雪が降ったかと思うと気温が上がる鹿児島の冬
テレビやラジオのニュースで今年は寒暖差のある冬と言われています。
私が住んでいる鹿児島県でも積雪が見られたと思うと、1週間後には気温が20℃と急に春らしい陽気になりました。
厳しい寒さが続かない、いつもと違う冬を感じます。
そんな陸上ですが、海中は例年通り水温が下がり海藻が生えてきました。
今回は鹿児島県・錦江湾にて生え始めた海藻で見られる生き物の暮らしを紹介します。
海藻が生え始める海中
潜水器材を背負い、岸に向かい潜水します。
足がつく水深で水中マスクを付け水面から海中を覗くと、海底には10cm程伸びた海藻が一面に広がっていました。
生えたばかりの海藻は、森の新緑を眺めるような気持ちになります。
フクロノリ、ヒジキ、ホンダワラといった海藻が繁茂し海底を覆い絨毯のようです。
写真のような海藻が生い茂る場を「藻場」と言います。
海藻と暮らす生き物
海藻の根元に目を向けるとカサゴが隠れていました。
カサゴは冬に交接を行いその後メスは仔魚放出を行います。
この時期、カサゴのメスは海底でジッとしている姿を目にします。
※繁殖期のカサゴについてはこちらをご覧ください。
泳いでいると海藻に寄り添うニジギンポが目につきました。
ニジギンポは周りの環境に体色を似せ擬態が上手な魚です。
この時期は海藻の色に体色を似せ、気付かず通り過ぎてしまうこともあります。
写真をよく見ると尾を曲げ海藻の葉を椅子のようにして座っているようでした。
海藻の葉を器用に利用して休憩しているのでしょう。
カゴメノリという穴が空いた様子が籠(カゴ)の目に似た黄土色の海藻です。
そこに錦江湾では冬の時期しか見かけないカギノテクラゲを見つけました。
小さく綺麗なクラゲで泳ぎ回らず、よく海藻に付着しています。
刺胞毒が強いので、海藻に触れる際はガギノテクラゲがいないか注意が必要です。
ここ数年、高水温のせいか錦江湾では見かけることが少なくなりました。
海底には鮮やかな紅色をしたカギケノリという海藻や、団扇の様な形のウミウチワという海藻も生えます。
そこにオレンジ色の体に黒いドット模様のヒメマダラウミウシがいました。
一足早く春を感じて海藻の森を散歩中でしょうか。
ウミウシにとって海藻は隠れ場にもなりますが、餌になることも多いです。
この時期、出会える事を楽しみにしている魚の一種、マトウダイの幼魚も見られます。
マトウダイの体色は銀色や白色に近い色をイメージされる方も多いと思います。
この時期、海底にはワカメや、アナアオサ、ミル、など緑茶色の海藻も見られます。
そこで見られるマトウダイは、なんと海藻に擬態し体色が金色のように見えます。
マトウダイの幼魚の体色を比べてみると、環境に応じて体色を変えることが分かります。
外敵に襲われないよう、周りの環境の色と自分の体色を理解しているのでないかと思います。
海藻を産卵場所として利用する生き物も多いです。
「海のゆりかご」と言われる緑色のアマモという海藻には、毎年ヒメイカという世界最小のイカの卵が見られます。
ヒメイカの繁殖行動についてはこちらをご覧ください。
このように海藻は海の生き物たちにとっては無くてはならない存在なのです。
ですがここ数年見られていた海藻の群生が高水温等の影響で見られなくなった場所もあります。
春に向かって海藻は成長し、海が時化た後の浜辺には海藻が打ち上がります。
生き物たちが活用している不思議な形や鮮やかな色の海藻。
浜辺へ行った際には打ち上がった海藻をじっくり観察してみてはいかがでしょうか。
撮影協力: ダイビングショップSB
陸編
海へ向かう道中、緋寒桜や梅の華やかなピンク色の花を見かけるようになりました。
少しずつ季節は春へと向かいます。