ソメイヨシノの学名は?
学名:Cerasus×yedoensis‘Somei-yoshino’
バラ科の落葉高木。葉は広い倒卵形。3~4月ごろ、葉が出るより先に、径3~3.5㎝ほどの淡紅色から白色の花が咲く。花弁は広楕円形で頂部に切れ込みがあり、萼と柄に細毛が多い。葉は互生で、楕円形または広倒卵形。明治時代の初頭に、東京・染井(現在の豊島区巣鴨付近)の植木屋から「吉野桜」の名で売り出された。
葉よりも先に枝いっぱいに花をつけるソメイヨシノは、まさに「花の木」だ。
気象庁が発表する桜前線は、北へ行くほど遅くなる。それは日本という国が南北に細く長いからだ。
サクラは植物の分類学では、種子植物門、被子植物亜門、双子葉綱、古生花被亜綱(離弁花類)、バラ目、バラ科、サクラ属というが、これがまた6つの亜属に分けられるのだから、なんともややこしい。
日本でサクラの野生種は、ヤマザクラ、オオシマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、エドヒガン、マメザクラ、タカネザクラ、チョウジザクラ、ミヤマザクラ、カンヒザクラ……などだが、栽培品種(園芸品種)は300種以上といわれている。
北上するサクラ前線は、基準木とされる東京のソメイヨシノを主役にしたものだが、種にこだわらなければ、日本でいちばん早く咲くサクラは沖縄のカンヒザクラで、1月に開花。逆にいちばん遅いのは北海道のチシマザクラで、なんと5〜6月に開花する。
日本では最も多く植栽されるソメイヨシノは、オオシマザクラとエドヒガンの自然交配から生まれたと考えられている(人為交配説もある)。葉よりも先に枝いっぱいに花をつけるソメイヨシノは、まさに「花の木」だ。
花弁が5枚あり、1本のメシベと多数のオシベでできているが、八重咲きのサトザクラとなると、花弁が10~60枚もあり、ケンロクエンキクザクラなどは、なんと350枚も花弁があるのだ。
うすいピンク色を「桜色」というが、サトザクラにはギョイコウという花弁が緑色のサクラもある。
人々を楽しませたソメイヨシノも、やがて花が散り、葉桜に変わる。サクラの葉にはさまざまな虫がつくが、葉を荒らす代表はモンクロシャチホコという蛾の幼虫だ。
だが、サクラにとってもっとも恐ろしい敵は、意外にもキノコで、樹皮にはりつくキノコは木の中へ菌糸をのばして、やがて木を腐らせてしまうのだ。
ソメイヨシノは花弁が5枚で、1本のメシベに多数のオシベ。
緑色の花をつけるギョイコウ。
葉を食い荒らすモンクロシャチホコ。
サクラの最大の敵はキノコ。これはサルノコシカケ。
おくやまひさし プロフィール
画家・写真家・ナチュラリスト。
1937年、秋田県横手市生まれ。自然や植物に親しむ幼少期を過ごす。写真技術を独学で学んだのち、日本各地で撮影や自然の観察を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く出版。
イラスト・写真・文 おくやまひさし
(BE-PAL 2024年4月号より)