車中泊ができるクルマを日産がカタログモデルとして販売したということが大きな話題になっていて、約600万円の台数限定ローンチ・エディションはすでに完売だそうだ。
次の発売を前に、今回は以下のポイントを検証したぞ。
ポイント1 泊まり心地、使い心地はどうなんだ?
ポイント2 移動空間として4ナンバーの商用車はどんな感じ?
ポイント3 住宅のプロから見た「マイルーム」
ポイント4 こんな風に使いたい
【編集部からのお知らせ】
記事の最後に、今回の記事の内容を収録したピストン西沢さんの動画のリンクを追加しました。併せてご覧ください!
チェックポイント1 泊まり心地、使い心地は?
ということで日産からキャラバン マイルーム(ディーゼル2駆¥6,802,400)を借り出してみた。
まず最初に理解しなきゃいけないのは、このクルマはキャンピングカーではないということ。だから、FFヒーターや家庭用エアコン、水回りの装備がない。代わりに外部から給電できる入力が一つと、それを出力できるコンセントが車内2か所装備されている。今回はリーフの使用済みバッテリーを再利用した、日産オリジナルの「ポータブルバッテリーfrom LEAF」も貸してもらった。
これはリチウムイオン充電池で、633whの容量とAC出力合計600w(最大1200w)という大容量ポタ電。繋いでおけば、エンジンが回っている間は常に充電している。充電の管理から解放されるわけだ。
供給される電力だが、ポタ電のみだと3つのコンセント合計で700W。そして外部からの給電がある時は、それが1500Wにもなるので、電源があるRVサイトなんかだと、もう困ることはない。夏ならポータブルクーラーもあるので、そいつの排熱をうまく外に出せれば、エンジンをかけることなくオールシーズン快適な「マイルーム」だ。
取材したのは、2月の下旬。場所はキャンプ場「スターフォレストキャンプ葉山」。サイトから電源を取るので、気軽に使えるのがありがたい。そこで昭和の発明「電気毛布」が登場!昔はクーラーとともに一番偉かった家電だぜ。これさえあれば冬も余裕だね。夜中にノリで激寒BBQをやり、冷えた体を車内で温め、疲れて横になれば、そこはまさしく「マイルーム」。
肝心のベッドは奥行き2192ミリで、これならチェ・ホンマンでも熟睡できる。クッションも固めで寝返りできる幅1204ミリは、到底フツーの車中泊では望めないレベル。3人家族は勿論、子供が小さければ4人もいけそう(寝相のヨイ子に限る)。
ここで気になる外からの目だが、きちんとしたブラインドもついているので、安心できる。以前Ama〇〇nで買った吸盤で貼るタイプはすぐに落ちてきて、その度に張り付け直すのも面倒で、もうどこかにやってしまった。室内も自分の部屋よりきれい(笑)で、そういう意味では全然マイルームじゃないけど、ホテルや貸別荘のような整頓された空間が、いつでもあるってのがいいよね。だからこのクルマには荷物は置きたくない。よくある“荷物だらけのアルファード”状態にしてはイカン。
寝ていると感じるのが遮音性。外からの音もかなり抑えてくれるから、国道沿いのRVパークでも、シティホテル感覚でゆったりできるわけ。でももっと素晴らしいのはベッドではなく、2列目シート。ここは普通に3人乗りの2分割シートなんだが、テーブルを出して後ろ向きに座った時の使い勝手が素晴らしい。テーブルの高さとシートの関係が、パソコンやるのにぴったりだ。シート自体は、前向きの時は包み込む柔らかめの座面。寝る時や後ろ向きに座る時は体が伸びる硬めの座面になるっちゅうおもてなし。ということで使い勝手は満点つけちゃおう。
ポイント2 移動空間として4ナンバーの商用車はどんな感じ?
そもそもキャラバンは4ナンバーの商用車。法的にはLTタイヤという、耐荷重を配慮した硬めのタイヤを付けなくちゃいけない。そして荷物を積んだ時に負けない硬いサスペンションセットが基本のクルマ。だから子供+遊び道具くらいの重さじゃピョコピョコしちゃうんじゃないの?って思っていたら、そんなこともないしっとり感。しかも、なんか静かに感じるぞ。その秘密はリアの内装にありそうだ。
そもそも種グルマのキャラバン・グランドプレミアムGXは、積載1000キロのクルマ。でも「マイルーム」は800キロなんですよ。だから、内装+電装品なんかで200キロ引かれてるってこと。その重みが乗り心地をマイルドにして、さらに内装が音を吸収しているわけだわさ。これは正直驚いたし、きっと日産の開発陣にとってもうれしい副産物だったに違いない。だから、乗り心地は後ろも含めて通常のキャラバンより全然良い。ちなみにサスペンションなどの足回りは、通常のキャラバンと同じとのこと。信じられないくらい大人しい走り味だ。
そんな「マイルーム」に用意されたエンジンは2Lガソリンと2.4Lディーゼルエンジンで、さらに2輪駆動にはガソリンとディーゼル、4輪駆動にはディーゼルのみが用意される。試乗したのはディーゼルの2駆で、太いトルクで加速も上々。上り坂でもぐいぐい上る。ガソリンはちょっと非力なので、選ぶならディーゼルにしたい。燃料代もだいぶ下がるはず。
そして良かったのが7速AT。ハイエースが6速なので、大きなアピールポイントだ。高速でも運転席のシートがよく、タイヤの上に座っているような、例の感じは少ない。このへんはさっきも書いたリアの安定とも関わってくるところ。このエンジン自体は三菱製で、新開発のデリカD:5のエンジンをベースにしている。音も振動も、“現場に行く”キャラバンの猛々しさとは別次元。
ポイント3 住宅のプロから見た「マイルーム」
今回泊まった「スターフォレストキャンプ葉山」は、その名の通り逗葉新道出口から3分ほどのところにある。起伏がある土地にヤギなんかがいて、クルマやテントで泊まれる。電源もあって勿論トイレ、シャワー付きだ。小川のせせらぎを聞きながら散歩するコースで、上を見上げると木の間にデッキフロアがあるではないか! 丸太の橋を渡り、木のはしごを上ると、そこにあるのはテントが張れるデッキとツリーハウス。こんなの面白すぎるぞ!
その理由は、このキャンプ場の母体が「自然の中で愉しく暮らす」を謳うスターホームという住宅の建築屋さんで、すべてが会社の敷地内なのだ。
だったらせっかくなんで、そこの住宅のプロの方々3人に「マイルーム」を見ていただいた。感想としては「造りがキレイ」「ベッドの生地が丈夫でカラビナを付けた人が寝ても傷まない」「板の間にスポンジが入っていて軋み音を抑えている」「こんなブラインドは初めて見た」「間接照明がムードを盛り上げる」「戸棚の取っ手が凄く丈夫で住宅用と違う」「ボディカラー含めトータルのイメージが素晴らしい一体感」などなどベタ褒め。
ちなみに手作りでキャンピングカーを作り上げるビルダーは予備部品の用意が少ないから、もしかするとシート生地が敗れると作り直しになるのかも? その点「マイルーム」は日産純正部品を使用。部品番号での注文ができるのもすばらしい。
ポイント4 こんな風に使いたい
マイルームということで、別に宿泊車として考えずとも、色々な使い道が見えてくる。
まずは日常での足。ノーマルボディの4695×1695×1975mmというサイズは、街中でも取り回しには困らない。燃費は2日間、150キロ乗って10.6㎞という数字。そして週末となったら、移動式別荘として、色々なところに連れて行ってくれる……。これは普通のクルマにはない魅力だ。
行く場所としては、観光地で休憩なんていうのもいいが、やはりスキー、スノボを楽しみに山へ行ってみたい。休日のゲレンデはお昼時ともなると、ロッジが満員。席取り合戦は熾烈で、それだけで気持ちが萎えてしまう。そこで、ポットでカップ麺かスープを作って暖まりながら、ホットプレートで焼きそばなんてのもアリだ。
ライターや音楽で飯食ってる人は、ぜひこのクルマでどこかに行って、テーブルにPC出して文章書いたりデータ打ち込んだりしてみてほしい。外の景色なんかで特別感が出て、仕事がめちゃくちゃはかどると思う。その特別感、高揚感は、やはり美しい内装から生まれるし、そのクオリティは色々書いても書ききれないほどのもの。
必要最低限の装備ながら、むしろゴチャゴチャしてなくていいし、使い方次第で必要十分になる機能性なんだし、何よりディーラーで保証付きのものが買えるという安心感。正直ビルダーが作ったキャンピングカーは、いつまでその会社があるかわからないし、長く乗っていたらメンテナンスも必要で、その時に出すところがないなんていうことにもなりかねない。
これはキャンピングカーだけではなく、レーシングカーやチューニングカーにもいえることなのです。ローンチ・エディションはすでに予定数終了なので、このあと出てくるカタログバージョンに期待をしながら、次の発表を待つっていうところかしら?
【日産CARAVAN MY ROOM Launch edition】
(すべて標準幅ロングボディ標準ルーフ5人乗り)
折り畳みベッド
- 2WDガソリン ¥5,958,700
- 2WD ディーゼル ¥6,626,400
- 4WD ディーゼル ¥6,964,100
跳ね上げベッド
- 2WDガソリン ¥6,134,700
- 2WD ディーゼル ¥6,802,400
- 4WD ディーゼル ¥7,140,100
※2024年2月末時点で、ローンチ・エディションは注文台数が予定生産台数に達したため、オーダーを終了しています。
問い合わせ先:日産自動車
TEL:0120-315-232
取材協力:スターフォレストキャンプ葉山
キャラバン マイルームの動画はこちらから!