アパラチアントレイル最終章 ビバルマントラックの旅 vol.015
町に降りると、必然的に食料計画を立てなくてはいけません。
この先の区間はこんな感じでした。
コリー → バリンガップ ※5日目到着 シェルター区間約20km。
バリンガップ → ドネリーリバー ※4日目到着 シェルター区間約20km。
ドネリーリバー → ペンバートン ※5日目到着 シェルター区間約27km。
つまり、スーパーマーケットがある町までは、シェルターを利用すると14日の日数を要します。1日20km。その次を目指すとなると40km。若しくは50km近い道のりを歩かなくてはなりません。
しかもこれまでの道のりを考えると、水場となる川はほぼ無く、朝露や雨が頻繁に降る天候です。結果、雨水タンクがあり、雨がしのげるシェルターを渡り歩くのがベストな選択になるということです。
とくに、前半は20kmでとどめるか、40km無理して歩くか?という選択を迫られます。
雨が降れば当然40kmを歩けなくはないのですが、翌日までギアやウエアが乾く保証はありません。そうなると、濡れたものを着なくてはいけません。
翌日も雨なら?その次の日も雨なら?考えるだけで、迷いは増すばかりです。ドネリーリバーやバリンガップが、補給や休むのに十分な町ならいいのですが、宿泊代も高く、食料も食事も高額です。
悩んだ結果、シェルターを渡り歩くプランにしました。食料は持てる限界の10日分を持っていく。一度、バリンガップで4日分の食料を仕入れ、一気にペンバートンを目指すプランです。
バリンガップのストアは、そこまで高くなく選択肢も多いとガイドブックに書いていました。ドネリーリバーに関しては、完全なるリゾート地なので、食料品の種類は少なく、価格もドゥエリンガップ並みの価格が予想できます。
パンパンに膨らんだバックパック。そして町でゼロデイをとっても、いつものように5時に目覚めます。
20kmしか歩かなくて良いので、ゆっくりすればいいのですが、なんだか落ち着きません。そこで朝6時に出発。目的地のシェルターには、お昼前にたどりついてしまいました。
荷物を置いて考える。お昼から20km歩くと、急いで歩いて、完全に日が落ちる1時間前の5時にはにたどり着く。着ているウエアはきっと乾かないだろう。寝る準備をして寝床を作る頃には真っ暗になっているはずだ。
もう少し、日暮れが遅ければ・・・・・。
そして、進めないもどかしさを抱えながら、昼ごはんを食べファイヤーサークルで焚き火を始めます。やがて2時を過ぎるころには、時間が無く先に進めないと諦めがつくのです。
そんな時間を過ごしていると、ハイカーとの出会いがあります。多くのハイカーは2時から3時半くらいで歩き終える予定を組んでいます。コリーを出た初日も、老夫婦のハイカーと一緒でした。親日家の2人と、焚き火を囲んで話します。
おばあちゃんは、「一緒に写真を撮ろう!MASA、おばあちゃんと写真を撮るイメージじゃなくて、恋人と写真を撮る感じで撮ろうね」と言っておじいちゃんに写真を撮るように命令するのが笑えます。
そして、日が沈むまでの間一緒に時間を過ごします。
翌朝、おばあちゃんは、「毎日寒いね。寝袋の下に敷くと温かいから」といってエマージンシー用のブランケットをと僕に1枚くれました。
2人は、車を停めているコリーに戻り、また車のアクセスのいい場所まで車で行って、そこから再び歩くという旅をしていました。僕は、2人とハグして別れ、今にも降り出しそうな空模様の中歩き始めました。
ハイカーからの情報では、今年の西オーストラリアは、異常気象で雨も多く冬が続いているとのこと。
9月の中旬をすぎても、日陰は寒く午後3時を過ぎるとダウンジャケット無しでは過ごせないほどの寒さが続いています。天候や水場のことを考えると先に進みたいけど、進めない歯がゆさ。でも、この歯がゆい歩みが出会いを生んでくれているのかもしれないと希望も持っていました。
つづく
【Profile】斉藤正史
山形県在住
LONG TRAIL HIKER
NPO法人山形ロングトレイル理事
トレイルカルチャー普及のため国内外のトレイルを歩き、山形にトレイルを作る活動を行う。
ブログ http://longtrailhikermasa.blog.fc2.com/
山形ロングトレイル https://www.facebook.com/yamagatalongtrail