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はじめまして、雑草博士の阿部拓也です
人と違うことがしてみたいと思い立ち、気付けば雑草の研究に15年ほど従事していました。そして、これまでに200種以上の雑草を栽培してきました。
雑草を研究していたと聞いても、イメージの湧かない方がほとんどだと思いますが、あのよく見る雑草です。
実は、「雑草学」という立派な研究分野があって、雑草は学問の対象になっています。ただ、あまり知られていないようで、出会った人に「雑草の研究をしていた」というと、不思議な顔をされてしまいます。
雑草のいったい何がおもしろいのか? 雑草を研究する専門家の立場から、まずは雑草の魅力をご紹介しましょう。
「雑草」観察がもたらす意外な学びと健康面でのメリット
雑草を観察すると、何かポイントのようなものがもらえるなんてことはありませんし、周囲から感心されることもたぶんありません。むしろ、下ばかり見ているとちょっと怪しい人に見えてしまうかもしれません。
でも、雑草は、東京の丸の内のような都会のど真ん中にもたくさん生えているので、コンクリートの隙間から顔を出した姿や、小さな花を見ることができます。
そして、雑草の成長から季節の移ろいを知ることができます。また、ゲーム感覚で雑草を探せば、楽しみながら、いつもより多く歩くことができるはずです。しかも、役立つかは別にして、雑草の知識が増えるし、歩いた後の食事やお酒がさらに美味しく感じるオマケ付きです。
その辺のただの草が、どうしておもしろいのか?
草と一口にいっても、芽生えから始まり、やがて花を咲かせて、種子を作るというようにどんどん変化していきます。
特に、雨が降った翌日や気温が上昇すると、一気に大きくなりますが、私たちはそんな姿に気付かないまま過ごしています。
そんな草たちの、ひとつひとつをよく見れば、白、黄色、青など色とりどりの花を咲かせていたり、全身がトゲに覆われているなど、個性あふれた姿をしていることに気付くはずです。
雑草って、じつは美しい!
詩人の谷川俊太郎さんが、「道ばたの雑草はなにも意味していないし、伝えようともしないけれど、そこにあるだけで美しいわけでしょう?」と言っています。まさにその通りで、雑草をよく見ると美しい姿をしています。
そして、花だけでなく、葉のかたちだったり、種子だったり見どころがたくさんあります。
草の名前がわかると、いつもの道の景色が変わる
これまで、「雑草」といってきましたが、雑草は総称なので、ひとつひとつの雑草には名前が付いています。「雑誌」や「雑貨」にもそれぞれの名称があるのと同じです。
植物の名前を覚えれば、「この場所にはタンポポが多いなぁ」とか、「去年はセイタカアワダチソウが生えていたけど、今年はシロザに変化しているぞ」という具合に、漠然と見ていた景色がよりくっきりと見えてきます。
もちろん、名前が分からなくても花がキレイだとか、2メートル以上も伸びた雑草があるなど、関心を持って見るだけで、いつもの景色が違って見えるはずです。
雑草で人生も変わる?
雑草を好きになると、身近な風景が違って見えるのはもちろんのこと、人生だってちょっぴり変わります。
私の個人的な体験談で恐縮ですが、雑草を研究してきて得をしたことといえば、雑草は誰でも知っているので、共通の話題として会話できることでしょうか。それと、こちらの名前は思い出せなくても、とりあえず「雑草の人」ということで覚えてくれる方が多いので、名刺代わりになっています。
また、都内で「雑草ナイト」というイベントを開催したことがあったのですが、30人近くの方が来てくれました。単に雑草の話をネタにして、参加者と飲むという不思議なイベントだったのですが、雑草を通して多くの方と出会うことができました。
その他にも、X(旧Twitter)で出会った方と雑草について話をしたり、その方が書いた本を頂いたこともありました。
Googleレンズを使った雑草の名前の調べ方
さて、雑草を楽しむ第一歩は、これまで「雑草」とみなしていた草それぞれの名前を知ることです。とはいえ、雑草の名前をどう調べるかというのは、たぶん多くの人にとって一番の悩みだと思います。
一般的には図鑑を使用しますが、ここではより簡単にGoogleレンズを使った方法をご紹介したいと思います。
身近な雑草を撮影して名前を調べる方法
手順は簡単で、
- 気になる雑草の写真を撮影する(花のように、できるだけ特徴の分かる部分を撮影したほうが、検索の精度が上がるようです)
- Googleのサイトから、カメラのマークをクリックして、撮影した画像を指定する
- インターネット上にある類似した画像の一覧が出てくる
という流れになります。
Googleレンズのインストール方法と基本の使い方
パソコンでGoogleレンズを使う
Googleレンズは、パソコンでもスマートフォンからでも使うことが可能です。まず、パソコンから調べたい場合は、Google.comにアクセスして、Google検索のトップ画面を表示させます。で、検索窓の右にあるカメラのマークをクリックしてください。
次に、パソコン内に保存している写真をアップロードすれば、写真と類似した画像の一覧が出てくるようになっています。
通勤や散歩のときに見つけた気になる雑草の写真を撮っておいて、家に帰ってからその写真をGoogleレンズにアップロードすると、植物名の候補がいくつか出てくるはずです。
スマートフォンでGoogleレンズを使う
スマートフォンの場合は、Google PlayまたはApp StoreからGoogleのメインアプリ「Google」(iPhone版は「Google アプリ」)をインストールします。
アプリを開いたら、パソコンの場合と同じく、検索窓の右にあるカメラのマークをクリックしてください。あとは、フォルダ内に保存している写真を指定すれば、インターネット上の類似した画像が出てくる仕組みになっています。
Androidスマホの場合
Androidスマホの場合は、「Googleレンズ」という専用のアプリも用意されています。
こちらはアプリ内で写真の撮影から画像検索までワンストップで簡単に検索ができます。
iPhone版(iOS)の場合
iPhoneの場合、App Storeで「Google アプリ」をダウンロードします。Googleレンズの使い方はAndroid版と同じですが、Androidと違って「Googleレンズ」専用アプリは用意されていません。
スマートフォンなら、散歩の途中でも、写真を撮ってすぐに名前を調べることができます。
ちなみに、Googleレンズは、植物以外にも動物や昆虫、食べ物や機械などあらゆる画像を調べることができるので、自然観察には必須の検索機能といえるでしょう。私もいつも、ついついいろいろと調べ過ぎてしまいます。
検索結果と精度は?
実際に調べたところ、精度はかなり高いという印象です。実は、これまでは図鑑を使って雑草の名前を調べていたのですが、Googleレンズを使えば、調べる時間をかなり短縮することができました。ただ、時には異なる名前が出て来てしまうので、そこは注意が必要です。
それでも、全く知らない状態から、雑草の名前を絞り込むには非常に便利な手段なので、図鑑と照らし合わせれば、精度をより高めることができます。
撮影した写真で「マイ雑草図鑑」を作ってみよう
撮影した写真は、雑草の名前ごとにフォルダを作っておくと便利です。または、花の色(白や黄色など)ごとにフォルダを作って整理しても面白いかもしれません。写真も1枚だけではなく、雑草の芽生えや、種子まで撮影すると雑草の成長の様子が分かってきます。
また、撮影した写真を、X(旧Twitter)などに投稿すれば、雑草が好きな人たちとつながることができます。Googleレンズだけではよく分からなかった雑草についても、Xで質問すると詳しい方が教えてくれるので、勉強になります。
知っているようで知らない「雑草」という言葉の中身
ここまで、何度も雑草という言葉を使ってきましたが、全ての植物が雑草になる訳ではありません。
植物の中には、米や麦などの「穀物」があれば、大根や白菜のような「野菜」があります。花屋さんに行けばバラやカーネーションなどの「花卉(かき)」があり、山に行けばワラビやタラの芽などの「山菜」があります。
では、どのような植物が「雑草」なのでしょうか?
小中学生のイメージ
以前、小中学生たちに「雑草」という言葉からどんなものをイメージするかを尋ねたことがありました。その際には、「雑草魂」、「しぶとい」、「抜いても生える」といったように、雑草=強い植物という意見が多く出ました。
その他にも、「雑という言葉が入っているから、そこまで研究されてなさそう」というユニークな見方もありました。
辞書の意味
明治22(1889)年に出版された「言海」という辞書では、雑草の意味をシンプルに「種種ノ草」としています。つまり、様々な草という意味になります。
その後に出版された多くの辞書でも様々な草という意味は引き継がれていますが、辞書によって多少表現が異なります。例えば、小学館の新選国語辞典(1989年)では、雑草を「しぜんにはえた、つまらないいろいろの草。」としています。
また、三省堂の新明解国語辞典(2021年)では、「あちこちに自然に生えているが、利用(鑑賞)価値が無いものとして注目されることがない草。」としています。
このように、雑草という言葉には、つまらない、価値が無いなどの否定的な意味が含まれているようです。
ちなみに、雑草は英語では「weed」という単語になりますが、「seaweed」になると、海藻を意味します。つまり、海藻は、海の雑草ということになります。日々の生活で昆布やワカメを食べている日本人にとっては、何だか複雑な気分になります。
研究者の定義
農業の研究者の多くは、雑草を作物にとって有害な植物と考えており、雑草を「害草」という方もいます。このため、雑草は、「農地およびその周辺の土地に自生する作物以外の植物」という定義があります。
また、雑草は農地だけではなく、道路や公園などにも生えることから、「人の生活圏内に非意図的に生育する植物」という捉え方もあります。このように、研究者の定義は複数存在しています。
詩人の定義
雑草の研究者ではありませんが、アメリカの思想家・詩人のエマーソン(『ウォールデン 森の生活』の著者・ソローの師匠)は、「雑草とは何か、その美点がまだ発見されていない植物である」としています。
雑草の境界線は?
雑草の定義や意味だけではイメージが湧きにくいと思いますので、写真を見ながら、どこまでが雑草なのかを考えてみたいと思います。
たとえば、雑草の図鑑に掲載されているハキダメギク(掃き溜め=ゴミ捨て場に生えていたことからこの名前が付いたようです)ですが、植木鉢の中で育つだけならば、農業の邪魔にはなりません。
畑の中に植えられたトマトは野菜ですが、農地の外に飛び出したトマトはどうなるでしょうか?
皆さんの中で、どこまでが雑草に見えましたか?
結局のところ、雑草の定義は人間が決めたものなので、「雑草」の境界線には曖昧な部分があります。雑草の研究者にとって曖昧な定義は困りものですが、その曖昧な部分が雑草の面白さだと思います。
【まとめ】家族や友人との雑草散歩のススメ
ここまで、誰もが知っているようで、案外知らない雑草について書いてきましたが、雑草の見え方が変わりましたか?
スマホ片手に街歩きをしてもいいし、花の写真だけを集めてみるのも楽しいですよ。
雑草はどこにでも生えているので、皆さんの生活にあった楽しみ方を探してみてください!