BOOK 01
命があふれる島
生き物たちに会いに行きたい
『奄美の森・生き物図鑑』
山口喜盛、山口尚子、山口森音、山口風音著
南方新社
¥1,980
’21年、世界自然遺産に奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島が登録された。亜熱帯の深い森が広がるこの一帯は、生き物たちが賑々しく暮らしている。本書は、琉球列島北側に位置する奄美群島(奄美大島、加計呂麻島、与路島、請島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島)の自然環境や動植物を収めた図鑑だ。
奄美の成り立ちや地勢を入り口に始まり、常緑広葉樹林、流域、山麓、河口と海岸といった生態環境ごとにまとめられている。どんな場所で、どんな植物や生き物が暮らしているのか? 島の隅々まで案内してもらっているかのようだ。生き物たちの躍動感ある姿を捉えた写真の数々からは強い生命力を感じるとともに、奄美に長年に亘り訪れている著者らの温かい眼差しが滲み出ている。海で隔絶された島には独自の進化を遂げてきた種も多い。ここでしか会うことのできない奄美の奇跡の営みをぜひ。
BOOK 02
北海道アイヌだけでなく北方少数民族も知れる
『ゴールデンカムイ
絵から学ぶアイヌ文化』
中川 裕著
集英社新書
¥1,650
漫画『ゴールデンカムイ』は明治末の北海道を舞台にした冒険活劇。ヒロインであるアイヌの少女が随所で自らの文化や精神性を語り、本編の重要な要素を司っている。本書は、作中で描かれた精巧な絵を元にアイヌの生活、風習、伝統など多岐に亘り解説。樺太アイヌやニヴフ、ウイルタの専門家の寄稿もあり、北方少数民族を知る入門の役割も果たす。原作を知らずとも楽しめる。
BOOK 03
山歩きを根付かせたい
確かな自然観を求めて
『こどもを野に放て!
AI時代に活きる知性の育て方』
養老孟司、中村桂子、池澤夏樹、春山慶彦著
集英社
¥1,760
登山者用地図アプリ「YAMAP(ヤマップ)」を創業した著者が賢人たちを訪ねて自然観や人生観について探求した本書。タイトルに「こどもを〜」とあるものの、話題は子育てに留まらず、自然と現代人との関わり方を主軸にAI、農業、科学、旅、星野道夫……と、さまざまだ。登山を通じて自然で過ごす人を増やしたいという使命感にも似た著者の熱い思いが響く。
BOOK 04
小惑星が秘める!?
太陽系誕生の手がかり
『「はやぶさ2」は何を持ち帰ったのか
リュウグウの石の声を聴く』
橘 省吾著
岩波書店
¥1,650
探査機はやぶさ2は、小惑星リュウグウに向けて打ち上げられ、’20年に6年の旅を終えて地球に帰還。サンプル(石)を持ち帰ることに成功した。リュウグウは直径900m。過酷な宇宙空間において小さな惑星は大きな変化を受けておらず、太陽系や惑星の材料が残されているという。液体の水(炭酸塩)が存在していたことが明らかに。太陽系原始の記憶がひもとかれる。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2024年5月号より)