近年、地方自治体とアウトドア企業の包括連携協定締結が増えているが、最近は学校機関との協力も話題。そこにはどんな可能性があるのだろう。
キャンプの力に期待、大学側からのオファー
「包括連携協定」とは多様な課題に対して相互協力のもとに解決を目指す協定のことで、自治体とアウトドア企業との協定締結が増えている。自治体のみならず学校機関とも連携があり、
’24年2月現在、株式会社スノーピークと株式会社モンベルが、学校機関と包括連携協定の下に活動していることがわかった。
関西学院大学と協働するスノーピークに話を聞いた。
「関西学院大学とは学生の進路選択を支援する学内のキャリアセンターからお声かけいただいたのがきっかけです。キャリア教育に力を入れていくうえで従来のセミナーだけではなく、自分と向き合うことや人とつながっていく力といった部分をもっと醸成したいと。それは我々が信じているキャンプの力と共通する部分があると感じました。
弊社がご一緒することで、学生の主体性や自由な発想に良い影響を与えることができればと。なぜなら、スノーピークは企業理念の最後に〝地球上の全てのものに良い影響を与えます〟という言葉で締めています。企業人として、また人間として。理念の下に動きたいというのが、スノーピークとしての想いです」
と、話すのは同社人材本部長の久保大輔さん。昨秋には大学内で初めて本格的にテント泊や焚き火を伴うキャリアキャンプを実施。学生、教員、スノーピーク社員が共に1泊2日のプログラムを体験した。非日常で自身のキャリアについて考えるプログラムでは立場の垣根を超えた交流が生まれ、まさにキャンプの力を感じたという。また、同社は徳島県で開校したばかりの神山まるごと高専へ寄付をするなど、今後もますます教育現場との関わりが注目されるところ。
今後も増えつつある? 大学とのコラボレーション
一方、モンベルは10年以上にわたって天理大学で野外実習を行なってきた。人文学部・社会教育学科の学生に向けてホワイトウォーターカヤックを使った机上と実技講習を実施。流れのある河川でのリスクの認識や危険回避についての指導をしている。そして先日、新たに武庫川女子大学との連携が発表された。新設予定の環境共生学部への寄与を期待されており、フィールドワークなど学内に留まらない授業が構想されているようだ。
就活を見据えたキャリア教育への連携、社会教育に携わる学生へ向けた実践授業、そして環境教育。教育の現場からアウトドア企業への期待は多岐にわたることが窺え、今後も増えそうな予感だ。
アウトドアの根幹となるDIYの精神と現場力の強さ、それが今特に求められているのかもしれない。
キャリア教育の一環として自らテントを張って過ごす1泊2日のプログラム。1年から4年生まで、40名の学生が参加した。
スノーピーク社員はテント設営のサポートなどのほか、ワークショップでは学生たちに混ざって同じ時間を過ごしたという。
’10年から年1回、モンベルの辰野会長と社員が直接指導を行なっている天理大学での2泊3日特別授業。
今年1月モンベルは武庫川女子大学との包括連携協定締結を発表。’25年に新設予定の環境共生学部への協力が期待されている。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2024年4月号より)