ニューヨークやボストンからも近い、アメリカ東海岸にある「ニューイングランドトレイル」。2023年10月、世界各国のロングトレイルを次々と踏破している日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんが、そのニューイングランドトレイルに挑みました。日本ではあまり知られていないニューイングランドトレイルの実態、アメリカ東海岸のトレイル事情などについて、斉藤さんによる実感たっぷりの最新リポートをお届けします。(これまでの経緯は、記事最後の「あわせてよみたい」を参照ください)
民家の間や森を交互に歩き、ようやくMtリンカーンの裾野へ
朝、目覚めるとテントは雨が降った時のようにビショビショでした。今日の行程にも、シェルターやテントサイトの記載はありません。昨日ポートレイトと話して、タワーのあるMtリンカーンなら問題ないと思うよという事で、目的地は概ね決めていました。問題は、体調の悪い中、水を担いで山を登ることでした。
出発すると道は林道からアスファルトへ。交通量の多い道、民家がどんどん増えていきます。昨日、あの駐車場でテントを張らなかったら、テントが張れる場所はありませんでした。我ながらいい判断でした。
歩きながら時折入る森には、たくさんの水場があり、水にはさほど困らない状況でした。この日は長袖を着ていても寒く、温度計を見ると12℃。体調の悪さはコロナウィルスの影響だけでなく、気温が日々下がっていることも関係しているのかもしれません。
Mtリンカーンの裾野に到着
民家の間や森を交互に歩き、ようやくMtリンカーンの裾野に来ました。最後の水場で浄水器で水を作っていると、大きな白い物体が体当たりしてきました。とっさに身構えると、犬が尻尾を振って僕に寄ってきます。飼い主が何度も謝ってくれ、すぐにリードを付けたのですが、山の裾野とはいえこの辺は民家が多いのかもしれないと思いました。
急斜面を一気に登ると、電波塔のあるMtリンカーンにようやく着いたのでした。
山頂は標高が低く、大きな木々に囲まれているため、全く視界がありませんが、濡れたテントや湿った寝袋を干すには良い環境でした。車で山頂まで来れるらしく、テントを張る場所が限られていましたが、風通しもよく明日はテントが濡れないで済むのかなと淡い期待が湧いてきました。
この日も、早めにテントに入り仮眠し、夕方少しタワーに登り、辺りが暗くなるころにはまた寝袋に潜ります。僅かながら体調が改善してきたように感じました。
明日はノースサンプトンの町に降りる寸前でテントを張り、明後日は町へ。明日1日野外で過ごせば、コロナウィルスの隔離期間が終わり、明後日は何も気にせず、人にも迷惑をかけずモーテルでゆっくり過ごせます。
ただ、アップダウン、テントの張れる場所、水の確保など、明日の行程も問題が山積みです。地図やアプリとにらめっこしても妙案が浮かびません。ともかく歩くしかありませんね。
(11.6マイル約18.5km)