ロサンゼルスからフェリーで1時間の風光明媚なリゾート島。その山中を高校生たちに走らせるのは何故?
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    2024.01.05

    ロサンゼルスからフェリーで1時間の風光明媚なリゾート島。その山中を高校生たちに走らせるのは何故?

    アバロン港。奥に見える円形の建物はカタリナ・カジノ。

    ロサンゼルス近辺のビーチから海を眺めると細長い島影が見えます。沖合35キロの距離にあるサンタ・カタリナ島です。中世には海賊の根拠地として名を馳せた歴史を持ち、1920年代からは観光地として開発された由緒あるリゾート地です。

    小さな空港はありますが、空路の定期便はありません。ほとんどの人がロングビーチなどからフェリーで島にやってきます。片道70分くらいですので、日帰りもできます。

    カヌーやダイビングなどのマリン・スポーツ、潜水艦ツアーやホエール・ウォッチングなど、「海派」のアクティビティが盛んですが、実はこの島はハイカーやトレイルランナーら「山派」にとっても穴場です。

    島の中心はフェリー港があるアバロンという街で、人口のほとんどが住み、観光施設も集中しています。そして、そこを離れるとほとんど手つかずに見える自然が広がっているのです。なぜなら、島の面積の実に88パーセントが自然保護区として管理保護されているからです。

    交通不便だからこそ残る自然

    山中から眺めるアバロン港。

    私は必ず1年に1回、この島を訪れます。残念ながら、バケーションを楽しむためではありません。指導する高校陸上部の生徒たちを引率して、この島唯一の高校が主催するクロスカントリー走レースに参加するためです。

    私が指導する高校は、ユダヤ教に基づく小学校からの私立一貫校です。学力と学費の高さで知られています。生徒たちのほとんどは裕福な家庭の子息で、このサンタ・カタリナ島へも優雅な家族旅行で来たことがあるものも多くいます。

    しかし、クロスカントリー走レース参加となると、生徒たちは一風変わった経験をすることになります。

    住宅地の道路脇に並ぶゴルフカート。

    サンタ・カタリナ島では、自然保護のために自動車が厳しく制限されていて、島内の主な交通手段はゴルフカートです。

    そのゴルフカートを使ったタクシーやツアーなどのサービスももちろん島内には存在するのですが、コーチである私はそれらの利用を許しません。フェリー港からレース会場のアバロン高校まで約3キロの道のりを、荷物を担いで歩くことになります。

    丸一日、授業を免除されてサンタ・カタリナ島に行くということにあらぬ期待を抱いていただろう生徒たちの表情も微妙に変化していきます。普段はメルセデスやらBMWやらレクサスなどで学校に送り迎えしてもらっている生徒たちですので、すでにこの段階でカルチャーショックを受けるのです。

    トレイルから楽しむ海と山の眺望

    目的地に辿り着いても、彼らを待ち構えているものは険しい山道を走るきつくて苦しい長距離走。はっきり言って、リゾート地という言葉から連想されるような楽しく浮かれた要素はかけらもありません。

    レースの大部分はトレイルを使って行われる。

    私自身の名誉のために書いておきますが、私はただ無理無体に生徒たちを走らせているだけではありません。レースは男女別に行われ、私はそのどちらも応援のためにコース脇を行ったり来たりしますので、トータルの走行距離はむしろ生徒たちより長くなるのです。

    それはともかく、山中から眺めるサンタ・カタリナの自然は素晴らしいものです。もっとも、レースを走る生徒たちには景色を楽しむ余裕はないでしょうが。

    野生動物も多く、私は鹿の群れに出くわしたことがあります。もっと島の内部に行くと、アメリカバイソンやこの島にしかいない希少種のキツネの姿を見ることもあると聞きました。

    そのうちにプライベートでこの島を訪ねてゆっくり歩いてみようと思ってはいるのですが、未だに実現できていません。どなたか試してみてはいかがでしょうか。ガイド付きのエコツアーやハイキングなどもあるようです。

    カタリナ島自然保護管理局ウェブサイト:https://catalinaconservancy.org/

    私が書きました!
    米国在住ライター(海外書き人クラブ)
    角谷剛
    日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

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