そこでグラベルバイクがどんな自転車なのか、そして、最新スペックの人気モデルがどんな用途に向いているのか、気になるコナ/ローブLTDをお借りしてテストライドをしてみた。
グラベルバイクってどんな自転車なの?
「GRAVEL(グラベル)」とは、砂利道や未舗装路を示す英語。そんな道を楽しく走るために開発されたのがグラベルバイクだ。ロードバイクでお馴染みのドロップハンドル仕様のバイクに、MTBに迫るワイド幅のブロックパターンのタイヤを装着したスタイルが一般的。
大きく分けてレース用に開発されたスピード重視のモデルと、キャンプ道具などを積んで旅に出かけるためのモデルに二分される。前者は未舗装路も走れるロードバイクの進化系、後者は街乗りも旅もしやすいオールラウンダー。一言でグラベルバイクといっても、フレームの設計も用途も大きく異なるモデルが存在することを知っておこう。
また、最近ではドロップハンドルだけではなく、MTBのようなストレートバー仕様のものも登場し、今やどこまでがグラベルバイクで、どこからがMTBなのか、その境界すら怪しくなっている。
試乗車はコナ/ローブLTD
これまで各社のグラベルバイクに試乗してきたが、コナのグラベルバイクは試乗する機会に恵まれなかった。そこで、発売元のエイ アンド エフに連絡。すると長期試乗用にハイエンドモデルのローブLTDを用意してくれた。
新宿にあるオフィスに試乗車をお借りしに出かけ、そのまま乗って帰ることに。ロードバイク並みとはいわないが、ペダルを踏むほどに心地よく加速する軽快な走りに驚かされた。タイヤは見るからに太い幅47mmで、路面抵抗がありそうなブロックパターンだ。しかも、ロードバイクよりひとまわり径の小さな650BというMTBで人気のホイールサイズ。そんな見た目を裏切る軽やかな走りは痛快そのもの。
都市の幹線路でもスイスイと走れるのはなぜ?
試乗車のハンドル幅は44cmとグラベルバイクとしては、やや狭い印象だ。これが絶妙で、混雑する都内の幹線道でクルマの横をすり抜けるときにも、余裕を持ってスイスイと走れる。また、フレームの設計とパーツの仕様によりハンドル位置が高くセットされているため、前傾姿勢がかなりユルく視界も広々。安全かつ快適に都市内の移動を楽しめた。
体に優しい乗り心地の秘密は?
当初、7kmほど離れたオフィスに戻るつもりが、あまりに気持ちのいい走りに、ついつい距離を伸ばし、寄り道しながら多摩川(狛江あたり)まで走ってしまった。ならばと、多摩川サイクリングロードの脇にあるグラベルロードへ道を外してみた。凸凹の砂利道を走ると、しっかりとグリップしながら、グイグイ加速する。振動もいい感じに吸収してくれている。しかもハンドリングの操作感のいいこと。650Bのタイヤが、悪路でもキレのあるシャープなハンドリングを楽しませてくれた。いきなり最新のグラベルバイクのおもしろさを体感してしまった。
クロームモリブデンという軽くしなやかなスチールでできたメインフレーム。カーボン製のフロントフォーク、そして、エアボリュームが高い太めのタイヤによる見事な味付けだ。なかでもタイヤは、「120TPI」という目の細かなケーシングを採用した軽量仕様。最上級グレードのみに搭載されたカーボンフォークとの相乗効果で、砂利道を走る楽しさ、操作するおもしろさを満喫した。
新幹線輪行も快適に!
気が付いたら、お借りしたその日のうちに50km以上を走っていた。それだけ楽しい自転車ということだ。後日、東京のオフィスから名古屋の自宅に帰るために品川駅まで自走し、そこから新幹線で輪行(自転車を折りたたんで専用の袋に入れ、電車などに持ち込んで移動する旅のスタイル)した。
ディスクブレーキ仕様での輪行は初めてだったが、前後の車輪を外し、ブレーキパッドの間に段ボールを切って自作したスペーサーを挟んだのでトラブルもなし。バッグに入れて背負っても軽い印象なので、輪行にも向いている。
様々な場面で試乗して、その走りの実力を検証してみた
名古屋に戻ってからは、近隣でサイクリングを楽しんだり、クルマに積んで出かけた先でグラベルロードツーリングをしたり、バイクパッキングにも出かけてみた。
僕の暮らす名古屋市の東側は、かなりの丘陵地帯で斜度10%を超えるような急坂がたくさんある。しかし、荷物を搭載していない状態なら、2×11段変速を駆使して問題なくこなせた。普段乗っている自転車よりも軽いギアが3段以上あったので、急坂でも3~4段を残して登り切れるほど。これだけ余裕があればキャンプ道具を積んでのロングライドも大丈夫と確信した。
ローブLTDは、シマノのグラベルバイク用コンポーネント「GRX」の変速システムと油圧ディスクブレーキを搭載している。また、ハブなど完成車ではコストダウンされがちなパーツにもシマノ/105を採用しているところがいい。ハイエンドなパーツだけあり、変速、ブレーキ共に操作性は申し分なし。よく回り軽快に走るホイールは、105のハブの回転性能によるところが大きそうだ。
サドルは、コナのオリジナルプリントが入ったWTB製。WTBは、MTBの世界で愛用者が多い人気ブランド。グラベルを走っても、長距離を乗っても、十分な振動吸収性があり、スムーズに足を回し続けられた。サドルは相性もあると思うが、このレベルのパーツが最初から搭載されていたら、購入後に買い直す必要もないだろう。
キャンプツーリングに向けた拡張性をチェック
拡張性については、必要十分といえそうだ。まずメインフレームには3か所のボトル台座がある。2か所は、普通にフレームの前三角の内側にある。
もうひとつは、ダウンチューブ(ハンドル下と、クランクの中心を繋ぐパイプ)の下側にある。フレーム後方には、フェンダー(泥除け)とラックを装着するネジ穴もある。そして、フロントフォークはカーボンでありながら、便利なスリーパックマウント(小型ラックなどを装着するための3連のネジ穴)を搭載。
さらにフォークの先端にフェンダー用のネジ穴もあり、キャンプの際にはここにライトマウントを装着できたので便利だった。
今どきの旅系グラベルバイクは、トップチューブ(ハンドル下とサドル下を繋ぐパイプ)の上に、小型バッグを装着するためのネジ穴があったり、シートチューブ(サドル下とクランクの中心を繋ぐパイプ)にドロッパーシートポストを装着する際に使うワイヤーを通す穴があるものも多い。
これらがあれば満点だっただけに少し残念。とはいえ、このあたりは、パーツを工夫すれば対応できるので致命的な問題ではない。
詳しくは後日レポートするが、バイクパッキング用のバッグを装備してキャンプツーリングにも出かけてみた。フレーム、フォーク、サドル、ハンドルにバッグを分散し、必要十分なキャンプ道具をバランスよく搭載。フラつくこともなく快適に走ることができた。
旅に出かけたくなるモダンなオールラウンダー
総評としては、見事なオールラウンダーであることを実感。通勤など普段、街で使っても十分快適かつ早足で移動できる。そして、しなやかな乗り心地から、ロングツーリングでも体にやさしいのはうれしい。しかも、キャンプ道具を満載しても安定した走りを楽しめた。最上位グレードだけあり、32万円オーバーと決して安くはない。しかし、このグレードを選べば、購入後にパーツをアップグレードする必要もない。
はるか昔、僕の子供の頃に、「ロードマン」や「ユーラシア」という、普段使いから旅までこなせるツーリングバイクが流行った時代がある。そんな憧れのツーリングバイクを現代の技術で作ったらこんな旅系のグラベルバイクになるのではないか?と想像した。
タイムや順位を競うのではなく、ペダルを踏んでいろいろな場所、自由なスタイルで移動や旅、ときには冒険を楽しみたい人は、迷わず旅系のグラベルバイクを選ぶといい。そんな答えのひとつとなるバイクが、コナ/ローブLTDではないだろうか。
ローブLTDの魅力
- 軽快な走り
- 前傾姿勢がきつくないアップライトなポジション
- 太いタイヤ、しなやかなフレーム・フォークによる乗り心地の良さ
- 操作性のいいパーツ構成
- バイクパッキングも楽しめる拡張性
「ちょっと高いよ」と思った方におすすめの選択肢
32万円は予算的にきついが、どうしてもこの自転車に乗りたいという人に朗報を。実はローブLTDと同じフレームを使いながら、パーツ構成によりコストダウンを図ったローブSTは182,600円で購入できる。
フォークがクロモリスチール製で、パーツのグレードも異なるが、ローブLTDと同じ乗りやすいフレームをアンダー20万円で購入できるのは悪くない。こちらを購入し、必要に応じて自分らしくカスタムしながら乗り込んでいくという選択肢も、またおもしろそうだ。
今回紹介した試乗車のスペックは?
コナ/ローブLTD
- 完成車価格:321,200円
- カラー:グロスメタリックグリーン
- サイズ:48、50、52、 54㎝
- フレーム:コナ バテッドクロモリ
- フォーク:コナ ローブ ベルソ フルカーボン
- 変速機:シマノ GRX(フロント2×リア11段変速)
- ブレーキ:シマノ GRX
- タイヤ:マキシス ランブラー EXO TR 650Bx47
- 発売元:エイ アンド エフ
- ホームページ:https://www.konaworld.jp/