シェルパ斉藤の“はじめの一歩”「東海自然歩道」を未来につなぐ旅
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    2024.04.09

    シェルパ斉藤の“はじめの一歩”「東海自然歩道」を未来につなぐ旅

    シェルパ斉藤の“はじめの一歩”「東海自然歩道」を未来につなぐ旅
    東海自然歩道のイベントが名古屋で開催された。
    東海自然歩道は東京の高尾山と大阪の箕面山をつなぐ、全長千数百kmの長距離自然歩道だ。1974年に開通してちょうど50年。この機会に東海自然歩道に光をあてよう、みんなでもっと歩けるようにしようと、トレイルハイキングの精鋭であり、トレイル文化の伝道者でもある「トレイルブレイズハイキング研究所」のスタッフたちが東海自然歩道の現地調査に乗り出した。その報告会を兼ねたイベントが開催されたので、僕も名古屋の会場へ足を運んだ。

    国内の旅に目を向けるきっかけとなった長距離自然歩道

    東海自然歩道の報告会イベント「つなぐ東海自然歩道」は、閉校になった小学校をリノベーションした「なごのキャンパス」の旧体育館で開催された。名古屋駅に近く、交通の利便性がいい。

    参加者が150人ほど集まり、会場は熱気に包まれた。4時間を超えるイベントだったが、アメリカ3大トレイルを踏破したハイカーや地元ハイカーのトークなど、プログラムが盛りだくさんだし、登壇者のキャラが立っていて、話がだれない。参加者が熱心に耳を傾けるから登壇者も熱が入る、好循環のトークが続いた。

    東海自然歩道はシェルパ斉藤の原点でもある。

    元号が昭和から平成に変わった1989年。僕は高尾山から西に向かって東海自然歩道を歩きだした。

    自ら望んで企画した旅ではない。BE-PALが創刊100号記念企画として東海自然歩道を踏破する連載を立案し、若くて体力があって時間もたっぷりある僕に白羽の矢が立った。

    当時の僕は海外に目が向いていた。連載がスタートする前年もMTBでアジアの辺境を旅して、エベレストベースキャンプまで到達した。ネパール帰りだし、読者を歩く旅にいざなうわけだからと、ヒマラヤ登山ガイドの代名詞である「シェルパ」の名を編集部員につけられ、「シェルパ斉藤の東海自然歩道全踏破」の連載がスタートした。

    昭和最後の年、MTBでエベレスト街道を旅した。ペダルを漕ぐ時間よりも、MTBを押したり、担いだりしたりする時間のほうが長いツーリングだった。

    標高5400mのエベレストベースキャンプに到着。各国の遠征隊に歓迎された。ここから先は登山許可が必要な領域。トレッキング許可証で到達できるトレイルの終点だ。

    BE-PAL1990年1月号からシェルパ斉藤の連載がスタート。表紙の左下にタイトルが掲載されている。

    感動や発見は身近な場所にもあることを知る

    東海自然歩道に興味はなかったが、フリーランスのライターにとって、毎月定収入が得られる連載は大きな魅力だ。あわよくば連載終了後に単行本を出版できるかも、と編集者にいわれて、二つ返事で引き受けた東海自然歩道の旅だった。

     ところが歩きはじめたら、思いもよらぬ出会いやドラマがたくさんあって、僕は東海自然歩道の旅に夢中になった。海外の旅に憧れ、辺境の地にこそ大きな感動があると信じていた僕に、じつは身近な場所にも感動や発見があることを東海自然歩道の旅は教えてくれた。

     あのとき、日本経済はバブルのまっただ中にいた。僕は金満な日本社会に背を向け、お金に頼らず、人にも頼らず、自分の足で野営道具を背負って東海自然歩道を歩きだしたわけである。

     シェルパ斉藤としての最初の旅が東海自然歩道でよかった。あの時代に身近なトレイルをシンプルなスタイルで旅したから、34年以上経ったいまでも僕は幸せな旅を続けていられる。

    連載終了後に初めての著作となる『213万歩の旅』を出版。多くの読者に受け入れられ、版を重ねた。

    『213万歩の旅』は紀行エッセイ本である。本文に書き切れない東海自然歩道のコース案内は、上段にイラストで紹介し、コース難易度やコースタイムも記した。下段には旅の情報も掲載。我ながらよくできた本だと思うが、絶版。中古でしか手に入らない。

    『213万歩の旅』はマップイラストを省いて小学館文庫でも出版された。文庫本も絶版になったが、電子版は購入可能(https://www.shogakukan.co.jp/books/09411006)。東海自然歩道に興味のある方はぜひ購読を。

    ジャンケンで行き先をゆだねる旅

     名古屋で開催された東海自然歩道のイベントに参加した僕は、そのまま東海自然歩道を歩く旅に出た。そのルートは自分では決めずに、人にまかせた。

    34年前の踏破以降も東海自然歩道はちょくちょく歩いているし、どこを歩けばいいか決め手に欠いていた。そこで思いついたのが、トレイルブレイズハイキング研究所のスタッフたちに行き先をゆだねる旅である。

    彼らは東海自然歩道の全行程を3つのパートに分け、2人1組で各パートを歩いて現地調査している。各班長にジャンケンをしてもらって、勝者の班が歩いたパートのオススメルートを歩くことにしたのである。

    どのパートを歩いて、どんな旅になったのかは、BE-PAL5月号『シェルパ斉藤の旅の自由型』を読んでもらいたい。

    11都府県にまたがる東海自然歩道は運営管理を各自治体にまかせていて、看板や標識は都府県によって異なる。ここではどこを歩いたのか、ヒントとなる標識を掲載することにしよう。

    東海自然歩道は通過する都府県によって、整備状況に差がある。統一してもらいたい思いもあるが、当時の僕は「地方によって整備状況や標識が違うから、そこにお国柄を感じる。県境を越えるたびに変わる標識に旅心がそそられた」と、あとがきに記している。

    アウトドア用の五右衛門風呂に浸かって八ヶ岳の春を満喫

    話は変わって、八ヶ岳生活の近況報告を。

    本日(42日)庭の桜が満開状態となった。ソメイヨシノではなく、サクランボの実がなる桜である。

    桜の木の脇には五右衛門風呂を設置しているので、毎年恒例となっている花見風呂を満喫した。

    家を作った年に植えた桜だから、樹齢30年近くになる。5月中旬以降はサクランボが実って、食べ放題になる。ヒヨドリたちに食べられてしまって、人間はおこぼれを食べることになるが、それでも食べ切れないほどのサクランボを収穫できる。

    設置して25年以上が経つ五右衛門風呂。日本で唯一、鋳物の五右衛門風呂を作り続けている大和重工がアウトドア用に開発した『湯牧民』という五右衛門風呂。鋳物だから縁が熱くならず、お湯も冷めにくい。

    気温によって異なるが、春先なら45分ほど燃やせば適温になる。火持ちのいい薪を使う必要はないから、針葉樹や廃材などを燃料に使用している。

    夜になると、こんなふうにライトアップする。五右衛門風呂の脇には着替えができる東屋を製作した。

    きれいな足でなくてごめん。湯船から写すとこんな感じに見える。薪で沸かす五右衛門風呂は湯冷めしにくく、湯上がり後はリラックスした状態が続く。ビールが最高にうまい!

     『チームシェルパ』で参加費無料の投げ銭ライブを開催!

    最後にイベントの案内を。

    BE-PALのフォレストキャンプにも出演したウクレレシンガーの宮武弘さんを招いて、わがカフェ『チームシェルパ』でライブを開催します。

    参加費無料の投げ銭ライブ。参加希望者は下記の案内を参考に、メールで事前申し込みをお願いします。

    アウトドアが心地いいシーズンです。焚き火を囲んで、新曲『焚き火THE DAY 』をリリースした宮武弘さんのライブをまったりと楽しみましょう。僕もとっておきの旅の話を披露しますよ。

    みなさんの参加をお待ちしてます。今回紹介した五右衛門風呂も、以前紹介したサウナも体験できますよ。

     

    シェルパ斉藤
    私が書きました!
    紀行作家・バックパッカー
    シェルパ斉藤
    1961年生まれ。揚子江の川旅を掲載してもらおうと編集長へ送った手紙がきっかけで『BE-PAL』誌上でデビュー。その後、1990年に東海自然歩道を踏破する紀行文を連載して人気作家に。1995年に八ヶ岳の麓に移住 し、自らの手で家を作り、火を中心とした自己完結型の田舎暮らしを楽しむ。『BE-PAL』で「シェルパ斉藤の旅の自由型」を連載中。『シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅』ほか著書多数。歩く旅を1冊にまとめた『シェルパ斉藤の遊歩見聞録』(小学館)には、山、島、村、東海自然歩道などの旅や、犬と歩いたロングトレイルの旅を収録。

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