことを認めさせたいという欲がありましたが、最近はそういうのもありません。結局こういう表現活動とは、究極的には自分のエゴを満足させるためのものだと思うんです。社会問題を撮っていると、「人のため」と見られるけれど、本当は自分のために撮っているんです。
関野 モノクロにこだわっているのも自分のために撮っているから?
亀山 そうですね。ルワンダ虐殺を撮影したジル=ペレスなど、影響を受けた写真家の作品にモノクロが多くて、色がなくて、情報量が少ない分、ぱっと五感に入り込む感覚がモノクロにはあると思っています。
関野 私は亀山さんが使命感をもって悲惨な現場に行っているのだと思っていました。でも、使命感からではなく自分のエゴのためにマイペースで続けている――自分のために危険を冒すという点で、非常に現代の冒険的だと感じます。
この続きは、発売中のBE-PAL1号に掲載!
公式YouTubeで対談の一部を配信中!
以下の動画で、誌面に掲載しきれなかったこぼれ話をお楽しみください。